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日蓮大聖人・池田大作

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第六章 いじめ――小さな暴力  

「子供の世界」アリベルト・A・リハーノフ(池田大作全集第107巻)

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6  君でなければできない使命がある!
 リハーノフ 私の場合、何がきっかけになって、この群の力に抵抗できるようになったかをお話ししてみたいと思います。
 ある日、ふらっと競技場に出かけてみたとき、そこでたまたま先輩に出くわし、彼は私をスキークラブに連れていってくれました。
 それがきっかけとなり、その後、私は彼と一緒に陸上競技を始めることにしました。コーチをしてくれたのは彼のお父さんで、陸上の教え方も上手でしたが、それ以上にすばらしい人であり、教育者でした。彼は、私たちに自己を確立すること、そう、男子として自立することをうながしてくれました。
 自分が、より粘り強く、より頑強になったと感じることは、男子にとって、とくに大事なことです。コーチは陸上の練習を通じて、私が以前には夢にも考えられなかったことを可能にしてくれました。
 その冬、学校でクロスカントリー(原野や森林などを横断するコースでの競走)が行われたとき、私は、いじめっ子の級友たちを次々にぬかして、先頭に出ることができたのです。それで、拳骨をふるわずして、一挙に自分の強さを証明することができたわけです。
 やはり、うるわしきは青春時代です。ともかく、いつの世も、いずこの国でも、青少年の友だちづきあいにあっては、何かで力をつけることが、自分の存在を認めさせる絶対条件のようですね。
 ある部分での私の欠点、他の人より劣っている点、ある一つの基準で見たときの欠乏状態は、ほかの何かで長所を引きだすことで、しだいに埋められるようになっていきました。ちょうどシーソーのように、一つダメだったら、別のことで挽回すればよい、と。
 池田 欠点を指摘するよりも、長所を見つけ出してほめてあげること――これは、人を育てるさいの鉄則ですね。
 どんな子どもでも、その子ならではの個性と何らかの長所を必ず持っているものです。そこに“追い風”を送ってあげると、才能の芽は急速に開花し、人格的な面でも、驚くほどの成長を見せる例がしばしばあります。
 かのチャーチルにしても、パブリック・スクールに入学したときは、ラテン語は零点、最下位で合格した、いわゆる劣等生であった。しかし、国語である英語を猛烈に勉強し、のちに、ノーベル文学賞に輝くような名文と、戦時下のイギリス国民を奮い立たせる雄弁の基礎を築いています。
 また、アポロ打ち上げの立役者の一人であるドイツのフォン・ブラウン博士にしても、勉強が好きでなく、成績も決してよくなかった。その彼が、母親が折にふれて語ってくれた星の話に触発されて、天文学が好きになり、苦手の数学も克服して、ロケット研究の第一人者になっています。
 日本では、標準的な“秀才”をつくりだすことに使われた「偏差値」などというものが、いまだに幅をきかせていますが、チャーチルにしてもブラウンにしても、その基準に照らせば“落ちこぼれ”の部類だったわけです。
 子どもたちの可能性は、もっともっと幅広く見ていくべきであり、あたら才能の芽をつむようなことがあってはならない。ゆえに、私は若者たちに、こう訴えています。
   われには われのみの使命がある
   君にも
   君でなければ 出来ない使命がある(「青年の譜」。本全集第39巻収録)

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