Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

各部合同協議会 君よ心に勇気のマーチを

2004.6.18 スピーチ(2004.1〜)(池田大作全集第96巻)

前後
2  私の胸中には、つねに恩師である第二代会長戸田先生がいる。
 厳しい先生であった。記憶力は抜群。朝から晩まで、激しく頭脳は回転する。先生の数々の指示の的は、つねに私である。徹底して鍛えられた。
 先生の事業が最大の苦境にあった時、私は渉外戦の矢面に立った。車もない。給料すら、もらえない。そして満身創洟の先生。このままでは創価学会はどうなるか――。
 「大作、頼む!」
 恩師の期待に、私は全責任を担って立った。勝利へ、劇のごとくに。
 師匠に安心していただきたい――ただ、その一心で、私は走った。
 戸田先生の会長就任後、学会全体で、弘教が、なかなか進まなかった。先生は私に言った。
 「それならば、大作、立ち上がれ!」
 蒲田で、大阪で、弘教の大行進が始まった。
 生き生きと、楽しく、友の心に勇気のマーチを奏でながら。そして、広宣流布の突破口を開き、永遠不滅の金字塔を打ち立てたのである。
 崇高なる師弟の道に生きぬけば、いかなる労苦も黄金の歴史に変わる。そこに、勝利と栄光輝く人生の無上道がある。
3  初代会長の牧口先生も、戸田先生も、海外に行かれることはなかった。しかし心は、全世界の平和を熱願していた。
 私は「平和への対話」「未来を開く対話」のために世界を駆けた。
 二十世紀を代表するイギリスの歴史家トインビー博士から、対談の要請があった。ロンドンの自宅で、若い私を抱きかかえるように迎えてくださった。一流の人格の博士であった。
 世界は広い。必ず「具眼の士」がいるものだ。
 博士の紹介で、ペッチェイ博士(ローマ・クラブ創立者)とお会いした。さらにルネ・ユイグ氏(フランスの美術史家)など、対話の旅は幾重にも広がった。
 モスクワのクレムリンでのゴルバチョフ大統領との出会い。キューバでのカストロ国家評議会議長との語らい。これらも忘れられない。
 対話が、壁を破る。対話が、道を開く。
 どうせ生きるなら、気宇壮大に生きるのだ。大いなる目的に向かって、「やるだけやってみよう!」と勇気の心で進む時、必ず、新たな歴史は築かれる。
4  青年を最大に大事にした周総理
 今年は、私が中国を初訪問して三十周年になる。
 それを記念して、周恩来総理夫妻の元秘書である趙煒ちょうい先生と、中日友好協会副会長の王效賢おうこうけん先生が、温かな声を寄せてくださった。(=「聖教新聞」二〇〇四年六月一日付に掲載。名誉会長は一九七四年五月三十日に中国を初めて訪れた)
 お二人は、「女性の世紀」の先駆者であり、重要な歴史の証言者でもあられる。私たち夫婦も、いくたびとなくお会いし、忘れ得ぬ思い出を刻んできた。大切な宝の友人である両先生に、心から感謝申し上げたい。
 趙煒ちょうい先生は、じつに三十七年間にわたって、秘書として周総理と鄧穎超とうえいちょう先生に仕えぬいてこられた方である。
 周総理のもとで働き始めたのは、二十代初めであった。
 尊敬してやまぬ総理との初めての出会い――。
 若き趙先生は、どうしていいかわからないほど、ただただ緊張するばかりであった。
 すると、周総理は、温かく手を取り、にこやかに、こう語りかけられたのである。
 「何も緊張することはありませんよ。私たちは皆、同志なのですから」(趙煒『西花庁歳月――我在周恩来鄧穎超身辺三十七年』中央文献出版社。以下同書を参照)
 このひとことが、どれほど安心と喜びを与えたことか。
 周総理は、青年を最大に大事にする指導者であった。
 私も、青年にいやまして光をあてている。青年こそ、後を継ぎゆく、尊き同志だからである。
 趙先生によれば、周総理は、ふだんは気さくでなごやかであったが、ひとたび仕事のことになるや、きわめて厳格であったという。
 報告を受けるさいは、つねに三つの点を厳しく求められたという。
 一点目は「正確さ」である。
 二点目は「スピード」である。
 そして、三点目は「簡潔明瞭」ということであった。
 周総理は、報告の中に、「だいたい」とか「たぶん」とか「かもしれません」といった曖昧な言葉が出てくるのを、決して許さなかった。そうやって総理は、つねに真剣に、正確で厳密な情報をすばやく集め、鋭く分析し、次々と手を打っていったのである。
5  「二十世紀の諸葛孔明」たる周総理の不滅の将軍学に、学ぶべき点はまことに多い。
 趙先生が長年、周総理夫妻と生活をともにするなかで、大きな影響を受けたことは、何であったか。それは「節約をする」心がけだという。
 総理夫妻は、自分の身の周りは、何事も質素であった。浪費を徹して戒めた。
 たとえば鄧穎超とうえいちょう先生は、電気がむだについているのを見れば、すぐに消させた。水道の蛇口が必要以上に開けられ、水が余分に流れているのを見れば、必ず注意した。
 一事が万事である。小事が大事である。
 思えば三十年前、私との会見の席で、周総理は、まだ豊かとはいえなかった当時の中国の経済事情を、率直に語ってくださった。
 趙先生は振り返っておられる。周総理は、持っている衣服も少なく、何度も修繕を重ねて、大切に着続けていたと。
 どこまでも、人民と苦楽をともにされゆくお姿であった。
 節約をする。むだを省く。堅実に工夫し、知恵をわかせていく――。それは、国家であれ、団体であれ、家庭であれ、よりよき繁栄をめざす真剣さの表れである。全体のこと、未来のことを考え、恒久的なすばらしい城をつくろうとする責任感の表れと言ってよい。
 どんな世界も、見栄や格好、贅沢や放逸に流されていくところから、崩れ始める。これは、歴史の鉄則である。
 若き日に読んだ哲学者・三木清の言葉に「虚栄は最も多くの場合消費と結び附いている」とあった。(『人生論ノート』、『三木清全集』1所収、岩波書店)
 見栄を張らず、人まねをせずに、自分らしく勝利することだ。
 また、「本当の倹約とは、つねにより高い次元において消費することである」と述べたのは、アメリカの思想家エマーソンである。(「富」、『エマソン選集』3〈小泉一郎訳〉所収、日本教文社)
 たしかに、そのとおりだ。私自身、節約し倹約して、そのぶんを「創価教育のために」、そしてまた「広宣流布のために」「同志のために」との決心で進んできた。妙法のために生きれば、さらに福運がついてくるのである。
 中日友好協会副会長の王效賢おうこうけん先生もまた、周総理夫妻の志を受け継いでおられる。王先生は、とくに、創価の女性のスクラムに多大な信頼と希望を寄せ、こう語られている。
 「私は聖教新聞を毎号、読んでいます。紙面にあふれる創価学会の女性の皆さんの活躍は、本当に素晴らしい」
 「創価学会の女性の皆さんの知恵と勇気と行動が、平和の逆行に歯止めをかけ、『人民が主人となる』時代を開く力になると確信します」(「聖教新聞」二〇〇四年六月一日付)
 われらの勝利が、人類史の新たな時代を開く。世界がそれを待っている。
 いよいよ力強く、いよいよ勇敢に、人間主義の勝利へ大前進してまいりたい。
6  真実への情熱、虚偽への怒りをもて
 きょうは、フランス創価学会のメンバーも参加されている。遠いところ、ご苦労さま!
 「教育の危機は、教育の危機ではない。それは生命の危機なのだ」(『半月手帖』平野威馬訳、昭森社)
 この有名な箴言を残したのは、フランスの詩人ペギー(一八七三年〜一九一四年)であった。
 ペギーは、かの「ドレフュス事件」のさいも、奮然と、虚偽や不正に立ち向かった。
 (ドレフュス事件は、一八九四年に、ユダヤ人砲兵大尉ドレフュスがスパイ容疑をかけられ、無実の罪で逮捕、弾圧された事件)
 その若き胸中には、「真実への情熱、正義への情熱、そして虚偽への怒りといらだち、うそと不正への許しがたい気持ち」(『もう一つのドレフュス事件』大野一道訳、新評論、訳者解説から)が燃えあがっていた。
 ペギーは、烈々たる闘魂の言論人であった。彼は訴えている。
 「嘲弄(=あざけり)の上にはいかなる文化もつくられないし、つくりなおすこともできない。嘲弄や皮肉や不正は野蛮人のものだ」「悪口では文化の再建はできない」(『われらの青春』磯見辰典訳、中央出版会)
 現代にも通ずる警鐘と言えよう。
 正義の人を嘲弄し、悪口でおとしめる社会は、必ず行き詰まっていく。だからこそ、人間主義の確固たる大哲学を掲げた創価の文化運動が、深く強く求められるのである。
 いかなる悪口罵詈も敢然と打ち破りながら、「生命の世紀」の新たな大建設を、私たちは断行してまいりたい。
 ペギーは叫んだ。
 「デマゴギイ(=デマ)に対する戦いはすべてのたたかいの中でいちばん永続的なものである」(前掲『半月手帖』)
 正義と真実の言論を、断固として師子吼していかねばならない。
7  「われは勝ちたり」と叫べる日々を
 東京富士美術館では、今秋、「ヴィクトル・ユゴーとロマン派展」が開幕する。
 この展覧会は、大文豪の生誕二百周年(二〇〇二年)の意義を刻むもので、フランスの国宝六点も、日本初公開される予定である。
 (=フランスのヴィクトル・ユゴー文学記念館と共催し、文豪の校正刷り、直筆書簡、写真など、ゆかりの品々を紹介。ルーブル、オルセーなど世界的美術館の名品が公開された)
 そのユゴーの言葉を、皆さま方に贈りたい。
 「我等の魂には、唯一の感情、友情があるばかりではないか」「強勁(=強いこと)ならんがために集団せよ、幸福ならんがために一致せよ」(『追放』、『ユーゴー全集』9、神津道一訳、ユーゴー全集刊行会)
 団結せよ、一致せよ――と。
 そして「若い立派な才の持主であり高尚なる精神の持主たる諸君に依って漸次光明は輝いて来るのである」「諸君の如き若き人々が勝利をかちうるのである」(同前)とユゴーは謳っている。
 若き青年部を先頭に、正義の勝利へ進みたい。全員が最高に価値ある人生を生き、すばらしき歴史を残すのだ。「われは勝ちたり」と言いきれる、一人一人になっていただきたい。
 日蓮大聖人は「法自ら弘まらず人・法を弘むる故に人法ともに尊し」と仰せである。さらに、「法華経を信ずる人は・さいわいを万里の外よりあつむべし」と断言しておられる。
 皆さま方の栄光の総仕上げの人生は、御聖訓に照らして間違いない。その確信と誇りをもち続けてください。
 きょうは本当にご苦労さま! 全同志の「完全勝利」を祈ります。
 海外の方々も、いつまでもお元気で、健康で、すばらしい人生を!
 大切な同志の皆さまに、どうかくれぐれも、よろしくお伝えください。ありがとう!
 (東京・新宿区内)

1
2