Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第五章 日本の進むべき道  

「文明・西と東」クーデンホーフ・カレルギー(全集102)

前後
3  世界平和へ発信
 クーデンホーフ 二十一世紀の新しい太平洋文明の世紀を、現代の大西洋文明の世紀よりも、優れたものとするためには、なによりも日本が、世界平和のために貢献していかなければなりません。この新しい太平洋文明に向かって着々と準備することこそ、日本の果たすべき重要な役割です。
 そのためには、日本が、これまでのように西欧文明によりかかって、その西欧文明にのみこまれてしまっていたのでは、この重大な責務を果たすことはできません。日本は、アジア的でも、アメリカ的であってもならない――どこまでも日本的であるべきです。
 池田 まったく同感です。創造性と独自性こそ、これからの世界文明に貢献する道であるということですね。世界平和に寄与するということは、その創造性、独自性の上に立って、幅広い寛容の精神を貫き、人間対人間の真心の対話を繰り広げていくことではないでしょうか。
 クーデンホーフ そのとおりです。日本が世界に向けて輸出すべき思想は、あくまで日本人によって消化され、創造性を加えられた、生まれ変わった仏教でなければなりません。
 というのは、これまで、本当の意味で仏教がヨーロッパに受け入れられなかった理由は、それが、心情の面でヨーロッパと、あまりにも隔たりのあるインド、ネパール、チベットあたりから来たものだったからです。
 日本からの仏教であるならば、これらの国々からの仏教よりも、ヨーロッパにとって、はるかに受け入れやすいでしょう。
 池田 日本の将来の進むべき道として示された「世界平和のためにベストをつくす」という点について、具体的なお考えを聞かせてください。
 クーデンホーフ 日本が世界平和への使命を遂行するには、ちょうどスイスがヨーロッパで果たしている、偉大な先例にならうべきだと思います。
 今日、世界には、共産主義による世界革命と、民主主義の名において行われている反共主義との対立・相克が冷戦をもたらし、また、世界の一部では熱い戦争がつづいています。
 このなかにあって、日本は左右両勢力の、いずれの陣営にも絶対に加担することなく、断固、平和主義と完全中立と内政不干渉の原則を貫くべきです。
 また、アジア、アフリカなどのすべての諸国に対しても、民主主義たると共産主義たると、あるいは軍事独裁制たるとを問わず、他国の内政問題には、一切、くちばしをさしはさまない原則を貫くべきです。
 また、日本は、決して日本型民主主義を他国に押しつけるべきではありません。分割された二つの世界のなかで、日本は、あくまで中立を堅持すべきです。万一、将来、中ソ紛争が起こったとしても、厳に中立を守るべきです。不幸にして戦争になったとしても、日本のもっている文化的重要性のゆえに、厳正中立を守ることは、決して不可能ではありません。
 池田 完全中立を貫くということは、世界の平和を守るためにきわめて大事な点だと思います。過去の二度の大戦をみても、各国がいろんなつながりで、次々に参戦していったことが、惨禍を拡大した根本原因になっています。
 ふたたび大戦の惨劇を引き起こさないためには、他国にいかなることが起きようと、内政には干渉しない、また、いかなる紛争が起きようと、そのいずれにも加担しないという原則を各国が貫くことこそ大切です。
 完全中立というのは政治的・外交的姿勢だけを見れば、確かに消極的なようですが、平和にとっては、それが積極的な意味をもつし、より本源的には、対立・抗争の底流をつくりだしている思想・イデオロギーの対決を解消する、より高次元の思想の輸出が、平和を築く大きい力となっていくわけですね。
 クーデンホーフ 日本人が、世界平和建設に向かって進路をとり、その指導者としての役割を果たすとき、世界は初めて新しい時代の夜明けを迎えることができるでしょう。地球上の男女一人のこらず、生活の保障と福祉を与えられる、美しい平和な時代が到来することでしょう。
 池田 最後に、あなたが、今後成し遂げたいと考えていらっしゃることをお聞かせください。
 クーデンホーフ 日本とヨーロッパの関係を、より緊密にしていきたいと願っています。日本は、アジアやアメリカとの関係ほど緊密な関係を、ヨーロッパに対してはもっていません。
 したがって、私は、ヨーロッパに「日本の友」という委員会を設立し、日本に「ヨーロッパの友」という委員会をつくることを決めました。
 すでに述べたように、現在のヨーロッパは、沈みゆく客船のようなものです。それに対して、日本は新しい宗教ルネサンスのもとに、輝かしい未来に向かっています。やがて、これまでの大西洋文明の時代は、太平洋文明の時代へと移行することでしょう。
 ヨーロッパは、すべからくこの時代の流れを虚心坦懐に認め、日本に学び、日本と連携を密にしていくべきだと思います。
 そして、互いに結束して、資本主義の金権政治や、全体主義から人類を守り、同胞愛をもってする世界政府を建設していかねばなりません。
 人間的博愛と平和を推進することによって、自由と平等という二つの理想を和解させ、両立させつつ実現することをめざすべきです。「悲観的なビジョンを楽観的な行動で克服しよう」というのが私の座右の銘です。
 池田 どうも長時間にわたる有益な対談、大変ありがとうございました。ヨーロッパと日本のためにも、世界平和実現のためにも、あなたのますますのご健康とご活躍を祈ってやみません。
 クーデンホーフ 私も、日本のため、また世界のため、この重大な時に、あなたのご活躍を大きな期待をもって見守っております。

1
3