Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第一章 民主化への道――夕暮れにナベ、…  

「太平洋の旭日」パトリシオ・エイルウィン(池田大作全集第108巻)

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10  国民の自由意思で民主主義に復帰
 エイルウィン 光栄にも、私は、「ノー」をめざす政党連合――「ノーのための司令部」の先頭に立つことができました。恐怖と懐疑主義を乗り越えよう、との私たちの呼びかけは、同胞たちに受け入れられました。七百万人以上の人々が、選挙人登録を行ったのです。
 同時に、選挙手続きの公正さを監視するための無党派組織が出現しました。その組織は、国民からきわめて厚い信望を得ている人たちで構成されていたのです。しかも作業は友好関係にある国々の民主団体の積極的支援を得ることとなり、国民投票監視団という重要な代表団を送りだしてくれたのです。
 池田 現在は、すべてがグローバル(地球規模)な連携と位置づけのなかで推移する時代です。小さな村や町も、世界のなかで呼吸し、全世界とつながって、運命を共有している。一国だけの平和や繁栄がいかにナンセンスか。一地域が即地球に通じる。チリの勝利も、世界と同じ、時代の流れですね。
 エイルウィン 勝利への確信は、日に日に強まっていきました。確信は、微動だにしませんでした。国民投票が行われた日の午後、開票結果を知るにつれて、勝利感を味わっていました。しかし、政府が、開票結果の発表を故意に遅らせていることに対して、かなり深刻な不安感をいだきました。
 全国民に対して、結果を発表すべき内務省が、真夜中まで発表を遅らせ、回避し続けたのです。私たちは、危機感をおぼえました。政府はみずからの敗北を認めようとせず、武力で抑えこもうとしているのではないかと、ざわめき、憂慮しました。
 池田 勝利を最終的に確認できたのは、いつですか。その時どこにおられましたか。
 エイルウィン 国民投票が行われた夜(一九八八年十月五日)のことです。テレビ番組に、著名な政府支持者側の指導者で、軍事政権下で内務大臣も務めたことのあるセルヒオ・オノフレ・ハルパ氏と、反政府勢力の第一指導者である私が出演しました。そこで、ハルパ氏の発言は、「ノー」の勝利を認めることから始まったのです。
 その高潔なふるまいが、いかに果敢なものだったか、神のみがご存じです。魂が、私たちの肉体に帰ってきたのです。チリは、民主主義に復帰し始めたのです。平和な手続きで、国民の自由な意思で。

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