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日蓮大聖人・池田大作

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6 社会の発展と文化交流  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

前後
1  「人類文化」の形成
  ところで、人類の出現以来、”文化交流”がなされてきました。一人の人間が食物を得る新しい方法を発見し、別の人がこれを学べば交流であります。
 当然これは、最も簡単で最も原始的な交流ですが、歴史の発展過程において、人類はしだいに氏族、集落等を形成してきました。
 氏族、集落の間にも文化交流があり、のちに民族を形成し、国家を形成してきました。
 民族と国家の問においても、文化交流があります。これはさらに大きな範囲の、内容がだんだん豊富になってきている”文化交流”です。
 今日にいたるまで、”文化交流”は全世界の各民族、各国家の間で行われ、現今の輝かしい多様な「人類文化」を形成してきたのです。
 人類の生活はしだいに豊富になり、寿命はしだいに延びています。”文化交流”は人類社会の発展を促進する、最も主要な力と言えるでしょう。
2  東西を結ぶシルクロード
 池田 ”文化交流”の意義についての、ただ今の説に、全面的に賛成です。
 人類は有史以来、さまざまな文化を互いに享受しあい、影響を与えあってきました。言語、音楽、美術、建築など、他の国の影響を受けないで発展した文化はありえないと言っても過言ではありません。
 なかでも、東西の文化交流というと、まず私が思い起こすのは、両先生のご専門の分野でもある「シルクロード」です。
 アジアを横断するオアシス、ステップの二大陸路線を中心に、幾筋もの支線からなるシルクロードは、物資交易の要路のみならず、「東」と「西」の”文化交流”のルートでもありました。
 シルクロードを通って、イラン、スキタイの文化が、その後の世界文化に大きく寄与しました。
 インドに興った仏教も、東アジアのほぼ全域に広がり、あるいはキリスト教、イスラム教などシルクロード周辺に興った諸宗教が、美術、建築をはじめとして、世界の諸文化に甚大な影響を及ぼしてきました。
 また、シルクロードの終着点である日本の文化も、韓国・朝鮮文化、中国文化、さらに東南アジアとの文化の融合によって形成されました。
 私が創立した音楽団体である「民音」では、一九八五年に「シルクロード音楽の旅」と題して、中国、ソ連(当時)、トルコ、日本の四カ国から演奏家、歌手、舞踊家たちを招き、全国で演奏会を開催しました。当時、深刻に対立していた中ソをはじめとする、この四カ国の人々が同じステージに立つことは考えられなかったのですが、本当に見事な友情のエールを交換してくれたのを覚えています。
 民族、体制、イデオロギーの壁を乗り越えて、文化の全領域にわたる民衆という底流からの交流が、今日ほど要請される時代はないと思います。
 シルクロードがつないだのは、当時の「東」と「西」でした。仏教もガンダラにおいて、西のギリシャ文化を摂取し、大乗仏教を形成することができました。シルクロードは「ブッダロード」でもあったのです。
 「東」と「西」の概念も、歴史的に変遷してきましたが、大局的に見て、当時の東西文化の壮大な”父流”が、シルクロードにおいてなされ、人類文化の創造に重大な貢献をしたと言えるでしょう。
3  人類の前進は文化交流の歴史
  先ほど、季先生が、おっしゃったように、”文化交流”とは、人類社会の前進をうながす最も重要な力です。これは、正しく、かつ重要な結論です。
 季先生がこれまでたずさわってこられた数多くの学術研究の仕事は、多分野にまたがっていますが、総じて言えば、いずれも文化交流と直接関係があるものばかりです。
 社会実践の面においても、季先生は文化交流促進のために、同様に多大な貢献をしてこられました。それゆえに、先ほどの結論は、確かな理論と実践にもとづいているのです。
 池田先生も、文化交流のもつ意義に対する深い理解から、これまで一貫してみずから文化交流事業の発展を推進し、世界平和実現のために、世をあげて是認されるような際立った貢献をしてこられました。
 また、私の知るところでは、池田先生が創立された「東洋哲学研究所」や「創価大学」「東京富士美術館」も、「民音」と同様、いずれも文化交流事業に数多くの感服すべき成果をおさめてこられました。
 お二方の文化交流の重要性についての透徹した論述によれば、われわれは自信をもって次のように言うことができます。
 「人類前進の歴史とは、文化交流の歴史である。文化交流を促進させることは、人類社会の進歩を促進させることである。
 反対に、文化交流を阻害し、破壊するやり方は、人類社会の進歩を阻害し、破壊することになる。とくに戦争はそうである。戦争は文化交流を阻害するだけでなく、文化自体をも壊滅させてしまう。
 ゆえに、戦争に反対し、戦争を阻止して世界平和を守るここと、文化交流促進は、相互補完の関係にあり、両者はどちらが欠けてもいけない」と。

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