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フイリピン・キャピトル大学名誉人文学博… 進め! 生命尊厳の地球社会の建設ヘ

2004.6.6 スピーチ(2004.1〜)(池田大作全集第96巻)

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1  女性の連帯は希望の太陽!
 本日は、お休みのところ、わざわざ集まってくださり、本当にありがとう!
 海外のSGIの皆さま、遠くからご苦労さまです。婦人部の代表の皆さん方も、お会いできて、うれしい。また高等部、中等部の諸君、お父さん、お母さんによろしくお伝えください。親孝行を、お願いします!
 イギリスの哲学者ラッセルの有名な言葉に、こうあります。
 「知識なしには、私たちの希望にみちあふれた世界を建設することはできない」(『ラッセル教育論』安藤貞雄訳、岩波文庫)
 英知の学生部の諸君、よろしく頼みます!
 それは、十九世紀の末の歴史であります。貴フィリピンの一地域で、学校を設立する戦いが、傲慢な聖職者によって、陰険に妨害されました。そのとき、決然と立ち上がり、正義の声を堂々とあげたのが、勇敢なる女性たちであります。
 独立の大英雄ホセ・リサール博士は、このけなげな女性たちに、万感のメッセージを書き送りました。その中の一節を紹介します。
 「今や、我々の内に新たな希望が芽生え、我々は恐れることなく逆境に立ち向かおう。我々には、あなたたちという力強い味方がいる。そして勝利を確信している」(カルロス・キリノ『暁よ紅に』駐文館訳・発行)と。
 勇気ある女性の団結と連帯こそ、希望の太陽です。勝利の太陽です。わが創価学会も、婦人部の皆さま方の活躍が光っています。
 六月十日「婦人部の日」おめでとう!
 ここにいる全員で、婦人部の皆さんの日ごろの健闘に深く感謝し、心から賞讃の拍手をお送りしようではありませんか!(拍手)
2  東洋の真珠フィリピンの夕日は、世界で最も美しい。私も、その美しさに感動しながら、貴国の夕日を写真に収めた日のことを思い出します。
 このすばらしき貴国の天地にあって、「人間教育の太陽」と仰がれ、慕われる偉大な母がいます。
 その方こそ、きょう、ここにお迎え申し上げた貴キャピトル大学の創立者ラウレアナ・ロサレス先生であられます。本当に、ようこそお越しくださいました。私どもにとって、未来永遠に輝く黄金の歴史の日となりました。
 本日は、ロサレス先生方への心からの尊敬をこめて、首都圏の婦人部の代表が集っています。また、創価大学、創価女子短期大学など七十の大学の学生リーダーが結集しました。そして、アメリカ創価大学の英才も駆けつけてくれました。さらに、未来部の秀才たちも出席しています。
 皆さん、ありがとう!
3  大学を創立するという事業が、どれほど血のにじむ壮絶な戦いであるか。それは創立者にしか、わからないでありましょう。
 私は、気高き人間教育の名門である貴キャピトル大学からの、あまりにも意義深き「名誉人文学博士号」を厳粛に拝受させていただきました。
 きょう六月六日は、日本の軍国主義と戦って獄死した創価の父・牧口初代会長の生誕百三十三周年の佳節です。
 この栄誉を、私は、謹んで、わが殉教の先師に捧げたいと思っています。まことに、まことに、ありがとうございました。
4  教育で「平和の人材」の種を
 それは、六十二年前のことです。(一九四二年四月)
 狂いに狂った日本軍は、貴国のうるわしき天地を蹂躙し、残酷きわまりない「バターン死の行進」を行いました。炎天下のもと、疲れ果てた人々に、十分な水や休憩を与えず、約百キロメートルの道のりを延々と歩かせたのでした。衰弱し、倒れた人は、次々と残忍に殺された。極悪非道な蛮行によって、じつに二万人もの尊い命が奪われたと言われています。
 「死の行進」にあって、愛する母親を支え、守りながら、七人の兄弟姉妹とともに歩き通した聡明な一人の乙女がいました。高等部の皆さんと同じ年代です。
 この地獄の行進を耐えぬき、さらに、その後の日本軍による悪逆な支配の時代をも生きぬいた乙女は、固く固く誓いました。
 「大切なのは、教育である。私は、平和な世界に貢献しゆく、人材の種を植えてみせる!」
 彼女は、苦学を重ね、努力を重ねながら、見事な模範の大教育者となっていくのです。そして、ありとあらゆる艱難を乗り越えて、民衆の幸福と平和のための大学を創立していきました。その尊貴な信念の女性こそ、きょうお見えくださった、創立者のロサレス先生なのです。
 私は、この歴史を、全身の血潮が逆流し、血涙がほとばしる思いで、うかがいました。
 またきょう、あらためて仏法者として、貴国のすべての戦争犠牲者の追善を、妻とともに懇ろにさせていただきました。
 仏法では、「この大宇宙のすべての財宝を集めたよりも、一人の人間の一日の生命のほうが尊い」(御書九八六ページ、趣意)と教えています。いかなる理由があれ、絶対に人を殺してはならない。断じて人を傷つけてもならない。
5  正義の師子に、「全体人間」に
 生命尊厳の大闘争を、命を賭して貫いた牧口先生は、三種類の人間がいると鋭く論じました。
 第一に、弱い立場の人をいじめ、強い人間を恐れる卑怯者。
 第二に、悪人とも戦わず、善人の味方もしない傍観者。今の世の中に、こういう人間は多い。
 そして第三は、正義のためには何ものをも恐れず、断固として戦いぬいていく勇気ある者。これこそ、最も偉い人です。
 青年よ、強くあれ! 正しくあれ!
 平和のため、正義のため、幸福のために、生命の価値を創造せよ!
 ここに、牧口先生の願いがありました。
 これは、貴大学が掲げておられる「全体人間」の高邁な理想とも相通ずると、私は信じます。それは、「知的」にも、「精神的・道徳的」にも、そして「肉体的」にも健全な人間の薫陶をめざすものです。
 ここにおられるフアレス学長ご自身が、まさにその「全体人間」の鑑を示されています。学長は、巌のごとき正義の弁護士として、虐げられた人々のために献身してこられた。その足跡に多くの人が感謝し、学長を敬愛していることを、私はよく存じあげています。
6  正義の使命の道には、大なり小なり、嫉妬の悪口や、陰湿な迫害が難いかかつてくる。そうでないなら、にせものです。
 あのリサール博士も、そうでした。しかし博士は、もし自分が倒れても、あとに続く青年が、必ずやみずからの理想を実現してくれることを信じてやまなかった。
 私も同じです。私には、博士の心情が、痛いほどよくわかります。後継の皆さん、よろしく頼みます!
 私が、未来の一切を託す思いで、わが高等部を結成したのは、三十代の半ば――ちょうど、リサ―ル博士が殉難したのと同じ年代でした。(リサール博士は三十五歳で″革命扇動者″の容疑により処刑された)
 博士は若くして、信念に身を捧げたのであります。私も、若き日、正義のために、無実の罪で牢獄に入りました。私は体が弱かった。しかし、殉教の精神で戦いました。戦って、戦って、戦いぬいてきました。
 命がけの正義の闘争を裏切り、批判して、去っていった者どもは、人間として最低である――ある人がこう言っていましたが、私も同感です。
 ともあれ、明日、六月七日は、高等部結成四十周年です。まことに、おめでとう!
 今や、高等部出身者は立派に羽ばたきました。この会場にも、私と妻が、高等部の時から見守ってきた懐かしい方々が大勢います。
 今回、来日されたフイリピンの研修メンバーにも、誉れ高き高等部出身者がおられます。(来日した高等部出身者が笑顔で立ち上がり、場内から大拍手が)
 よく来られました! 私は本当にうれしい。帰ったら、同志の皆さまに、くれぐれも、よろしくお伝えください。お元気で!
 正義の学会とともに戦いぬいてきた人は、一人ももれなく、勝利の人生を飾っています。反対に、退転し、尊き学会を裏切った人間は、みじめな人生を歩んでいる。因果の理法は厳然であります。
 いずれにせよ、世界中のあちこちで、高等部出身者が、そしてまた、創価大学や創価学園の卒業生が、重要な役割を担い、すごい勢いで活躍しています。そうした事例は、枚挙にいとまがありません。
7  ″師子(ライオン)の子は師子である″――リサール博士は、こう書き残しています。(『ノリ・メ・タンヘレ――わが祖国に捧げる』岩崎玄訳、井村文化事業社。参照)
 いい言葉です。
 博士は、若き日、最愛の母を無実の罪で投獄された。母だけではない。善良な庶民、そして正しき偉人が、どれだけ邪悪な権力から迫害されてきたか。
 だからこそ、じっとこらえて、今に見よ! 今は徹底して学ぼう! 圧倒的な力をつけよう! そして、正義の仇を、断じて討ってみせる!――こうリサール博士は決意した。これが、博士の青春の魂でありました。
 どうか、わが創価の後継の皆さんも、全員が正義の師子となって、この青春を生き生きと学びぬき、朗らかに走りぬき、計り知れない力を発揮して、戦い、勝ってください。
 「早く生い立て!」「強く伸びゆけ!」「一級の闘士と育て!」と、私は祈りぬいてまいります。
 頼みます!
8  わが辞書には″敗北″という文字はない
 創立者の令嬢であられるフェ・フアレス副学長が、お母さまのことを誇り高く語られた言葉に、私も妻も、深く感銘しました。
 それは「わが母の辞書に″敗北″という文字はありません」というひとことです。
 われわれも、この言葉でいきましょう! フイリピンのお母さまに続きましょう!
 何があっても、負けない。それが「勝ち」です。「負けない」ことが「勝利」です。
 絶対にあきらめない。断じて屈しない。これがすなわち、勝利なのです。これこそ、幸福博士の真髄の哲学です。
 きょうの夕方、オリンピックの聖火が、この会場のすぐそばを走る予定です。(二〇〇四年六月六日、アテネ五輪の聖火リレーが東京で行われた。聖火は史上初めて五大陸を巡り、日本にはオーストラリアから空輸された)
 思えば、貴大学のロマン薫る「キャピトル」という名称は、いにしえの人文学の源流を踏まえながら、「学問の中心」「青年の中心」という、深遠な意義をこめて命名されたとうかがっております。
 本日、先生方は、その知性の殿堂より、人類の未来を照らす「英知の火」「正義の炎」を運び、私たちの心に明々とともしてくださいました。
 尊敬申し上げる貴大学の先生方とご一緒に、私たちは、この崇高な精神の炎を燃えあがらせ、戦争のない、暴力のない、殺人のない、生命尊厳の地球社会の建設へ、勝ち進んでまいろうではありませんか!
9  未来は私の手に
 終わりに、貴国の第三代大統領(一九四六年のアメリカからの独立以後の第三次共和国第三代大統領)である、マグサイサイ大統領の言葉を引かせていただきたい。
 「民主主義の本質が、国民の政治への参加であるならば、民主主義は、国民の″教育への愛″と″学問への情熱″が、最大限に表現され、まっとうできるところで最も栄えるだろう」(Aurelia del Fierro, Magsaysay : the leader of the masses, translated from the original Spanish by Luis Serrano, Manila)
 まったく同感です。人間教育なくして、民主主義はないのです。少しむずかしいかもしれないが、よくかみしめてほしい名言です。
 さらに、リサールは言いました。
 「我々が一つにしっかりとまとまれば、組織もますます強くなっていく」(前掲『暁よ紅に』)
 そして、こうつづっております。
 「勝利は、あらゆる戦線で勝ちどきの声をあげようとしている」「おお、そうだ! 未来はわれわれのものだ」(『反逆・暴力・革命』岩崎玄訳、井村文化事業社)
 きょう、お集まりのすべての皆さま方の、ご健康とご多幸、そして栄光・勝利の人生行路を断じて勝ち抜いていかれんことを祈り、私の心からの御礼のスピーチといたします。
 ありがとうございました。
 (創価国際友好会館)

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