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日蓮大聖人・池田大作

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第七章 新たなる「文学の復興」を――『…  

「旭日の世紀を求めて」金庸(池田大作全集第111巻)

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10  歴史と人物をみる眼を養う読書の醍醐味
 池田 『三銃士』の魅力は、いろんな個性がぶつかり合い、活劇を繰り広げていくところにあると思います。人生の劇も、同様でしょう。同じような個性の持ち主ばかりが集まったのでは、筋書きが読めてしまって、おもしろくもなんともありません。
 恩師は、よく言われていた。
 「人材を登用する場合は、組み合わせの妙というのがある。一たす一が二ではなく、三にも四にも五にもなる。そこが人間世界のおもしろさだ。同じような人間ばかりじゃおもしろくないし、大事も為せないぞ」と。
 金庸先生は人物描写の巧みさでも有名ですが、この点でも、あるいは『三銃士』の影響を受けたのでしょうか。
 金庸 『三銃士』から直接的に教わったわけではありません。私の場合はやはり、中国の古典小説から学んだものです。『三銃士』からは、むしろ歴史事実をどのように活用すればよいかを教わりました。
 池田 デュマと、古典小説。そのほかに、どうでしょうか。影響を受けた作品なり、作家は。
 金庸 もう一人の大切な師匠は、イギリスのスコットです。文学的な価値からいえば、一般にはスコットのほうがデュマよりも評判が上です。でもデュマの最も優れたいくつかの作品は、スコットの最も優れた作品と比べても、はるかに読みごたえがあります。
 池田 スコットの作品では『アイヴァンホー』を読んだことがありますが、やはりデュマの作品のほうが優れているように思います。これは、私の勝手な見方かもしれませんが。(笑い)
 金庸 池田先生は青年時代、文学の創作は詩作が中心でした。小説は書いておられませんでしたので、『三銃士』を読まれたときは、私とは違った感想をもたれたと思います。おそらく、四人の剣客が命令を受け取るや、全力を尽くし、毅然かつ不屈の精神で任務を遂行していく姿に、感銘を受けられたのではないでしょうか。
 池田 青年の「若さ」「健康」「気っ風のよさ」といった点では、やはり強い印象をもちました。
 それともう一つ、感銘を受けたという点から言えば、私はリシュリューという人物に興味をもちました。ご存じのとおり、近代フランスの礎を築いた大宰相です。
 権謀術数にたけた老練の政治家であり、複雑な性格の持ち主だった半面、"私"をかえりみることの少ない「無私の人」でもあった。特に人材を愛することにかけては、群を抜いていた。
 『三銃士』の最後のくだりでも、自分の配下であったミレディーを殺したダルタニャンを罰することなく、かえって銃士隊の副隊長に抜擢します。
 為政者としての度量の大きさ、敵味方を超えて人材を愛する心の深さでは、どこか『三国志』の曹操をほうふつさせますね。
 ともあれ登場人物と歴史上の人物を比較しながら読むことも、読書の醍醐味の一つですね。いい作品は、それだけ想像の翼を広げさせてくれるということでしょうか。

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