Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第十七章 チリにみる「人生地理学」――…  

「太平洋の旭日」パトリシオ・エイルウィン(池田大作全集第108巻)

前後
10  チリに脈打つ「人間主義」への共感
 池田 あらためて述べるまでもなく、貴国チリは、政治、経済、文化のいずれの面においても、たいへんに魅力に満ちた国であると言えましょう。
 政治面においては、中断の時期はあったものの、貴国はおよそ一世紀半にわたる民主主義の伝統をもつ国家です。経済面でも、“南米の優等生”と言われるような発展をとげております。
 また文化面では、高い教育水準を誇るだけでなく、前にもふれましたが、二人のノーベル賞詩人(ミストラル、ネルーダ)を出すなど、「詩人の国」としても名高い。
 なかでも私は、この二人の詩人に象徴される――民衆への限りない信頼や、平和と人権を求める勇気や信念など――貴国チリに脈打つ「人間主義」の気風に、深い共感の念とともに、二十一世紀への指針をみるのです。
 ネルーダは、力強く謳っております。
 「おれは 人民のために書くのだ」「いつか おれの詩の一行が/かれらの耳にとどく時がくるだろう/そのとき 素朴な労働者は 眼を挙げるだろう」「『これは 同志の詩だ』」((「大きな悦び」大島博光訳、『ネルーダ詩集』所収、角川文庫)
 またミストラルも、訴えております。
 「我が友よ! 憤怒しよう。平和主義とは誰かが信じるような甘いジャムなぞではない。憤りは私達を静かにさせておかない。激しい信念を私達にうえつける。私達が今いるその場所で“平和”を唱えよう。どこへ行こうと唱えよう。その輪がふくらむまで。……風に、海に向かって平和を唱えよう」(この詩は芳田悠三『ガブリエラ・ミストラル』〈JICC出版局〉の中で紹介されている)と。
 エイルウィン チリと日本の両国の文化が接点をもち、文化的、経済的ならびに政治的な交流を伸展させるためのあなたの貢献に、たいへん感謝しています。
 池田 恐縮です。私どもも微力ながら、両国に「友好の虹」をかけるべく努力してまいりました。民音を通じて、一九九〇年には「チリ国立民族舞踊団」の公演、また九二年、九四年と「チリ・バロッコ・アンディーノ室内管弦楽団」の公演を、日本国内で大好評のうちに行うことができました。
 そして、両国の修好通商航海条約百周年を記念する九七年には、東京富士美術館の海外交流展の一環として、貴国チリで「日本美術の名宝展」が開催されたことを、心からうれしく思っております。

1
10