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日蓮大聖人・池田大作

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3 「天人合一」論  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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7  人間道徳の根源
  孔子の孫である子思ししの天人に対する見方は、『中庸』に代表されます。
 『中庸』にいわく「己の性を発揮すれば、それを推し及ぼして、他人にも人としての性を発揮させることができる。
 他人にも性を発揮させることができれば、人々とともにすべての物を適正に扱って、その本来の発展をとげさせることができる。
 物の発展をとげさせることができれば、天地の万物を発生成長させる事業を助けることができる」(前掲『中庸』)と。
 孟子の天人に関する考え方は、基本的に子思の衣鉢を継承しています。
 『孟子』万章上にいわく「人が人力でなそうとしないでも、自然にそうなって来る者は天意自然のしわざ、天業であり、人力で招き致そうとしないのに、自然に至るものは天命である」(前掲『孟子』)と。
 つまり、天命は、人力の及ばざるもので、最後に人を成功に導く力であり、人力以外の決定の力である、ということです。孟子も天を神とは考えておらず、人々は、心を尽くし、性を養うことによってのみ天を知ることができる、としました。
 『孟子』尽心上には「人間の心(中略)を、拡充し存養しつくす者は、人間の本性がどんなものであるか、(中略)知ることが出来る。人間の本性(中略)を知れば、その本性を与えた天の心がいかなるものであるかが分る」(同前)とあります。
 池田 孔子における「天」は、全宇宙の主宰者であると同時に、人間道徳の根源でした。これをさらに精緻に体系化したのが孟子でしたね。
 「天」が人の中に内在するがゆえに、人間の本性は「善」であるとするのが、孟子の性善説です。その特徴は、自然の理法がそのまま倫理の理法となっているところにあります。
 また、「人間の本性を知れば、天の心がわかる」との一文は、中国思想の特色である「人間主義」の立場を示してもいます。
 すなわち、「天」は道徳の根源である。そして、天と人は連関している。ゆえに、いたずらに天をまつるのではなく、「人」に関心を払っていれば、それが結局、「天」に通ずることになるのだ、とする立場です。
 「天人合一」思想は、中国的人間主義、合理主義の背景であることにも注目すべきだと思います。

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