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日蓮大聖人・池田大作

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1 『法華経』の統合的精神  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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1  分断と憎悪を超克する思想的基盤
  中国の諺に「一年の始まりは春にあり、一日の始まりは朝にあり」とあります。二十一世紀の初頭にあたり、私たち全世界のリーダー、全世界の人民は、この世紀、この千年をどう生きるのか、ということを考えなければならないと思います。
 私たちは、問題を考える場合に、現実から切り離して考えるわけにはいきません。
 新たな千年紀の始まりにあたって、私たち全世界の人民が必要としているのは「平和」であり、「相互理解」であり、「友情」であると感じています。
 それらを実現するためにも、いやまして、大乗仏教の思想を含む東洋思想を宣揚していきたいと希望しております。
 池田 『法華経』の統合的精神は、分断と抗争の悲惨をいやし、苦悶を超克しつつ、ダイナミックな調和と安穏をもたらす源泉となる。私はそう確信して、行動しております。
 今、現代社会がかかえる問題群の根底には、分断と憎悪のエネルギーが渦巻いています。それを超克し、統合する思想的基盤が求められています。
 『法華経』に説かれる統合的精神は、まさに”無明”を照らしだす”光明”となるのではないでしようか。
2  大自然征服がもたらす災厄
  西洋文明は、産業革命以来、大自然を「征服」した結果、たしかに人類に少なからぬ福利をもたらしました。
 このことは周知するところです。しかし、すでに指摘しましたが、同時におびただしい有形無形の災厄をもたらしました。
 環境汚染、種の絶滅、人口爆発、淡水資源の欠乏、人と人の間の矛盾や憎しみの増大、異文化の衝突等々もそうです。
 これらの災厄のなかで、もし一つであっても、適切な解決をみなければ、人類生存の前途は脅威にさらされるでしょう。
 私は「人類の終焉はまもなく到来する」という説は信じません。しかし、上述のさまざまな災厄に対しては、われわれは見て見ぬふりをするわけにはいかないのです。
 池田 そのとおりです。豊かな未来を開くために、『法華経』の叡智に学ばなければならないと切実に感じています。
 『法華経』に学べば、地球上の多様な文化圏の差異に応じて、それぞれの特質を生かしながら、包括的に”人類意識”を溜養する方途を探ることも可能になるのではないでしょうか。
  私も確信しています。西洋科学技術による「自然征服」を核心とするやり方によって引き起こされた災厄を消滅させようとするならば、『法華経』を含めた東洋思想によらなければならないのです。
 二十一世紀およびそれ以後の時代においては、その思想をわれわれ人類全体の行動の指針として初めて、人類は救われるのではないでしょうか。
3  人類共通の努力
  人類社会の発展の歴史から見ると、世界全体は、今まさに一体化の方向へ向かって進んでいます。
 にもかかわらず、世界一体化実現への道は決して順風満帆なものではなく、必ずや予測しがたい、非常に複雑で長い道のりを経ることになるにちがいありません。
 実際、現在の人類が未来を展望するとき、近代の人類のように楽観的で自信のあるものではありません。なぜなら、人類が今まさに、多くの世界的な危機という深刻な挑戦を受けていることをすでに感じとっているからです。
 池田 世界の一体化、グローバリゼーションの波は、世界を覆っています。しかし、その一方で、人類の現状を取り巻く聞は深いものです。
 だからこそ、その閣を破る希望の曙光が求められているのです。
  これらのあらゆる世界的な危機には共通点があります。それは全地球性と総体性です。
 共通の危機に直面した人類は、すでに少しずつ民族、国家、地域を超えた人類の共通の利益を意識するようになりました
 少しの誇張もなく言えば、人類のすることなすととのすべてが、すでに現在の人類をして文明の岐路に立たせているのです。
 人類はまず、人類共通の根本的な利益を守ることを出発点としなければなりません。
 池田 賛成です。一切は、人間が根本です。他人の不幸のうえに自身の幸福を築くことは、許されません。
 広く万人を益するものを、まず保障しなければなりません。そのために、さまざまな違いを超えて、力を合わせていくことが大事です。
 共通の努力を通じて、希望を求め、方向を見つけ、活路を明らかに認識し、確信を打ち立ててこそ、人類は初めて二十一世紀において順調に前に向かって進むことができるのです。
 池田 まったく同意いたします。

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