Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

二 人類史の中の現代  

「宇宙と人間のロマンを語る」チャンドラー・ウィックラマシンゲ(池田大作全集第103…

前後
3  「第二の枢軸時代」に
 池田 私も、東洋の文化が、西洋科学文明の危機の克服と、これからの人類文明の創出に貢献しうる豊かな内実をそなえている、と考えています。現代は〈哲学不在〉の時代と指摘されていますが、かつて人類史においては、カール・ヤスパースが「枢軸時代」と呼んだ紀元前五〇〇年ころは、中国、インド、ギリシャ等に人類の精神史を画する偉大な思想家・宗教者たちが〈世界同時的〉に出現しており、今日までの思想・哲学の源流となってきました。
 博士 おっしゃるとおり、紀元前五〇〇年を中心とする数百年間に、きわめて注目すべきことが世界中の人間に起きました。地中海沿岸で、アテナイやアレクサンドリアで、インドや中国で、それぞれ別個に人間の精神が大輪の花を咲かせたのです。
 池田 その後の時代にも多くの思想・哲学が出現していますが、「枢軸時代」に登場した人々に匹敵するほどの影響を人類に与えたことはありません。
 博士 これは、もはやそのような開花は必要なかったという単純な理由によるものでしょう。ソクラテス、釈尊、孔子によってひとそろいの基本的な哲学上の発見が完了し、それ以上は改良の余地がなかったのです。
 しかし私の推測では、宇宙時代がさらに前進すれば、一連の新しい基本的な哲学概念が生まれるでしょう。そして、それがこの先、数世紀にわたって人類に影響を及ぼしつづけることでしょう。私たちは今や、人類史上第二の「枢軸時代」の出発点に立っているのかもしれません。
 池田 たしかに、現代は「第二の枢軸時代」というべき巨大な転換期をむかえているといえるでしょう。ヤスパースの言う「枢軸時代」が個としての自覚化の時代とすれば、現代のそれは〈類的個〉としての自覚化の時代、すなわち〈人類的自覚に立った個〉が要請されている時代です。つまり、個人的エゴイズム、また民族・国家のエゴイズムを超越し、グローバルな視野に立った世界市民(コスモポリタン)への期待といってよい。
 宇宙時代を開拓する鮮烈な哲学・思想によって人類意識に目覚めたコスモポリタン――その連帯の輪が広がりゆくところに、〈地球文明〉の曙光が輝くのではないでしょうか。私は、宇宙時代の〈一連の新しい基本的哲学概念〉を生みだす母体として、東洋の文化、とくに仏教の内包するグローバルで生態学的な生命観、世界観が重要な貢献をなしうると考えています。

1
3