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日蓮大聖人・池田大作

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第九章 ティーンエイジャー――嵐と、花…  

「子供の世界」アリベルト・A・リハーノフ(池田大作全集第107巻)

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7  少年少女にとっての「信仰」の役割
 リハーノフ 人間の心は、精神は、別のところで鍛えられなければなりません。家庭の習慣、しつけが大事です。たんに甘やかすだけでは、ダメなのです。また、家庭も社会も、子どもに一方的に何かを与えるのではなく、子どもが、家族のため社会のために役立つべきだという風潮を、育てていくべきではないでしょうか。
 私はソビエト時代に育ちましたので、聖書もコーランも読んだことがなく、仏教のことも、ほとんど何も知らずにきました。今、年を重ねるにつれて、何か大切なものを失ってしまったような思いにかられることがあります。
 あなたは、不安に満ちた人間の世界と、聖なる言葉を結ぶことのできた優れた人格者であり、実践の方です。そのあなたにうかがいたいのですが、たんに子どもとか、大人にとってというのではなく、十代の少年少女たちの精神面にとって、信仰はどのような役割を果たすのでしょうか。
 池田 先に「すべて意味がある」と申し上げましたが、そう言われても、すぐさま、その自覚に立てるわけではありません。また、たとえ納得しても、その自覚を持続させ、深めていくことは、なかなか困難です。
 信仰には、第一に「祈り」がともないます。私たちが確認しあったように、健全なる「祈り」には、深い自己への内省があります。自己を生かしてくれるものへの感謝があり、他者への慈しみ、憐憫の情があります。謙虚ななかに勇気をつつみ込んだ明日への決意があります。
 この「祈り」を習慣化させていくことが、信仰のもつ、大きな役割なのです。ゆえに私どもは、朝夕の勤行の励行を重視しているのです。
 モンテーニュが、「習慣のなさないもの、もしくはなし得ないものは一つもない」(『エセー』、『モンテーニュ』1〈『世界古典文学全集』37、原二郎訳〉、筑摩書房)と言っているように、よい習慣――悪い習慣もそうですが――というものは、人格の形成に絶大な力をもっているからです。
 リハーノフ モンテーニュは、首尾一貫した教育理論体系を打ち立てており、それを超えるものはいまだ出ておりません。彼の理論は、きわめて科学的です。当時はまだ、生理学者イワン・パブロフの第一、第二信号系についての条件反射の理論は、打ち立てられていませんでした。
 しかし、モンテーニュは、習慣が繰り返されていくことによって、それが人の行動を形作り、将来の運命まで決定づけてしまうこともままあることを証明しました。
 池田 ええ。そして、第二に、信仰は、子どもたちに、よりよき触発の人間関係を育んでくれます。すなわち、よき先輩、友人による支えであり、切磋琢磨です。
 人間は弱いですから、独りで放っておかれると、どうしても精進を怠りがちです。したがって、弱っている時には励まし、惰性に流されている時はいさめ、傲慢になっている時は叱咤してくれる、真心の応援が欠かせません。そうした先輩、友人を、仏法では善知識と呼んでいます。
 とくに若い時代は、これぞと思う立派な人に出会った場合は、思いきって胸を借りるつもりでぶつかり、身も心も任せきってしまうことが、逆に自己の確立につながるという逆説的な真実が、人生には必ずあるものです。
 青少年は、だれよりも平和を願い、社会に貢献していくべきです。このことは十九歳のときに、恩師に師事し、昼夜を分かたず、文字どおり膝下に薫陶を受けてきた私が、何としても若い人たちに託し、継承していってほしい、人生の“黄金律”なのです。

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