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日蓮大聖人・池田大作

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8 間断なき「精神闘争」  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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2  中国の豊かな精神土壌
 池田 私は、数年前から、日本の一部にある「国家主義」への風潮にも警鐘を鳴らし続けております。
 「教科書問題」などを通じて、日本の中国への侵略戦争という歴史を否定するがごとき言動が聞かれることは、まったく残念でなりません。
 そのような風潮と徹底して戦うためにも、私は、中国との文化・教育交流にさらなる努力を続けたいと考えております。
 さて、トインビー博士は、近代文明の危機の本質を「モラリティー・ギャップ」にあるとも指摘しておられたことがあります。
 すなわち、科学技術の圧倒的な発展に対して、道徳性、倫理性、精神性が停滞し、そこに断絶が生じているーーと言うのであります。とくに先進国では、物質的な豊かさの増大に対して、精神のアノミー(規範喪失)はじつに深刻きわまりないものがあります。
 情報革命によって、膨大な情報を享受することが可能になっても、かえって洪水のような情報に振り回され、精神は、ますます自律性を喪失し、茫然自失しているありさまです。精神の発展ーーそのためには、停滞を打ち破る間断なき「精神闘争」を展開していく以外にありません。
 トインビー博士の指摘のように、中国には、儒教、道教、そして中国仏教を基盤とする精神的土壌があり、そこから、人間主義、平和主義にもとづく倫理性、道徳性を発現していくことができます。
 人類は、「精神の発展」のために、中国民族の培ってきた「精神性」「倫理性」に学ばなければなりません。
3  「楽観派」
  人類の未来について、私の分析によれば、国内外の人々は、だいたい、次の三派に分かれます。「楽観派」「悲観派」「まったく考えない、どうでもよい派」です。
 「楽観派」は、人類は変われば変わるほどよくなり、前途は明るいと考えます。
 「悲観派」は、人類の終末がまもなく到来すると宣伝しています。ある者は、あろうことか人類の終末は二十一世紀であるとまで言っています。
 第三派は、人類のなかで絶対的多数を占めています。そのなかには、トントン拍子で出世し、一日中酒食にふける者、困窮し、苦しい生活にあえいでいる者がいます。
 これらの多くの人々は、人類の未来の問題などまったく考えに及ばず、相変わらず、何のけじめもなく、意味のない、いいかげんな日々を送っているのです。
 私は「楽観派」に属しています。
 現在、社会にはきわめて多くの問題が存在しています。物情騒然とし、天災人災、戦火はいたるところに広まり、道徳は消失し、ものごとが木末転倒し、すこぶる終末の様相を呈しています。
 しかし、私は依然として、これはただ一時的な現象にすぎず、人類の将来は、必ず良い方向に変わっていくものと考えています。

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