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日蓮大聖人・池田大作

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代表幹部研修会(5) 世界を変えるには目の前の「一人」から

2005.8.15 スピーチ(2005.8〜)(池田大作全集第99巻)

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4  釈尊は「言葉を自在に使う人」
 ヤスパースは東洋哲学にも探究の眼を向け、『仏陀と竜樹』という著作を残している。その中で、ヤスパースは、釈尊は弟子たちにとって「言葉を自在に使う人」であったと述べ、その″言葉の力″″対話の力″に注目している。彼は記している。
 「仏陀はひとりひとりに語り、小さなグループで語った」「一切の者にむかうとは、ひとりひとりの人にむかうことにほかならない」(『佛陀と龍樹』峰島旭雄訳、理想社)
 釈尊は、一人一人と語り合った。一対一の対話を重んじた。「対話の名手」であった。相手に応じ、状況に応じて、巧みに語らいを進めていく。人々の心を動かし、変えていく。そこに、仏の偉大な実像があったのである。
 次元は異なるが、社会を変えるといっても、いっぺんに、すべての人を相手にするわけにはいかない。あくまでも、今、自の前にいる「一人」、現実にかかわっている「一人」が相手である。いかにその「一人」の心をつかみ、納得させ、変えていけるかどうかである。私たちは今、一人を大切にし、一人を相手に、誠実に語っている。その行動は、未来へ、世界へ、すべての人々へと波及していく。小さく、目立たないように見えても、じつに大きな意義が秘められているのである。
 さらにヤスパースは、他の世界宗教と比べて、釈尊の教えが際立っている特色として、「すべての人間のみならず、生きとし生けるもの(中略)これらすべてにかれの見出した救いをおよぼそうと志した点にある」(同前)と指摘している。こうした仏法の視点は、自然との共生を課題とする、これからの人類にとって、非常に大きな意義を持っている。
 東洋哲学に影響を受けたヤスパースは、晩年、「世界哲学」の構想を抱いていたといわれる。傑出した哲学者が注目した仏法の精神。私たちは、この大生命哲学を持つ誇りを胸に、地域に、世界に、対話の波を広げてまいりたい。

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