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日蓮大聖人・池田大作

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第四章 現代の目標  

「文明・西と東」クーデンホーフ・カレルギー(全集102)

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14  テレビ、人口問題、恋愛と結婚
 池田 現代は″テレビ文化の時代″と言われているとおり、とくに先進産業社会においては、夜の家族団欒の時間が、ほとんどテレビ視聴に費やされているようです。そして家族同士の対話を欠き、夫婦や親子の断絶を生む一因にもなっています。
 テレビ文化が人間の意識形成や価値観におよばしている影響は、大変大きいと言えます。これは、いろいろな角度から考えられると思いますが、とくにあなたがお感じになっているのはどういう点でしょうか。
 クーデンホーフ テレビは、たとえばアメリカでは、立法・行政・司法のバランスの上に立った大統領制中心の政治機構を変えつつあるように思えます。
 これまでは、議員のみが、自分の選挙区の有権者を戸別訪問するなど、直接有権者と接してきたわけです。今日では、テレビを通じて、大統領がどの家庭にも入り込み、直接話しかけられるようになりました。もっとも、国民のほうからは大統領に話しかけることはできませんが……。
 その結果、議会と大統領の間のバランスがくずれて、大統領のほうがずっと有利な立場になっています。こうして、アメリヵでは、テレビは、ある意味で代議政治制の脅威になっていると言えます。
 テレビは、視聴者の意識や判断をリードして世論を形成するうえで、新聞よりも影響力があります。そのため、有権者の自主的な判断力が、以前よりも低下しているのではないかと思われます。いわゆるタレント出身の政治家の出現などはテレビ文化の影響と言えますね。
 池田 次に、人口問題についてですが、地球が支えられる人口の絶対的限度は、どんなに多く見積っても、三百六十億人ぐらいだという説があります。今の人口の約十倍です。
 現在でも、人類の多くが飢餓状態にあり、このまま人口が増えていけば、将来、食糧問題はますます深刻になることは必至です。この問題の解決について、あなたのご意見をうかがいたいと思います。
 クーデンホーフ 人口問題の解決は避妊法を普及して出産率を低下させる以外にないと思います。生まれてくる子どもの九〇パーセントは母親の望んでいない子どもと言われているくらいです。現在、人口過剰に悩む国々への最高の援助は、避妊法と言えるかもしれません。
 もう一つ私が考えているのは、世界の食糧は、将来、陸よりはむしろ海洋から得られるであろうということです。
 これは、人類が海洋を汚染してはならない重要な理由の一つです。豊富な食糧供給源である海洋を汚染することは最大の悪である、と言わなければなりません。
 池田 食糧問題に関連して、日本では反対に、米の生産が多過ぎて、それが重要な政治問題になっております。この余剰米の対策について、いいお考えがあれば、おうかがいしたいと思います。
 クーデンホーフ 私は経済学者ではありませんから、この問題は私の専門外ですが、しかし、二つ私案を申し上げましょう。一つは余剰米を、低開発国や、飢餓国の児童への救済援助にあててはいかがでしょうか。
 もう一つは、日本酒を世界に宣伝してみてはどうでしょうか。ヨーロッパではブドウ酒やウイスキーやウオツカの味を知らない者はいませんが、日本酒の素晴らしい味を知っている人は、ごくわずかです。そこで、日本酒を大いに宣伝し、輸出すれば、余剰米問題解決の一助にならないでしょうか。
 池田 次に、うかがいたいのは、恋愛と結婚の問題です。
 現代社会では、恋愛は恋愛、結婚は結婚と別々のものとして割り切ることが若者らしい近代的な行き方であるかのように言われていますが、私はそれは間違いだと思います。やはり、真剣な恋愛は、結婚という実を結ぶためのものであるべきです。
 家庭生活というものは、一つの生命体と同じで、夫婦が互いにたゆまず努力し、成長していってこそ、幸福な家庭が舞かれるのであって、そこに夫婦の愛情の年輪、家庭の年輪が刻まれていくのではないでしょうか。
 恋愛と結婚についてのまじめな考え方こそ、こうした家庭生活の出発点となり、支えとなるものであると思います。
 ところが、そうしたモラルや考え方といったものが、世界的に変化してきていますが、北欧などにおけるフリーセックスなどの問題もこれと無関係ではないと思います。あなたは、これをどうお考えになりますか。
 クーデンホーフ はじめに、恋愛と結婚のモラルの問題ですが、動物のなかにも、たとえば白鳥や鷲やサイには一夫一婦制も、自由恋愛も両方あります。
 歴史上、一夫一婦制は、女性が自分や子どもを養うために、生活を支えてくれる異性を見つけなければならないという必要から形成されたものです。
 しかし、現在は事情がまるで違ってきました。女性が教育や技術を身につけて、生計をたてることができるようになったからです。私は、将来も、結婚とフリーセックスは別々の問題だと思います。
 同性愛の問題ですが、私は、人々が同性愛に否定的なのは、それが少数の例外的問題だからだと思います。
 しかし、ミケランジェロ、サッフォー、レオナルド・ダ・ヴインチ、シェークスピア、ソクラテスなど歴史上、最も偉大な人たちのなかに、同性愛の人がいます。生まれつきの人もいます。だから、一方的に同性愛を軽蔑することはできないと思いま
 す。
 池田 離婚が急増していることも危険な傾向ですね。こうした危機を、夫婦が、お互いの努力で乗り越えることによって、本当の愛情が生まれてくるのではないでしょうか。
 そうした試練を経ていない愛情は、それがいかに純粋で、美しいものであったにせよ、磨かれないダイヤモンドに等しいと思うのです。

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