Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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輪廻観―インドとエジプト  

「内なる世界 インドと日本」カラン・シン(池田大作全集第109巻)

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4  カラン・シン 仏教の涅槃の概念に対応するのが、ヒンドゥー教の“モークシャ(解脱)”という概念です。“涅槃とは完全なる消滅である”という見方は、消極的で不十分な概念です。なぜならそれは、この光輝ある宇宙全体を、あたかも生じてはならなかった大きな過誤であるかのように評価させてしまうからです。
 大乗仏教ではより積極的な見方をし、涅槃とは壊れることのない幸福状態(アーナンダ)にいたる悟りである、と見ているということですが、このほうがはるかに満足のいく考え方であり、ウパニシャッドの理想に近づくものです。涅槃はまさに真実でない自我の消滅であり、自己啓発の過程の完成であると見ることができましょう。
 涅槃を成就する正確な過程をすべて説明することは容易ではありません。死ぬという行為それ自体では十分でないことは明らかです。なぜなら、肉体は滅しても、アートマンは認識しがたい身に居して発展を続け、最終的な解脱が得られるまでいくども人間としての生に回帰してくるからです。
 ヒンドゥー教も仏教も、死後に天界へ行けると約束しているだけではなく、この地球上に生きているうちに悟りを得ることができるという同じ考えに立っています。これは銘記すべきことです。

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