Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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六 人類共同体意識と天文学の使命  

「宇宙と人間のロマンを語る」チャンドラー・ウィックラマシンゲ(池田大作全集第103…

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4  菩薩的な〈世界市民〉に
 池田 天文学の果たす役割は、宇宙時代をむかえていちだんと増大していくようです。たとえば米ソの緊張緩和に先がけて、すでに宇宙観測の分野では、一九八六年のハレー彗星の探査にさいして、データの取り方とその交換について東西各国の間で協力が行われ、多大の成果を収めました。
 広大なる宇宙空間に目を向け、きらびやかな星座と語りつつ〈宇宙意識〉〈宇宙生命意識〉を養いゆくことは、地球人類としての〈連帯〉の感情と自覚を自然のうちにうながしていきます。〈宇宙存在〉のもつ積極的な意味が、今後の人類文明史にとって真摯に問い直されてもよいのではないでしょうか。
 博士 天文学は今日、まことに国際的な研究科目になっています。ただ今、一九八六年のハレー彗星観測にさいして国際協力が行われたことを話されました。ご指摘のとおり、この例からみても、天文学が国家間の抗争や憎悪を超えて人々をつなぎ、共通の目標に向かわせることができるのは明らかです。こうした協力がこれからますます多くなることは確実です。
 多くの国々の共同的努力によって得られた豊富な知識を、一国や二国の専有物とみなすわけにはいきません。それは人類全体を豊かにするためのものです。ですから、人類を地球的な規模で一致団結させるのにかならず役立たせなくてはなりません。
 今日、地球は人間同士の角突き合いに絶えず悩まされていますが、宇宙科学の発展の結果として現れるであろう新たな視点から見れば、そんな争いなど取るにたらないものでしょう。
 池田 私も人類が宇宙を詳細に、また深く知ることによって、未曾有の〈意識変革〉が生起すると考えております。すでに百人を超える宇宙飛行士たちが宇宙での生活を体験し、そこでの鮮烈な体験によって〈地球人類意識〉〈地球生命意識〉を獲得しています。彼らは宇宙から地球を見る広大な視野を与えられたことによって、国家や民族への帰属意識から、地球への帰属意識へと意識が転換したのです。
 同じように、天文学の進歩と宇宙論の展開は、人類の意識を地球全体に拡大し、〈人類共同体意識〉を形成しつつ、さらに生態系との共存を希求する〈地球生命意識〉へと発展させていくでしょう。このように天文学は、現象宇宙としての〈外なるコスモス(宇宙)〉への認識を拡張していきます。
 一方、仏教は、人間生命の内奥に展開する〈内なるコスモス〉を探索し、宇宙根源の大生命にまで至ります。この宇宙大の生命は〈外なるコスモス〉を生みだす源泉でもあります。
 そして、仏教の説き示す菩薩道は、宇宙生命を〈大我〉として生きる人間群を、民衆の大地から湧現させていくのです。ここに、宇宙根源の生命に立脚しつつ、地球を舞台に他者と連帯しゆく、自由にして慈愛にあふれた〈菩薩的人格〉の形成が可能になるのです。仏教の菩薩的人間こそ、〈世界共同体〉を担うにふさわしい世界観と道徳性をそなえた〈世界市民〉といえましょう。
 私は、天文学・宇宙論と仏教との共同作業によって〈地球文明〉への精神の覚醒をうながし、コスモポリタンとして活躍する菩薩的人間の出現を期待しうると確信しています。
 このような天文学のもつ人類的意義からしても、博士の研究がますます重要な成果を生みだし、宇宙の真実の姿を開示することによって、壮麗なる〈宇宙時代〉を創出しゆく崇高な使命を果たされるよう念願しております。

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