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日蓮大聖人・池田大作

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はじめに「キューバの使徒 ホセ・マルテ…  

「カリブの太陽」シンティオ・ヴィティエール(池田大作全集第110巻)

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4  「キューバの使徒」マルティの殉教の対象は、愛する「祖国」であり「同胞」に他なりません。ヴィティエール博士も、対談中、「祖国への献身」を何度も強調されました。
 とともに、マルティは、「人類こそ、わが祖国である」と宣言した、まぎれもない「世界市民」であります。
 私は、一人の人間のなかで、「土着」と「普遍」、「民族意識」と「人類意識」、「愛国者」と「世界市民」の間に“橋を架ける人格”を、マルティに見いだすことができました。
 これは、本対談での計り知れない収穫であると感謝しています。
 グローバル化(世界化)が叫ばれている今日、その基底部に、マルティが体現しているような内在的な普遍性を据えなければならないと、私自身、長年、訴え続けてきました。
 なぜなら、グローバリゼーション(地球一体化)の反動とも言うべき「偏狭な愛国心」が、すでにあちらこちらに芽を出しているからであります。
 国連のガリ前事務総長が、私との会見で憂慮されていたように、この二極分化こそ、新たな世紀が直面している最大の課題と言ってよいでしょう。
 軍部権力と戦いぬいて獄死した、創価学会の牧口常三郎初代会長の先見も、ここにありました。
 牧口会長は、一人の人間が、身近な地域に根ざす「郷土民」であると同時に、国家に属する「国民」でもあり、また世界を人生の舞台とする「世界民(世界市民)」でもあると主張しておりました。すなわち、国家悪に流されない確固たる足場を、「郷土」と「世界」の双方に築いていくという哲学であります。
 私の敬愛する哲人政治家であり、詩人であるドミニカ共和国のバラゲール元大統領が、ホセ・マルティに寄せる一文を書いておられました。
 「マルティの最大の功績は、何であろうか?」
 「彼のもっとも偉大な点は、その業績でも才能でもない。彼の功績は、彼そのものである。彼のもつ人間の根源と、そこから湧きいずる生命力である。
 かのシェークスピアが、作中の人物に語らせた言葉ほど、マルティにふさわしいものはない。いわく『これこそは人間であった!』と」
 私もまったく同感です。
 この一書が、“人間ホセ・マルティ”を、キューバならびにラテンアメリカ諸国のみならず、広く世界に宣揚し、人類精神に立脚した新たな二十一世紀の地球文明建設の一助となるなら、マルティも、あのカリブの蒼天の彼方で、きっと喜んでくれるにちがいないと、ヴィティエール博士とご一緒に、私は信じます。
  二〇〇一年七月三日 池 田 大 作  

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