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日蓮大聖人・池田大作

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わが青春、わが故郷  

「二十世紀の精神の教訓」ミハイル・S・ゴルバチョフ(池田大作全集第105巻)

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14  閉鎖性を打ち破る″人類的視座″
 池田 たしかに、そうでしょうね。あの魅力的なゴルビー・スマイルが、どこから生まれたのか、少しわかった気がします(笑い)。民族問題については、のちに新たな章を設けて論じたいと思いますが、あなたのそうした気質は、二十一世紀に要請される「国際主義者」や「世界市民」のエートス(道徳的気風)と、深く通じていると思います。
 それはまた、『ソヴェト旅行記』におけるアンドレ・ジードや、『カタロニア讃歌』におけるジョージ・オ―ウェルらをつらぬく、普遍的な人間主義、人道主義の水脈であると思います。
 ″赤い三〇年代″といわれ、社会主義が人類史の未来にバラ色の夢を描きつづけていたころ、ジードはソ連を訪れ、早くもスターリニズムの画一主義や文化鎖国主義の悪をかぎとりました。旅行記が左翼を中心とした人々から総攻撃にさらされたとき、彼は、一歩もしりぞかず、「私にとっては、私自身よりも、ソヴェトよりも、ずつと重大なものがある。それは人類であり、その運命であり、その文化である」(『ソヴェト旅行記』小松清訳、新潮文庫)と語っています。
 ゴルバチョフ 創価大学の講演でも述べましたが、私たちの″新思考″の試みも、″全人類的価値″を復活させ、自由と人権を認め、素朴な道徳規範と人間的な社会のルールを、蘇らせることにほかなりません。
 池田 そうですね。
 また、同じ三〇年代、スペイン内乱に義勇兵として参加したジョージ・オーウェルは、何のために参戦するのかと問われ、「あまねきデイスンシィのために」(『カタロニア讃歌』新庄哲夫訳、早川書房)と答えています。デイスンシィとは「品位」「礼儀正しさ」「見苦しくないこと」などを意味します。
 いずれも、「人間の尊厳」の核心部分を成しているものです。こうした高貴なる人間性こそが、国家や民族の閉鎖性を打ち破って、人類史の普遍的視座を獲得していくために、欠かすことのできない機軸ではないでしょうか。
 ゴルバチョフ まったく、そのとおりだと思います。

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