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日蓮大聖人・池田大作

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「持てる国」と「持たざる国」  

「平和への選択」ヨハン・ガルトゥング(池田大作全集第104巻)

前後
2  池田 ただ今のご発言には、最大の文明論的課題への対応が、包括的であると同時に簡潔に要約されており、感銘を深くしました。前にも博士は、シューマッハーの主著『スモール・イズ・ビューティフル』の中の仏教経済学についてふれられましたが、彼の問題提起は、わが国でも新鮮に受けとめられました。その内容は、経済学に限らず、一種の文明論的な意義をはらんでいた、というよりも現在ますます意義を増しつつあるといってよいでしょう。
 彼は、「仏教経済学」の中で、仕事の役割について、①人間その能力を発揮・向上させる場を与えること、②一つの仕事を他の人たちとともにすることを通じて自己中心的な態度を棄てさせること、③まっとうな生活に必要な財とサービスを造り出すこと、の三点をあげていますが、効率主義に走るあまり、結局は人間がモノに従属してしまう従来の在り方に鋭く発想の転換を迫っており、副題の『人間中心の経済学』の面目躍如たるところです。
 ご存じのように、仏教史に顕著な否定的傾向として、“出世間”の境地を強調するあまり、経済をはじめ“世間”の出来事を軽視しがちであったことは否めません。そうした傾向からは、「仏教経済学」といった発想はなかなか生まれにくいのですが、その点、ヨーロッパの伝統を踏まえた異なる視点からのアプローチは、仏教の活性化のための尊いインパクトとなりうると思います。
 ガルトゥング 同感です。そうなることでしょう。そして、仕事によってこそ人々はみずからが高まって自己認識ができ、共同体においても社会においても有益たりうるのですから、仕事には若い人も老人も、子どもも引退した人も参加させるべきです。子どもたちはまたこのことによって、利用されることなく、むしろ得るところが大きいでしょう。しかし、こうしたことを実現するためには、経済活動のなかでもあまり生産的でない面、たとえば自然の再生、病人や老人の看護、文化的・精神的活動等の分野を開拓していかなければなりません。これは計り知れぬほどやりがいのある仕事です。

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