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日蓮大聖人・池田大作

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1 『法華経』に使われている言語  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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1  サンスクリット化以前の俗語的要素
 池田 次に、『法華経』の起源について、おうかがいしたいと思います。
  梵本『法華経』形成の過程については、多くの論文の中でふれられています。
 池田 存じております。その中で、季先生は、”『法華経』の写本には、完全にサンスクリット化される以前の俗語的要素が多いと指摘されていますね。
 また、その俗語的要素にも重要な違いがあるとご指摘です。
  ええ、そうです。ここでは、要点だけ申し上げます。
 『法華経』には多くの写本があります。写本が古ければ古いほど、俗語の要素が多くなります。ある特定の部分だけではなく、全編を通してそうなのです。
 池田 重要な”要”のご発言です。
  現在まで伝えられてきた写本に、大きく二系統あります。
 一つは、ネパール本で、もう一つは中央アジア本(西域本ともいう。カシュガル本がその代表)です。
 池田 ネパール本の写本については、私どもの『法華経』写本出版の一環として、一九九八年十一月に『ネパール国立公文書館所蔵梵文法華経写本(No.4~21)ーー写真版』を発刊しました。
 また中央アジア本は、その代表であるぺトロフスキー本(カシュガル本の大部分を占める)を、東京で開催した「法華経とシルクロード」展に展示しました。
 このほかにギルギット本をあげる場合がありますね。五~六世紀のものとされます。
  このうち、ネパール本が新しく、中央アジア本が古いものです。ネパール本のほうが、サンスクリット化がより進んでいます。
2  釈尊の言葉を反映
 池田 具体的には、どういう点からそう言えるのでしょうか。
  その例をあげると長くなりますので、ここでは、結論と考え方だけにとどめておきます。
 池田 あまり学術的になっても、読者の方が理解するのに大変ですから、博士の結論で結構です。
  結論をまず申し上げます。
 大乗経典で最も重要で、最も古いものは『法華経』その発祥地は、インド東部のマガダです。
 池田 マガダは、先ほども話題にあがりましたが、釈尊が活躍した当時の中心地域ですね。
 マガダ国を中心に広く通商交易で用いられたのが、半マガダ語でしたね。
  そのとおりです。釈尊や弟子たちの多くは東部の出身です。半マガダ語は東部方言の一種です。
 この方言には、数多くの特徴があります。そのなかで最も顕著なのは、-a を語尾とする語は、男性複数主格で、サンスクリットでは -ah となるのに対して、東部方言では -ani となることです。
 『法華経』写本では、代表的在中央アジア本であるカシュガル本にこの現象が見られます。しかし、ネパール本では -ah となっています。このようなことから、原始大乗経典の発祥地は、当時で言う中天竺、すなわち現在のインド東部であったと推定しました。そして、古典大乗期になると、その起源は南天竺になったのではないかと推断しました。
 池田 なるほど。学者によって種々の分類がありますが、「原始大乗経典」とは、大乗経典のなかで最も古い時期に編纂されたものですね。種々の原始的な『般若経』などです。季先生は、今、ご指摘のように、古い特徴をもつことから『法華経』も「原始大乗経典」に含められました。
 「古典期大乗経典」とは、そのあとに、大乗思想が展開したのちのもので、如来蔵思想が明瞭な『涅槃経』などを言うのですね。
 先生は、『法華経』を代表とする「原始大乗経典」は、マガダ国など釈尊が活動をさかんに行った地域でできたとお考えなのですね。
  そうです。『法華経』は、釈尊自身が用いた言葉を反映しているのです。

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