Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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八 仏教の社会観  

「宇宙と人間のロマンを語る」チャンドラー・ウィックラマシンゲ(池田大作全集第103…

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3  平和は衆生の善の集積で
 博士 それでは、貪欲や争闘や戦争のない平和社会を建設するプロセスを、仏教ではどのように説いているのでしょうか。私たちがめざすべきものは、寛容と平和という徳目を本来的にそなえている社会だと思うのですが。
 池田 「転輪聖王修行経」(大正一巻)という経典があります。この題名からわかりますように、この経典には、久遠という悠久の昔から転輪聖王による政治が行われていたことがしるされています。
 ところが、七代目の国王が正しい法を護らなかったために政治が混乱し、人々が争いを起こして、飢饉が起きました。そこで国王は、飢饉をなくすために国庫を開いて食物や金銭を放出しますが、人々は一段と盗みや殺害を重ねるようになっていきます。
 それは結局、衆生の精神の力、道徳性が衰えていったからであったのです。そのとき、人民のなかに一人の〈智者〉が現れ、慈悲心をいだいて自ら非暴力を実践するとともに、他の人々にも、ともに行動するように呼びかける。やがて、この智者の生活態度や意志に共鳴し同調する人が次第に現れてきて、多くの人々へと広がっていきます。
 仏典は、一人の智者の慈悲の実践を起点として、衆生・社会の〈共業〉が転換しゆくプロセスを説いていると思うのです。
 ここに私たちは、衆生の善の〈共業〉の力が集積することによって、平和社会が現出しゆく一つのプロセスを読みとることができるでしょう。

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