Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第十六章 微笑の奥に――少年期と人格形…  

「太平洋の旭日」パトリシオ・エイルウィン(池田大作全集第108巻)

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7  座右に置く二人の肖像画
 池田 ところで、あなたは執務の側に置く肖像画として、解放者オヒギンスと賢人ベージョの二枚を選ばれています。二人は、チリの歴史に輝く偉人ですね。
 エイルウィン オヒギンスについて尊敬している点をとくにあげれば、愛国心、民主主義的資質、勇敢さ、無私無欲でしょうか。オヒギンスは祖国の父と呼ばれています。それは、彼が祖国の独立のために中心的役割を果たした人物だからです。
 私たちの国は、他のラテンアメリカ諸国と同様に、十六世紀半ばから十九世紀半ばまでスペインの植民地でした。フランス革命、およびナポレオン軍によるスペイン侵略を契機として、世界中に吹き始めた自由の嵐は、ラテンアメリカ諸国における解放運動の動きを発生させ、ほとんどの国において、一八一〇年には明白な意思表示がなされました。チリでは、この年の九月十八日に初めて独立をめざす行動がとられたため、この日は国の祝日となっております。
 しかし、独立がただちに達成されたわけではありません。スペイン人たちが抵抗したため、数年間におよぶ激しい戦闘が続き、一八一八年にようやく終結することができたのです。
 オヒギンスは農民でしたが独立戦争の志願兵になり、解放軍の指導者であったアルゼンチンのサン・マルティン将軍とともにチリ政府を樹立しました。ただちに基本憲章を作成し、政権の機能を整えました。
 その五年後に、大部分の国民が彼の政権を支持していないことを悟ると、武力による政権の維持を放棄して亡命の道を選びました。みずからの信じる価値観や原則に合致した行動をとれる、信念に満ちた人物でした。
 池田 正真正銘、無私無欲の人だったのですね。彼がサン・マルティンとアンデス山脈を越え、チリの解放に向かったことは有名です。マルティンについては、民衆のために行動した気高く果敢な生き方について、私自身、何度か青年たちに語ったものです。
 エイルウィン アンドレス・ベージョは、ベネズエラ生まれですが、とても学識豊かな人物で、長年にわたりチリ政府を支えてくれました。現在、ラテンアメリカのいくつかの国で適用されているチリ民法の創案者で著名な法律家でした。私たちの国を制度化した法律の施行にも深くかかわり、重要な役割を果たしました。そのうえチリ大学を創立して初代学長となりました。スペイン語文法、国際法に関する専門書、宇宙論などの著書のほか、さまざまなテーマのエッセーを書いていますが、また詩人でもありチリの上院議員でもありました。
 私にとってのベージョは、私たちの国を制度化していくなかで、文化と法律の真の価値を具現した存在なのです。

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