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日蓮大聖人・池田大作

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ペルー国立教育大学「名誉博士号」授与式… 青年よ 正しき哲学を持て!

2005.1.22 スピーチ(2004.9〜)(池田大作全集第97巻)

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1  世界から新年状
 新時代の第一回全国青年部幹部会の開催、おめでとう!
 また、偉大なる人間教育の模範の先生方、遠くペルーの地から本当にようこそ、お越しくださいました。心から歓迎申し上げます!(拍手)
 初めに、この新春、世界中の皆さま方から、また著名な識者の方々から、たくさんのお祝いのお手紙をいただいた。
 激動の時代にあって、隆々たる発展を続ける学会に、多くの方々が注目し、「大勝利のなか、創価学会の大発展の七十五周年、おめでとうございます」「世界百九十カ国・地域のSGIの輝かしき大発展の三十周年、おめでとうございます」等々、真心の祝福をつづってくださっていた。この場をお借りし、厚く御礼申し上げたい。(拍手)
 (届けられた新年状から一部を紹介すると、国連のガリ前事務総長、チョウドリ事務次長、ローマ・クラブのハッサン会長、ヨーロッパ科学芸術アカデミーのウンガー会長、ブラジルのルラ大統領、インドのナラヤン前大統領、ソニア・ガンジー女史、中国の唐家璇とうかせん国務委員、中日友好協会の宋健そうけん会長、中国人民対外友好協会の陳昊蘇ちんこうそ会長、香港の李国章りこくしょう教育長官など世界のリーダーから。
 また、米デンバー大学のリッチー総長、モスクワ大学のサドーヴニチィ総長、インド・ネルー大学のカラン・シン総長、上海大学の銭偉長せんいちょう学長、韓国・慶煕キョンヒ大学創立者の趙永植チョーヨンシク博士、英グラスゴー大学のマンロー名誉教授、中国作家協会の巴金ぱきん主席、キルギスの作家アイトマートフ氏など学術・教育界の代表からも、真心こもる丁重なあいさつが多数、寄せられた)
2  全員が断じて勝利者たれ
 きょうは、次の五十年を担う若い世代の皆さんが集ってくださった。皆さんの未来は、大きく開かれている。博士になりたい人、実業家になりたい人、さまざまな夢があるだろう。
 ともあれ、私が申し上げたいのは、「若き皆さんは、敗北者になってはいけない」ということである。全員が、断じて勝利者になっていただきたい。たとえ一時は、負けたように見えることがあっても、絶対にあきらめない。
 前へ、どとまでも前へ! すべての試練を前進の糧にしていくことだ。そして、最後は必ず勝つ。そのための学問であり、教育なのである。
 敗北の人生は惨めだ。どんな言い訳も、結局は愚痴になり、ヤキモチになり、悪口になってしまうものだ。自分も傷つけ、人も傷つける。そこには、何の喜びもない。
 ゆえに、きょう集まった人は、ともどもに誓いあってまいりたい。
 女性は、最高の幸福者に!
 男性は、最高の勝利者に!
 そう皆で決意して、朗らかに、堂々と進んでいきましょう。
 また、お父さん、お母さんを、安心させてあげられる人であっていただきたい。
 とくに、お母さんに、うんとやさしく。お母さんが喜びに輝いている家庭は幸福である。
 お父さん、お母さんにとって、皆さんの「やさしい言葉」ほど、うれしいものはない。「お母さん、きょうは疲れたでしょう」「お父さん、たまには、ゆっくり休んでください」等々、誠実に自然に、温かな声をかけてあげられる人になってほしい。
 当然、表情とか、目の輝きとか、振る舞いなどによって、伝わっていくことも多い。
 そのうえで、やはり、声が大事である。「声仏事を為す」である。
 ウソをつくのも声。真実を叫ぶのも声。人を励ますのも声。悲しませるのも声。幸福にするのも声。
 私たちは、邪義を破る正義の声を、友の心をつかむ誠実の声を、時代を切り開く勇気の声を、わが地域に、社会に大きく響かせてまいりたい。皆さん、よろしく頼みます!
3  理想に燃えて勇敢に、朗らかに!
 ″人類の頭脳″ローマ・クラブの名誉会長ホフライトネル博士が、私の喜寿を祝って、「ドン・キホーテの像」を贈ってくださった。
 ホフライトネル博士とは何度もお会いし、書簡のやりとりも重ねてきた。大事な友人である。
 (=博士とSGI会長は二〇〇五年十一月に第三文明社から対談集『見つめあう西と東!――人間革命と地球革命』を発刊した)
 まことに貴重な像である。謹んで御礼を申し上げたい。
 ご存じのように、ドン・キホーテは、みずからが信じる正義のため、限りなき理想へ向かって、勇敢に、そして朗らかに″戦いと冒険の旅″を続けていった。スペイン文学が生みだした英雄である。今年は、作家セルバンテスの不滅の大傑作『ドン・キホーテ』が誕生してから四百周年にあたる。(第一部〈前編〉が一六〇五年に出版)
 これを記念する意義深き像に、ホフライトネル博士は「私もまた、貴殿(SGI会長)とともに、いつまでも一緒に、理想に燃えて生きてまいりたい」と深き友情を託してくださった。
 ドン・キホーテは青年に、わが信念の道を語る。
 「行動に際しては勇敢に、苦難に直面して忍耐強く、困窮せる者に対しては慈悲深く」、そして「真理の擁護者、つまり、そのために一命を失おうとも真理を守るような人間であらねばなりません」(『ドン・キホーテ』島信明訳、岩波文庫)と。
 きょうは、勇気と忍耐と慈悲を兼ね備えた「正義の青年」、まさしく「青年の中の青年」が勢ぞろいした希望の大会、おめでとう!
 ところで四百年前、南米でいち早く『ドン・キホーテ』が読まれたのは、現在のペルーであったと言われている。いにしえより、貴国は最先端の″英知と文化の都″でありました。
 そして、その貴国にあって、南米諸国に先駆け、「人間教育」の大理想に力強く遁進してこられた、偉大なる知性の城こそ、貴ぺルーのエンリケ・グスマン・イ・バイェ国立教育大学なのであります。(拍手)
 心より尊敬申し上げるソリス総長、そしてまたエルナンデス広報局長。
 ただ今、私は、いかなる栄誉よりも尊く誇り高き、教育の府からの名誉学位を賜りました。
 貴大学の百八十年を超す荘厳な歴史と伝統を深く胸に刻みながら、謹んで拝受させていただきます。まことに、まことに、ありがとうございました。(拍手)
4  国家主義の教育の狂いを正せ!
 貴大学は、モットーに「人間を人間たらしめる教育」を高らかに掲げておられます。
 まことにすばらしく、正しい理念であります。
 これまでの人類史の悲劇の流転は、教育の狂いによってもたらされたと言っても、決して過言ではない。これは、多くの学者も洞察するところである。
 狂った教育とは、一言で言えば、権力の魔性によって青年が利用され、犠牲にされる、軍国主義や国家主義の教育である。
 そうではなく、青年を心から愛し、平和のため、文化のため、そして、青年自身の勝利のために、若き力を最大に引き出していく確固たる哲学が必要ではないだろうか。
 深く正しき哲学を持たない人は、また、国は、やがて行き詰まり、最後はわびしく恐怖におののき、敗北し去っていくものだ。これが、歴史の厳しき現実である。
 個人も、国家も、最高の哲学を持っことが、どれほど大事であるか。
 私たちは、正しき生命尊厳の哲学を根幹にし、断じて、この二十一世紀を「教育の世紀」そして「青年の世紀」にしていかねばならないと思うが、諸君、どうだろう!(会場から「ハイ!」と力強い返事と拍手が)
5  ぺルー国立教育大学は、高逼な文化を伝え広めゆくとともに、虐げられた人民のために断固として戦い、悩める人々のために汝自身を奉仕させゆく「真実の人間指導者」を陸続と育成してこられた。尊い歴史である。
 この気高き使命と理念の貴大学を、厳然とリードしておられる信念の大教育者が、ここに、お迎えしたソリス総長であり、エルナンデス広報局長である。心からの敬意を表し、愛する青年たちとともに、盛大な拍手で歓迎申し上げたい。(拍手)
 (=ここで、総長と広報局長は、池田SGI会長のもとへ。総長は「感激です! 私たちは、この日を楽しみにしてまいりました」と。SGI会長は「ありがとうございます。うれしいです。本当に遠くから、また、いちばん寒い季節に来日してくださったご恩は、一生忘れません」と語った)
6  四国での″教育宣言″から満五十年
 ちょうど五十年前(一九五五年)のきょう、一月二十二日のことである。
 二十七歳の私は、師匠戸田第二代会長と一緒に、四国の高知県を訪れた。
 太平洋を通して、はるか南米の貴国ぺルーと結ばれた天地である。
 この日、会合が聞かれた。(高知地区の総会)
 質問会も行われ、そのとき、戸田先生は高らかに、こう宣言された。
 「今に創価学会も学校をつくるよ。幼稚園から大学まで、一貫教育の学校を必ずつくる。日本一の学校をつくるよ!」
 この遺言ともいうべき発言は、当時の記録にも厳然と残っている。
 それは、狂いに狂った軍部権力と戦い、殉教した牧口初代会長の悲願でもあった。
 この五十年、私は、ありとあらゆる難を乗り越えながら、師匠が語った夢も、構想も、ことごとく実現してきた。″日本一″と讃えられる創価学園、そしてまた創価大学をつくりました。
 さらには、だれも想像しなかった、アメリカ創価大学まで創立しました。皆さんも、ぜひ将来、アメリカ創価大学に行ってもらいたい。ご両親も、連れていってあげていただきたい。
 きょうは、四国の高知県で発表された、わが師匠である戸田先生のあの″教育宣言″から満五十年の記念の日である。
 まさにその日に、南米最高峰の教育大学、貴ペルー国立教育大学から拝受したとの栄誉を、私は「創価の師弟不二の勝利」の結実として、牧口先生、戸田先生に捧げたい。(拍手)
7  師弟の道は勝利の道
 名作『ドン・キホーテ』の中で、主人公が、こう語る。
 「感謝の念も、ただ心の中で思っておるだけのものであれば、それは実践のない信仰と同じで死物に過ぎぬ」(前掲書)
 ドン・キホーテは、″心の中で感謝するだけなら、本当の感謝ではない、自分は行動の中で感謝を示そう″というのである。恩を忘れない。師に対し、友人に対して、人間として感謝していく。
 それが正しい道である。
 そういう自分になることだ。そういう人を友人や先輩にもたなくてはいけない。
 私は、師匠への報恩感謝を、具体的な一つ一つの勝利の結果をもって、果たしてきた。
 死にもの狂いで果たしてきたからこそ、今日の世界的な学会ができあがったのである。
8  いちばん大変な時に一人、立ち上がれ
 かつて、戦後の混乱のなか、戸田先生の事業は挫折し、絶体絶命の苦境にあった。
 私は奮闘した。当時、二十代。猛然と戦い、勝利の実証を打ち立てた。
 もともと体の強くなかった私である。戸田先生は三十歳まで生きられるかどうか、わからない」と心配された。それほど戦って戦いぬいた。
 襲いかかってくる言論の暴力。傲慢な権力。嫉妬と悪意の人間群。あらゆる攻撃に対し、私は一人、矢面に立った。
 戸田先生は、そういう姿を見て、「本当に弟子というのはありがたい」と心で泣いておられた。
 師の偉大さは、弟子の戦いで決まる。弟子が偉大になることは、師匠が偉大になることである。
 いちばん大変だった時に先生のもとを離れていった弟子もいた。恩を忘れ、敵となり、「戸田の馬鹿野郎」と罵倒する人間もいた。
 そのなかで、私はただ一人、先生をお守りしたのである。
 私は申し上げた。
 「先生、待っていてください。私が必ず、仇をとります!」
 正義なればこそ、断じて勝たねばならない。
 正義の牧口先生の仇を討ったのは、戸田先生であられた。
 戸田先生の仇を討ったのは私である。これが師弟である。
 ここに人間の真髄の姿がある。
 愚かな弟子たちは、自分自身の卑怯な態度、卑劣な敗北の姿を、必ず残していく――こう厳しく語った教育者がいた。
 きょうは、海外から日本に学ぶ留学生の皆さんも、出席してくださった。大変ななか、本当に偉いと思う。「留学生、万歳!」と讃えたい。(拍手)
 日本の方々は、留学生の皆さんと、よき友人になっていただきたい。留学生の方から、それぞれの国のことなど、いろいろ学んでほしい。また、留学生を心から応援していきたい。
 留学生は、その国や地域の未来を担い、指導者となりゆく、偉大な使命をもった方々である。
 どうか、お元気で! お体を大切になさってください。
9  障害や試練を越えた原動力
 現在、新たな千円札の肖像画となっているのは、医学者の野口英世博士である。博士は、一九二〇年、ぺルーを訪問し、現地の医学者と力を合わせて、難病の解決に大きく貢献している。
 この野口博士が、手の障害や幾多の試練にも負けずに、世界的な研究を行い、活躍できたのは、なぜか。博士は″恩師のおかげである″と述べている。
 ここに人間としての偉大さがあると私は思う。
 戸田先生も、師弟の鮮の深さについて、涙を流しながら「俺と牧口先生は、こうだったよ」「お前とも同じだな」と私に語っておられた。二人きりの時であった。今の人には、なかなかわからないかもしれない。
 博士はつづっている。
 自分の成功が世のためになったとすれば、それは思師がなされたものです。私はただ、恩師の代わりに、これを行う役を受けただけです――と。
 (野口博士は、恩師にあてた書簡に記している。
 「小子の成功が世の為めとなるものありとすれば是れ即ち慈母ハ勿論なれ共御両親様〈=思師である小林栄夫妻のこと〉のなされしものニて小子ハ単ニ是れをなすの役を受けたるものと信じ候」〔丹実編、『野口英世』2、講談社〕
 博士は、恩師である小林栄夫妻のことを、深い尊敬をこめて「父上」「母上」と呼び、海外から多数の手紙を書き送っていた)
 この言葉を読んで、私は泣いた。恩師への深い「心」を感じた。師弟の道に徹しぬく人生ほど、強く深く、そして美しいものは絶対にない。そのことを、どうか諸君も知っていただきたい。
 ともあれ、希望に燃えゆく、晴ればれとした次の五十年へ、新しい創価学会の「師弟不二の大勝利」を、きょう集った大事な大事な青年部の諸君に全部託しておきたい。頼むよ!(「ハイ!」と力強い返事が)
10  教育は子どもの幸福のために
 ペルーの教育史に燦然と輝くホセ・アントニオ・エンシーナス先生も、百年ほど前、貴大学の前身にあたる師範学校を卒業している。この若き教育者は、二十代の生命を燃焼させながら、古い教育に断固として勇敢に立ち向かい、新しい挑戦を開始した。
 改革を始めるのは、つねに勇気ある青年である。青年が強くなって、下から上へ「改革」を、「革命」を起こすのである。牧口先生も、同じように訴えておられた。
 教育は、あくまでも″子どもの幸福″のためにある――これが貴大学に学んだ改革者の確信であった。創価教育の精神と、完壁に一致している。
 そして若きエンシーナス先生は、傲慢な聖職者による教育への介入などから、子どもたちを守るために決然と戦い続けた。
11  「私は学生の先頭に立つ!」
 後にエンシーナス先生は、サンマルコス大学の総長に就任する。
 学生の権利を護るために、独裁的な政治家ともまっとうから対決した。
 ″学生の側に立って教育するのか。それとも政府の側に立って教育するのか″――このように問いつめられる状況もあった。
 その時、エンシーナス先生は厳然と、そして悠然と、こう答えたのである。
 「私は、『学生の側に立つ』どころか、『学生の先頭に立っている』のです!」と。
 青年の道を開くため、命をなげうって戦ったエンシーナス先生の行動こそ正しい。これこそ、人間教育の魂である。(拍手)
 私もまた、一生涯、青年の側に立ち、そして青年の先頭に立って、戦いゆく決心である。
 諸君、一緒に戦おう! 断じて、勝って勝って、勝ちまくって一生を送ろう!
 結びに、ぺルーで″青年の詩人″として知られるホセ・ガルベスの詩を、諸君に贈りたい。
 「『倒れるまで戦いに戦おう!』という
 華々しい標語ではなく、
 『勝つまで戦いに戦う』という
 勝利への崇高なる心意気で!」
 戦いにおいては、一見、華々しい、口先だけの、人気取りの振る舞いは必要ない。
 「勝つ」ことが重要である。″勝つまで戦う″″戦って勝ち抜くのだ!″――わが世界一の青年部も、この心意気でいきましょう!
 愛するペルーの平和と繁栄を、私たちは、心からお祈り申し上げたい。
 そして、インカ時代にも人々から愛され、。ペルーを代表する花である「ラ・カントゥータ」のごとく、貴大学から、青年の希望と栄光の花が、さらに爛漫と咲き薫りゆくことを、お祈り申し上げます。
 「『太陽の国』ぺルー共和国、万歳!」「『勝利の太陽』わが青年部、万歳!」と申し上げて、私のスピーチを終わります。ありがとう!
 (東京牧口記念会館)

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