Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第二十章 最近の世界の動きに関して――…  

「太平洋の旭日」パトリシオ・エイルウィン(池田大作全集第108巻)

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6  人類の未来を信じる楽観主義に立ち
 池田 中国の数千年の歴史に脈打つエートス(気風)については、北京大学での講演(「新たな民衆像を求めて」、一九八〇年四月。本全集第1巻収録)や、中国社会科学院での講演(「二十一世紀と東アジア文明」、一九九二年十月。本全集第2巻収録)などで論じてきました。大要すれば、対立よりも調和を、分裂よりも結合を志向する「共生」のエートス、そして、個別を通して普遍を見る、現実そのものを直視し現実を再構成していく精神は、人類が未来を開いていくうえで寄与するところがまことに大きいと思います。
 つまり、前者は国際社会がめざすべき時代の潮流の核となるべき歴史の知恵であり、後者は“社会主義市場経済”という実験に見られるような、改革における漸進主義的手法の基盤となっている思想と言えましょう。加えて、香港の中国返還(一九九七年七月)にともなって始まる「一国二制度」の試みも注目されます。
 こうした中国がもつ特性というものはまさに、あなたがいみじくも指摘された「おそらく人間性という意味から見て、もっとも豊饒な文化をもっている」という事実に根ざしたものにほかならないと私も考えます。
 トインビー博士は私と対談した折、「中国こそ、世界の半分はおろか世界全体に、政治統合と平和をもたらす運命を担っている」と予見しておりました。私も、「尚文」という言葉に象徴されるような中国が長い歴史を通じて培ってきたソフト・パワーの潮流に着目しています。そして、この“人間主義的なモラルの力”こそ、今後の世界秩序を考えるうえで、一つの大きな機軸となりゆくものであると期待しています。
 さて、語らいは尽きませんが、私たちの対話もそろそろ結びとなります。最後に、二十一世紀は明るいと見てよいでしょうか。
 エイルウィン 私は生来、楽観主義です。私は人類のことを信じています。
 憂慮すべき問題はたくさんあります。そのうえ、歴史は人類の進歩の歩みは一直線ではないということを示しているのです。むしろ、向上しながらも、急降下があり、多くの障害があるのです。それでも、私は、二十一世紀を楽観的に希望をもって見ています。
 池田 よく分かりました。私も、必ず未来を明るくしていくとの確信と行動を自己に課して、楽観主義に立ちます。こうして論じあってきますと、あなたと私は、本当に多くの面で同じ方向に立っているように思います。二十一世紀の人類の明るい未来を信じて、この対話を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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