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日蓮大聖人・池田大作

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第十二章 成長家族――理想と目標の共有…  

「子供の世界」アリベルト・A・リハーノフ(池田大作全集第107巻)

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5  師弟に生きる家族は幸福
 池田 極論どころか、まさに正論であり大賛成です。恩師も、荒海で知られる日本の玄界灘で育った鯛は、身が引き締まっておいしいことに寄せて、若いころの苦労は、買ってでもせよ、と強調してやみませんでした。
 ここで、もう一点、社会に開かれた創造的な成長家族を築くために、人格の錬磨という面で、「師弟」の重要性について、再度、考えておきたいと思います。
 よく知られるように、ナポレオン戦争で荒廃したデンマークの復興に貢献したのは、グルントヴィとコルの師弟です。二人は、“民衆の大学”と呼ばれる「国民高等学校」という開かれた学びの場を通して、民衆教育を普及させました。
 グルントヴィの理念と闘志を受け継ごうと精進したからこそ、コルは、自身を向上させることができたのです。また、師よりも三十歳以上も若い後継の弟子がいたからこそ、デンマークの民衆教育は花開き、国土を蘇生させる原動力となったのです。
 牧口先生は、その著『創価教育学体系』の緒言でこの二人に言及され、コルの姿を愛弟子の戸田先生の闘争と二重写しにしておられます。すなわち『創価教育学体系』は、戸田青年の全力の献身によって完成したと感謝されています。戸田先生もまた、すべてをささげて牧口先生を守り、その偉大さを証明しぬかれたのです。
 師弟――この道に生きぬくところにこそ、「人間」としての最高の自己完成があります。「人間」としての最高の誇りがあります。こう考えると、「どういう家庭をめざすのか」「どんな子に育てるのか」という目的観を共有するとともに、共通の師の下で、悔いない人生を歩んでいることが、どれほどか充実した家庭を築きゆく土台となることであろう、と信じてやみません。
 あなたはこの点、どのようにお考えでしょうか。
 リハーノフ このテーマは、本対談ですでにふれましたね。付け加えて申し上げるとすれば、残念ながら子どもの心身の成長に完璧な教育環境を備えている家庭は少ないと言えます。多くの家庭生活は、寝て、食べて、しゃべってという日常の繰り返しです。それだけで十分だと言う人もいます。
 しかし、より本質的には、家庭は子どもにとって、精神的価値の源です。ところが、そうでない場合もある。そこで教師は、大局的に見れば、一種の補足的役割を担っていると考えます。家庭であたえきれない部分をおぎなってくれる人です。もちろん、教師がしっかりしている場合の話ですが。
 私は教師にたいへん恵まれました。戦時下で、私たちの先生アポリナリヤ・ニコラエヴナ・チェプリャシナは、文字どおり私たちを救ってくれました。物理的に救ってくれたこともありました。どの家もお父さんが戦いに出ていってしまい、父親の欠けた家庭が私たち子どもにあたえられなかったことを、彼女はすべてをおぎなってくれたと言えます。
 池田 さん、あなたのおっしゃる先生というのは、精神の師匠のことで、学校の教師とは異質のものだと私は理解しています。
 牧口氏のような運動の指導者は、戸田城聖氏のような、またあなたのような弟子を持たねばなりません。大きな運動と多くの同志を率いていく精神的師匠という存在で、学校の教師とは、まったく別です。ここでは、弟子が師匠の精神的理想を社会に伝えるという、まったく別の一歩が踏み出されていくのですから。
 創価学会の運動は、社会の幸福をめざす上での新しい運動形態とも言えるのではないでしょうか。そして、創価学会が代々卓越した精神性を持つ指導者を得たことを、私は心からたたえたいと思います。
 数百万の人々をたんに魅了しただけでなく、その人々が、隣人を救い、手をたずさえ、弱い立場の人々を助けようとの熱い願いを長年にわたって保ち続けられるように、励まし支えておられる指導者に恵まれたことを。

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