Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第十四章 「母性」のあり方  

「子供の世界」アリベルト・A・リハーノフ(池田大作全集第107巻)

前後
7  母の笑顔は子どもたちの未来を照らす
 池田 ソ連崩壊にともなうロシア社会の混迷の様子は、しばしばお聞きしています。
 しかし、リハーノフさん。私は、根本のところでは楽観主義者です。現実がどうあれ、未来への希望を失わないかぎり、そこには必ず、「幸福の道」があり、「平和の道」があるものです。
 母性というものも、どんなに揺さぶられようとも、決して「死火山」ではなく、「休火山」であります。地中深く蓄えられたマグマが、やがて時を得て噴出してくるように、必ずやすさまじいエネルギーとなって盛り返してくるにちがいない。もちろん、座して待っているのではなく、そのために力を尽くしていかねばなりません。
 母は「太陽」です。そのほがらかな笑いは、すべての人々に安心をあたえ、心の闇を照らします。
 かつて私は、わが愛する同志の母たちに贈った詩のなかで、こう謳いました。
   母親は
   疲れていても
   叱っていても
   真剣な態度であっても
   その奥には
   いつも笑いがある
   安堵がある 安心がある(「高貴な笑役者に贈る――尊き母の詩」)
 トルストイも言っています。
 「お母さまの顔はただでも美しかったけれど、微笑によってそれはいっそうすばらしくなり、まるで周囲のもの全体が明るくなるようであった。生涯のつらく悲しいおりおりに、もしほんのちょっとでもあの笑顔を見ることができたら、私はおそらく悲しみとはどんなものであるかをすら知らなかったであろう」(前掲『幼年・少年・青年』)
 家族の中の、母の笑顔の光。生命の輝き――ささいなことかもしれませんが、それこそが、子どもたちの魂を照らし、未来を明るく輝かせていくのではないでしょうか。
 リハーノフ 母性も、父性同様、人間の資質が問われる問題であります。周囲の世界、社会、その社会の発展レベルから切り離して考えることはできません。この世界の一部分を構成している要素です。
 また子どもに影響をあたえるのは、母親と父親だけとは限りません。環境、遺伝、社会の経済状況、文化等々、すべてが子どもの成長にかかわってきます。
 とはいえ、人間はだれでも生まれたときは、真っ白なカンバスと同じです。そして、自然の法則を繰り返しながら、無意識の存在からしだいに何者かによって成長していくのです。自分の名前、家族、歴史を学びつつ。
 そのいたいけな子どもにとっての屋根は、母と父です。多くの場合、母親だけということもあります。だからこそ、人間のあらゆる知恵と賢明さをもって、母性を保護していくことが、いやまして重要になってきています。
 池田 話題は尽きませんが、偉大なる母へのエールをもって、対談を締めくくりたいと思います。
 児童基金の役割は、ますます重要になってくると思います。総裁のさらなるご活躍を祈っております。
 リハーノフ ありがとうございました。一年あまり、楽しく有意義な語らいをさせていただきました。池田会長の東奔西走をはるかに想い描きつつ、ふたたびお会いできる日を念じ、心待ちにしております。

1
7