Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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六 中国漢方医学とインド医学  

「宇宙と人間のロマンを語る」チャンドラー・ウィックラマシンゲ(池田大作全集第103…

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4  期待される中国の試み
 池田 私も、身体を分析していって病気の実体を求める西洋近代医学の方法論に対して、包括的・相補的に調和の回復をめざす東洋系の医学への関心が高まっていることは、今後の医学の方向性を考えるうえで重要な示唆を与えるものと考えております。
 そこで、博士は中国漢方医学での全機性、東洋医学一般でいえば、心身のダイナミックな調和という包括的な態度が、西洋近代医学にどのような好影響を与えると考えておられるのでしょうか。たとえば現在、中国で行われているように、中西医学――漢方医学と西洋近代医学――の融合の試みは、新たな医学・医療のあり方を創造すると思われますか。
 博士 東洋の医師たちは、たとえば人間のような複雑な生物には驚くべき自律能力が備わっていることをはっきりと知っておりました。また身体のいかなる部分も、それが一つの独立した存在であるかのように取り扱うことはできない、ということにも気づいていました。そうした取り扱いをすることによって、生体全体の微妙な均衡が崩れることがよくあったからです。
 西洋の科学者たちが人体の機能におけるフィードバック効果の意味を完全に悟ったのは、比較的最近のことです。ところが実は、すでに十九世紀に、フランスの生理学者クロード・ベルナールが「生体の体内環境では定常状態が保たれる」との一般概念を初めて論じているのです。
 身体全体は体外環境の変化に絶えず適応することによって安定を保とうとするという概念は、現在ではホメオスタシス、つまり〈恒常性〉という名称で知られています。生きているか死んでいるかは、ホメオスタシスが支障なく働いているか否かで決まります。ホメオスタシスの働きの良しあしが、個人の健康状態を決定すると考えていいでしょう。こうしたことは、すべて現代医学がすでに認めていることです。
 しかし医療の現場においては、そうした全体論的な考慮はほとんど払われていないように見えます。抗生物質が軽率に処方されていることなどはその実例の一つです。
 考えますのに、人体の諸器官が相互に連関していることをもっと強く意識すること、そしてからだ全体にわたっての健康をもっと重視すること――それが西洋医学を利することになるのではないでしょうか。西洋・東洋双方の医学の最も良い部分を結びつけるべきだと思います。現在中国で行われているような試みが、将来はより強力で、しかも融通のきく医療方式の出現につながっていくものと確信しています。

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