Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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3 父から子へ――体験、精神の継承  

「カリブの太陽」シンティオ・ヴィティエール(池田大作全集第110巻)

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11  子どもたちは世界の希望
 ヴィティエール マルティの作品で、この雑誌「黄金時代」ほど広く普及され愛されたものはありませんでしたが、残念ながら、出版社の似非宗教的な愚かさと経済的な困難によって中断されてしまいました。そのために彼が約束した、幼い読者からの手紙を掲載したり、彼らの質問に答えること――最終号から二番目の号で約束していました――ができなくなってしまいましたし、予告されていた『びっくり箱』も出版されませんでした。
 「黄金時代」はもっと多くの驚きを、もっと多くのすばらしい詩や物語を、回想や記述や知識を提供することができたでしょう。しかし、子どもも大人も、マルティの不滅のヒューマニズムについての巨細を学ぶためには、出版された四号の内容で十分でしょう。
 池田 先生、あなたも青少年向けの童話や小説を書かれるとのことです。キューバにおいては、とりわけ、田舎の学校で行われることが多いのですが、マルティの童話「バラ色のお靴」や「小指」「黒いお人形」「赤んぼう」「ドン・ポムポソさん」などの登場人物に扮した子どもたちが、楽しく劇を演じてみせてくれます。
 これに勝る感動的な催し物はないと思われますし、これらのマルティの作品は、世界中のあらゆる子どもたちの手で実現することが可能な、詩の魅力をともなった正義の理想であると、私たちは信じたいのです。
 池田 全面的に賛同します。新しい世紀を迎えて、世界の人々が、この世紀を「平和の世紀」「正義が栄える世紀」に、と願ってやまないところです。私自身、そのためにも、この世紀は「女性の世紀」そして「少年少女の世紀」であらねばならないと信じ、行動しております。「母と子が笑いさざめく世紀」こそ、真の「平和の世紀」であるからです。その意味で、今こそ、世界がマルティの人間愛のメッセージに耳をかたむけるべき時でしょう。
 周囲からは、悲劇に彩られた、殉教とも見えるマルティの人生――しかし、当のマルティ自身は、最期の瞬間まで「大きな喜びと確信」に満ちておりました。それは、あとに続く者に命を捧げ尽くした栄光と、そして、彼らにすべてを託した安心ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 この対談を終えるにあたって、マルティが「黄金時代」に記した言葉を、二十一世紀の建設に尽力される多くの方々とともに噛みしめたいと思います。
 「私たちは子供たちのために働いています。なぜなら子供たちは愛することのできる者たちだからです。子供たちは世界の希望だからです」(柳原孝敦・花方寿行訳、『選集』1所収)

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