Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

創立75周年幹部特別研修会(2) 最後は真実と誠実の人が勝つ

2005.8.12 スピーチ(2005.8〜)(池田大作全集第99巻)

前後
2  若き日の編集長時代、忘れ得ぬ出会い
 この編集長時代、私は、一世を風靡した文人や画伯の先生方と、多くの出会いを結ぶことができた。ある時は詩を語った。ある時は文学を語り、ある時は哲学を語り合った。まことに思い出多き方々である。若い私のために時間をとってくださり、申しわけないかぎりであった。
 敬愛する大詩人の西傑八十先生には、「殺伐とした社会です。だからこそ、先生、偉大なる夢を与えきれる詩を、ぜひ書いてください!」とお願いした。先生は、「偉大なる夢……いい言葉だ」と、執筆を快諾してくださった。
 「銭形平次」などで知られる野村胡堂先生が、長編小説「大地の上に」を連載してくださったことも忘れられない。平和主義を掲げた大学者・丹波小十郎と、その弟子たちが、幾多の試練を乗り越え、「正義」と「慈愛」と「平和」の理想郷を目指す物語である。
 その登場人物の一人が、こう叫ぶ。
 「悪者の手先になって、良い人達を苦しめるほどの、恥ずかしいことが此世の中にあるでしょうか!」(「少年日本」昭和二十四年十一月号所収、日本正学館)
 連載開始は昭和二十四年(一九四九年)。あの、悪夢のごとき戦争は終わったものの、厳しい世相が続いていた。この小説には、「悪人に悪を遂げさせないために、正直で心の善い人達が虐げられないように、此大地の上に、理想の国ユ ー ト ピ アを築く為」(前掲昭和二十四年十二月号)との一節もあった。
 敗戦の焦土に新しき社会をつくるのは、子どもたちである。子どもに希望を! 子どもたちに夢を! 今度こそ、平和な国をつくろう! 悪にだまされない、逞しさを持とう! そういう息吹みなぎる雑誌を読者の手元に届けるために、毎号、毎号、必死で取り組んだ。
 ともあれ、じつに多くの先生方と、忘れ得ぬ出会いを刻ませていただいた。
 作家、詩人では、推理小説の大家である江戸川乱歩氏、横溝正史氏、「日本SFの父」海野十三氏、「ユーモア小説の元祖」佐々木邦氏、時代小説の山手樹一郎氏、冒険小説の山中峯太郎氏、そして南洋一郎(池田宣政)、城昌幸、藤島一虎、橋爪健、伊藤幾久造、白木茂、小西茂木、山田克郎、北町一郎、澤田謙、宝井馬琴、南沢十七、朱野守人、武蔵野寂、大木常雄ほかの各氏。
 毎号の表紙を描いてくださった林唯一画伯、傑作絵物語の山川惣治画伯、イラストの巨星・小松崎茂画伯、「大白蓮華」の小説『日蓮大聖人』の挿絵も担当してくださった、独特の気品ある武者絵で知られる山口将吉郎画伯、小説『人間革命』の挿絵を担当してくださった三芳悌吉画伯、そして飯塚玲児、玉井徳太郎、池辺一郎、田代光、松野一夫、福田三生、伊勢良夫、富田千秋、佐藤泰治、沢田重隆、三輪孝、伊勢田邦彦、高木清ら各画伯。
 漫画家では、『猿飛佐助』で有名な杉浦茂氏、そして島田啓三、芳賀まさお、石田英助、木村しげる、佐次たかしなどの各氏。
 いずれも、日本の文化復興に貢献された先生方である。その弟子として薫陶を受けてこられた縁の方々とは、今でも交流を結ばせていただいている。
 (=小松崎茂画伯の門下である根本圭助氏は、『冒険少年』をめぐる思い出を、次のようにつづっている。
 「池田氏は、昭和二十四年〈一九四九年〉一月から編集に携わったという。二十一歳の折り目正しくおとなしい、ハンサムな青年を、『他の連中とはちょっと違うなァー』と茂も姉の冨美子もいつも感心して接していたと、茂は懐かしく話していたら」〔「松戸よみうり」第五八七号、二〇〇四年十一月十四日付〕
 私は、まったく無名の一青年であった。しかし、相手がだれであれ、ただ誠心誠意を尽くして、接してきた。ある高名な作家の方が、「君は本当に誠実だね」とおっしゃって、「惟だ篤実のみ以て大事に当たるべし」(北宋の儒書『二程粋言』)――誠実さによってこそ、大事業を為せる――としたためた書を贈ってくださったこともあった。先生方への感謝は尽きない。その恩返しの意味も込めて、私も一生涯、良質の活字文化の復興に尽力していく所存である。
3  深き対話と人間外交の道を青年らしく
 戸田先生は、よく、閉ざされた青年であってはならない、と言われた。内外を問わず、どんどん人と会い、人と対話せよ! 人の心をつかみ、味方をつくれ! そのすべてが自分自身の訓練となり、財産となる――との薫陶であった。
 先生のご指導どおりであった。最後には、真実に生きる人が勝つ。誠実の人が勝つ。この信条で、私は学会の発展を支えてきた。
 かつて日昇上人から、「あなたは、戸田先生に仕える″四条金吾さん″ですね」「広宣流布の指導者であり、皆さま方の師である戸田先生を命を捨ててお守りになられましたね」と言っていただいたことがある。師のために戦う。そのとき弟子の力は、何倍にもなる。
 戸田先生と学会のために捧げた青春は、私の無上の誇りであり、かけがえのない勲章である。
 わが青年部は、さらに広く、さらに深い対話と人間外交の道を、青年らしく、生き生きと進んでいっていただきたい

1
2