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日蓮大聖人・池田大作

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第二十六回本部幹部会、全国壮年部幹部会… 社会で勝て! 負けじ魂が学会魂

2003.3.5 スピーチ(2002.8〜)(池田大作全集第94巻)

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1  真実の世界に生きよ
 きょうは、若々しい壮年部の幹部会、おめでとう!(拍手)
 全国そして海外の皆さん、遠いところ、ご苦労さま!
 はじめに、韓国の独立運動の指導者として高名な安昌浩アンチャンホ先生の言葉にふれたい。
 「真理には必ず従う者がいて、誠意は必ず実を結ぶ日が来る。死んでもうそがあってはならない」(金素天『韓国史のなかの100人』前田真彦訳、明石書店)
 アン先生は、「嘘」を憎み、「真実」を愛した。高潔な指導者であった。
 真実の世界に生きよ! 嘘に編されるな!――これが、独立の闘士の叫びであった。
 創価学会は「真理」と「誠意」の団体である。必ず「実を結ぶ」ことは間違いない。
 反対に、正義の人を陥れようとする小人物は、最後は必ず滅亡する。
 中国の思想家・荀子じゅんしは言う。
 「正義の人を笑いものにし誠実な人を賊だとする。滅亡したくないと思っても、どうして滅亡せずにおれようか」(『荀子』金谷治訳注、岩波文庫)
 世界的に知られる賢者の名言である。
2  魂をこめたもの鮮杢渥に輝く
 さて、世界から、私のもとに、毎日、さまざまな報告が来る。けさも、中国の北京で語学の研修を受けている女子部の方から連絡があった。
 それは、中国語教育の最高峰として名高い北京語言大学という大学の教科書に、私と常書鴻じょうしょこう先生の対談集『敦煌の光彩』(本全集第17巻収録)が、大きく収録されているという知らせであつた。(拍手)
 この大学には、世界百二十力国以上の留学生が学び、当代随一の授業の質を誇っているという。
 そこで用いられる教科書は、厳格に選定され、まことに権威のあるものとされている。
 (北京語言大学は一九六二年創立。中国教育部直轄で、中国唯一の対外国人中国語教育の専門大学。世界の中国語教育の中心であり、同大学の教材は、国内の多くの大学および世界中で使用されている。昨年〈二〇〇二年〉九月、北京語言文化大学から現名称に)
 この教科書の中に、大文豪・魯迅先生の名作などとともに、「敦煌の守り人」として有名な常先生と私の対談集が収められ、多くの留学生たちが朗読し、暗唱しているという。
 教科書に取り上げられているのは、「敦煌美術の特色」について語りあった部分である。
 ″なぜ、敦煌の芸術が永遠性の輝きを放っているのか。それは、名もない民衆が、魂をこめて創りあげたものだからである″と論じたところが引用されている。
 敦煌――それは「大きく輝く」という意味である。
 今、私たちも、永遠に崩れない、輝く民衆の勝利の″敦煌″を築いているのである。
 きょうは、芸術部の皆さんもご苦労さま!(拍手)。皆さんは、芸を磨き、人間を磨いておられる。魂を磨いておられる。だから大きく輝いている。(拍手)
3  中国といえば、光栄なことに、北京大学に「池田大作研究会」、また天台大師ゆかりの地に立つ湖南師範大学には「池田大作研究所」が創設されている。
 そして、蘇州大学の図書館には、「池田大作先生文庫」が設置されたとうかがった。
 また現在、中国で発刊されている多くの箴言集でも、世界一流の人物と並んで、私の言葉が収録されている。(拍手)
 精神の大国インドでも、私の詩を、歴代の大統領、首相をはじめ、多くの指導者層の方々が愛読してくださっている。インド最大の英字新聞(「タイムズ・オブ・インディア」)の″ベスト随筆集″でも、私のエッセーが取り上げられた。
 また、未来の指導者を育てるセトゥ・バスカラ学園では、私の詩を使って授業が行われている。
 このインドの学園では、試験で「池田先生の師匠は、だれですか?」という設問があるとうかがった。
 私のことはともかく、世界広宣流布の光は、地球に、未来に、限りなく広がっているのである。(拍手)
4  広布の労苦も永遠の福運に
 私は、けさ、いつもより早く目が覚めた。妻が「もう配達員の皆さんが『聖教新聞』を配ってくださっている時間です。感謝しなければいけませんね」と言った。
 本当に、そのとおりである。無冠の友の皆さま! 毎日、ありがとう!(拍手)
 私と妻は、皆さまのご健康と無事故とご多幸を、いつも心から祈っている。
 すべては、自分自身のための修行である。自分の永遠の福運、一家一族のすべての福運を″今、積んでいくんだ!″と決意することだ。一人の人間革命は、一切を幸福の方向ヘ、希望の方向へ、平和の方向へと転換していく。
 どうか愉快に、楽しく前進していただきたい。
 スピードで勝つことだ。勇気で勝つことだ。そこに新しい波動が広がる。
 皆が団結の力で勝利し、晴れやかな五月三日を迎えよう!(拍手)
5  マハトマ・ガンジーは述べている。
 「宗教なしで生きることのできる人はいない」「宗教は政治と何ら関係がないと言明する者は、宗教の何であるかを知らない者である」(『私にとっての宗教』訳者代表=竹内啓二、新評論)
 その人は、たとえ学者であっても、真の宗教を知らない。政治を知らない。社会を知らない。歴史を知らない。
 宗教が何であるかを知らない人間は、人生が何であるかを知らない人間だ――そう大哲人は叫んだ。卓見である。これが世界の常識である。
 またブラジルの「文学の巨匠」に、アントニオ・ビエイラ(一六〇八年〜九七年)がいる。
 奴隷制度と戦い、ユダヤ人や先住民を最大に守った。そのため教会から異端者として迫害され、二年間、投獄された。
 正義だから迫害される――古今東西、皆、そうである。
 ビエイラは訴える。
 「すべての生命は――たとえ命のないものであっても――その本質は『団結』の一言に尽きるのです。
 石の『団結』は建物です。板の『団結』は船です。そして、人間の『団結』は陣営です。
 『団結』を欠いた建物は崩壊します。『団結』なき船は沈没します。そして、『団結』なき陣営は、敵の思うつぼとなるのです」(FOLCO MASUCCI, ''DICIONARIO DE PENSAMENTOS,'' EDICOESLEIA, Sao Paulo, 1954)
 「勝利の陣営」「正義の陣地」――そこには必ず「団結」がある。
 「団結」がなければ、敗北につながる。不幸だけしか残らない。それでは悲惨である。
6  広布の英雄よ! 連戦連勝の劇を
 さらに青年のために、ドイツ最大の詩人の一人、ヘルダーリンの言葉を贈りたい。
 私にとって友人のような詩人である。一七七〇年に生まれ、一八四三年に亡くなる。生命の讃歌を謳いあげた彼の詩が、私はたいへん好きだった。代表的な小説に「ヒュペーリオン」がある。
 ヘルダーリンは幼い時に父を亡くす。それで、母に捧げる詩を、いくつも創っている。
 家庭教師などをしながら詩作を続けた。哲学者のヘーグルらと親交があり、なかでも詩人のシラーから大きな影響を受けた。人類の理想を見つめた壮大な詩人であった。
 ヘルダーリンは、こう謳う。
 「おお、英雄たちよ! 君らのみごとな勝ちいくさが、/すでにしてかがやきそめたさまを見よ」(「兵士たちをはげますアレクサンドロスの言葉」生野幸吉訳、『ヘルダーリン全集』1所収、河出書房新社)
 英雄――それは諸君である。女子部も、SGIの青年部の皆さんも、栄光輝く英雄である。
 人生は戦い。どうせ戦うなら見事な勝ち戦を!――ここから、すべては始まる。
 これが、青春時代に、哲学をもった人、決意光る使命をもった人、人間として人間らしい深い戦いを始める人の姿だ。
 一方、甘やかされ、お金だ、名誉だ、学歴だ、と毀誉褒貶にとらわれ、自分のことしか考えない人もいる。
 しかし、いくら虚栄で身を飾っても、仏法の真髄から見れば紙切れみたいなものだ。
 尊き使命に生きぬく人こそ、真の英雄である。
 きょうは、海外の十八の国々から、わが同志が集ってこられた。
 私は、戸田先生の言葉を思い出す。
 「仏法の英雄が集まった! 人間載能の英雄が集まった! 社会変戟の英雄が集まった! 広宣流布の英雄が集まった! 一緒に連戦連勝の人生を生きぬこう!」
 今、私も申し上げたい。
 連戦連勝の人生を! 前身を! ともどもに進もう! 戦い、勝とう! 塵芥のような、くだらない中傷など相手にしないで、堂々たる人生を生きぬこう!
 ともあれ、議熟の友を最大に歓迎したい。
 とくに研修のために、地球の反対側の南米アルゼンチンからお越しくださった求道の友、ようこそ! 理事長を中心に、うるわしい団結のアルゼンチンを築いていってください!
 また、敬愛する韓国の理事長をはじめ、大発展しゆく同志の皆さま! きょうは、本当にご苦労さま!
 さらに永遠の都――イタリアの皆さま! 理事長とともに、新出発おめでとう!
7  また、いつもお世話になっている「花の芸術部」の皆さまをはじめ、各グループの結成記念の集いも、心からお祝い申し上げたい。たいへんにおめでとうございます!
 そして、海外に赴任される教育本部の先生方! どうか、お元気で! 創価学会は教育で勝ちましよう!
8  「仏教とイスラムの対話」に期待
 さて、このたび、中東イランの出身で、世界的な平和学者である、ハワイ大学のテヘラニアン教授と私の対談集の「英語版」が完成した。イギリスの学術出版で名高い「アカデミック出版社」から発刊される。
 タイトルは『地球文明――仏教とイスラムの対話』である。(邦題は『二十一世紀への選択』潮出版社。本全集第108巻収録)
 イスラムは難解だ――こう思っている人も少なくない。この出版が、たがいがわかりあう交流の柱となれば、これほどうれしいことはない。
 「世界は争いばかりだ。しかし、次元を変えて、イスラムを理解し、本当の融和をさせていく人がいる」との温かな期待の声もいただいている。
 発刊にあたり、テヘラニアン教授は、次のように語っておられる。
 「対話をとおして、たがいの違いを乗り越え、共通の価値観を明らかにしていく――その努力なくして、二十一世紀の地球文明はありえません。私は、池田会長との対話を、そのための第一歩ととらえております。
 今回の出版が、同時多発テロ事件以来の暗い世相を打ち破り、世界の多くの国の人々に、勇気と希望を与えゆくことを願ってやみません」
 また現在、「ペルシャ語版」も、発刊に向けて準備が進んでいることをあわせて、ご報告させていただく。
 テヘラニアン教授は対談の中で、私たちへの信頼を、こう語ってくださった。
 「創価学会の運動について私がもっとも尊敬する点は、グローバリスト(地球主義者)であることです。これは、島国の日本人がもっとも必要としているものではないでしょうか。
 その意味で、創価学会は(日本の島国的精神を治療する)『良薬』です。薬だからこそ、『良薬は口に苦し』で、圧迫があるのでしょう」。鋭い言葉である。ここに、世界の透徹した眼がある。
 島国根性を打ち破る運動――世界を結ぶ創価の運動を、多くの識者が期待し、見守っている。
9  不惜身命こそ歴代会長の魂
 本年(二〇〇三年)の四月二十八日、日蓮大聖人の立宗宣言から満七百五十年を迎える。(建長五年〈一二五三年〉安房国〈千葉県の南部〉清澄寺で宣言)
 ″闘諍(戦い争うこと)の時、動乱の時代にこそ、断固として、妙法という平和と幸福の大哲理を、日本、そして一閻浮提に広宣流布せよ″――これが、御本仏であられる大聖人の仏意であり、仏勅であった。
 今年は、昭和三年(一九二八年)に牧口先生と戸田先生が入信し、未曾有の広宣流布の闘争を開始されてから七十五年の節日でもある。私の生まれも、この昭和三年である。
 立宗宣言から満七百五十年であることを思えば、いわば、御本仏の「七百五十年」を貫く広宣流布の大願をば、創価学会の三代の師弟が「七十五年」に凝縮して実現してきたと宣言したい。(拍手)
 「今、この時を逃せば、永久に広宣流布はできない」――これが三代にわたる会長の決心であった。
 ゆえに経文どおり、御聖訓どおりの「悪口罵詈」「猶多怨嫉」の難を受けきりながら、一歩も引かず、指揮を執ってきた。(法華経に、″末法において正法を弘める人は、釈尊の在世以上に怨嫉され、増上慢の人間から悪口される″とある)
 「不惜身命」「死身弘法」の殉教の精神――これこそ創価の誉れである。
 仏教史上、空前の世界百八十五カ国・地域への広宣流布の広がり。これは全同志とともに成し遂げた大偉業である。
 皆さま方が、日蓮大聖人から、三世十方の仏・菩薩から永遠に祝福され、守られ、大功徳に浴していくことは絶対に間違いない。それが御本仏の厳然たる仰せである。その誇りをもっていただきたい。(拍手)
10  学会は世界の哲学界の王者
 学会は、どれほど不思議な「仏の集い」であることか。
 御書には「この法華経を世界に行ずることは、普賢菩薩の威神の力による」(780㌻、通解)と説かれている。普賢菩薩とは「普く賢い」、すなわち「宇宙に満ちている智慧の働き」である。いわば、人を救う知性であり、価値の創造である。
 学会は、御書の精神を具現化し、知性の連帯を呼びかけ、いまだかつてない「平和・文化・教育の大道」を開いてきた。人間を結んできた。世界を結んできた。文明を結んできた。
 その一つの証明として、私が皆さま方を代表して、世界の大学・学術機関から拝受した名誉博士・名誉教授等の栄誉も、百四十になった。決定通知を含めると、百五十六になる。すべて、皆さま方のおかげである。
 光栄にも、多くの教育界の方々、学識者から「世界一の英知の宝冠」と祝福をいただいている。
 さらに、皆さま方と一緒にお受けしている「名誉市民」等の称号も、この三月十六日を前に、台湾、ブラジル、イタリアなどから通知をいただき、じつに二百五十を数えるにいたった。
 正義の創価学会である。日本で、さまざまな迫害や攻撃を受けながらも、今や世界随一の「哲学界の王者」の団体として、堂々たる全面勝利の証を打ち立てたの´である。(拍手)
 世界から二百五十の「名誉市民」等の栄誉を受けるということは、わが同志が世界中のどこででも、地域に根ざして、誠実な社会貢献を果たしておられる証拠でもある。
 その意味でも、私は皆さま方の活動に、心からの感謝を申し上げたい。(拍手)
11  「地域で勝つ人」が「人生の勝利者」
 先日、ノーベル化学賞の田中耕一さんが、故郷・富山の名誉県民・名誉市民の称号を受けられた。その折のあいさつで、どうしてノーベル賞を受けるような発見ができたのかについて、謙虚に語っておられた。
 「両親の背中を見て育ったこと、周りの人に恵まれたこと、地道に積み重ね上げることを学んだこと……。富山の県民性と言われる、粘り強さ、コツコツやるといったことなど富山で育ったことが大きく影響していることは間違いありません」(「北日本新聞」2003年3月3日付)
 (また、大都会にない田舎の魅力として、「田舎なら、自ら自主的に何かやらないと物事が前に進まない。田舎なら周りに自然がたくさんあって『なぜこうなるんだろう』と好奇心や探求心を引き出してくれる」「田舎こそが創造性を引き出してくれる」〈同前〉と語っている)
 大都市で何もかも恵まれて順調に育ったわけではない一人の市民がノーベル賞を受けた――それを誇りに思ってほしいというメッセージがこめられているかもしれない。
 地域・郷土を大切にし、自分の心魂に植え付け、そこから離れない、忘れない。それが学会伝統の強さである。
 「地域」である。どんなところでも、そこで頑張った人が王者である。今いるその場で、仏になるのである。
 もしも都市は「上」で、田舎は「下」などと考えたとしたら、それは大間違いである。
 「地域」で勝つ人が、最も人間らしい、人生の本当の勝利者だと思うが、どうだろうか。(拍手)
 その意味でも、地域でコツコツと、派手な姿をしないで頑張っている人を決して忘れず、尊敬して、守っていきたい。そういう人のところへ行って頭を下げ、「ご苦労さまです」と心からの感謝を伝えたい――これが私の真情である。
12  ゴルバチョフ元ソ連大統領は、私も何度もお会いした。大切な友人の一人である。
 若きゴルバチョフ氏が、モスクワ大学を卒業して、どこへ進むことになったか。それは、生まれ故郷である。
 中央に残り、政治の世界に関わることが決まっていたゴルバチョフ青年にとって、自分の希望に反するものだった。トントン拍子で偉くなったわけではなかったのである。
 (就職が内定していた検察庁が突然、大学卒業者の採用方針を変更。ゴルバチョフ氏は採用取り消しとなり、故郷である、ロシア共和国北カフカス中央部のスタープロポリに戻った)
 「ここで働こう! それが良い人生だ」――心を決めた人は強い。
 ゴルバチョフ青年は、自分の育った小さな故郷で働き始める。長靴をはいて、泥まみれになりながら歩き回った。積極的に住民と語りあって、その意見や要望に耳をかたむけもした。
 もちろん対立もあっただろう。斬新な発想も必要だったにちがいない。氏は、地道な行動と対話を重ねるなかで、自身を鍛え上げた。
 後に「冷戦の終結」をリードした氏の「新思考」も、こうした苦闘から生まれたのである。
 そもそも共産圏と自由主義圏が、ケンカする必要はない。庶民も、いろいろな人がいるが、よくよく話しあえば仲良くなれる。世界も同じだ――ここに平和への第一歩がある。それを氏は実行した。
13  私がモスクフでお会いした時も、氏は、「大学卒業後、地方へ行きました。そこで、いろいろな人に会い、いろいろなことを考えました。貧しい人々がいる。困っている人がいる。しかし、だれも気にかけていない。どうしてあげたらよいのか――。そうした出会いによって、自分の中にあったものが、拡大していったと思います」と語っておられた。
 自分の足元の地域で立ち上がる。「よし、自分にできることは、何でも成し遂げよう!」――そう決意する。これが大事である。本当に人間らしい、自分らしいものを地道に追求していくところに本当の幸福がある。そこから偉大な人生が開けるのである。
 日蓮大聖人は在家の弟子に対して、「その国の仏法流布は、あなたにお任せする」(御書1467㌻、通解)と励ましておられる。
 何もかも中央で決める時代ではない。「地域」が力を発揮していく時代である。
 その意味でも指導者は、遠い地域で、重要な地域広布の使命を果たしておられる尊い人々を大切にすることである。
14  信心で越えられない山はない
 きょうは、壮年部の幹部会。皆で拍手を送りたい。(拍手)
 厳しい不況が続いている。壮年部の皆さんには、さまざま大変な状況があるだろう。しかし、不況だからこそ、題目をあげて乗り越えていただきたい。
 人間の世界である。そこにある山を、人間が越えられないわけがない。いわんや、偉大なる妙法を持った私たちに、乗り越えられない困難など断じてない。
 壮年部の大先達というべき、あの剛毅な四条金吾も、さまざまな苦難に直面した。しかし、信心で戦いぬいた。大聖人が見守っておられた。金吾も断じて退転しない。大聖人は最大に信頼されていた。金吾は負けなかった。
 正しき信心のゆえに、同僚から批判され、妬まれ、主君(江間氏)に対して讒言された。坊主らの策謀で、事実無根の罪を捏造された。ついには主君の不興を買い、領地没収・家臣追放の危機に陥った。今で言えば、職場での左遷やリストラである。
 頼るべき家族にあっても、兄は、大聖人門下への迫害が強まるにつれ、金吾を圧迫し、苦しめたようである。
 皆さんも、家族やきょうだいのなかに信心に無理解な人がいる場合があるかもしれない。焦る必要はない。人間革命の戦いは、そこから始まる。一歩一歩、自分の姿をもって、仏法のすばらしさを伝えていけばいいのである。
 また金吾は、最初の妻を亡くしたと推察されてもいる。後に生まれた子ども(経王御前)は、幼くして重い病気にかかっている。
 だれでも、人生、何らかの苦難がある。悩みのない人間などいない。だからこそ、「煩悩即菩提」の仏法が必要なのである。
 宿命転換だ。そのための仏法だ。勇気を出すのだこれが大聖人の叫びであった。
15  しかし、さすがの金吾も、つい愚痴をこぼしたことがあったようだ。四十代後半のころである。
 ″法華経(御本尊)を持つ者は「現世は安穏にして後には善い処に生まれる」と聞き、信受してきたのに、どうして自分には、大難が雨のように降りかかってくるのでしょうか″
 大聖人は、この疑問に答えて、金吾に励ましのお手紙をしたためられた。文永十二年(一二七五年)の三月六日のことである。(「四条金吾殿御返事〈此経難持御書〉」御書1132㌻)
 大聖人は、「一人」を徹底して大切にされた。門下の悩みの一つ一つに心を砕き、手を打たれた。多くの激励のお手紙を送られた。
 一人への励ましは、万人に通じていく。この一人が広宣流布の道を開くその励ましの心を、私たちは大聖人のお姿から学んでいかねばならない。
 大聖人は、金吾に仰せである。
 「受くるは・やすく持つはかたし・さる間・成仏は持つにあり、此の経を持たん人は難に値うべしと心得て持つなり
 ――法華経(御本尊)を受けることはやさしいが、持つことはむずかしい。しかるに成仏は持ち続けることにある。この法華経を持つ人は、必ず難にあうものと心得て持つべきである――。
 難と戦ってこそ仏になる。安穏な境涯にいたるのである。途中の山や谷や嵐は、覚悟の上で乗り越えていくことだ。
16  臆病であってはならない!――大聖人は金吾に「あへて臆病にては叶うべからず候」と厳しく仰せである。
 また「(妙法を)そしる人には、いよいよ言い聞かせよ」(御書1123㌻、通解)、そこに自他ともの幸福の道があると教えておられる。
 山越え、谷越え、歩いていくから、ハイキングはおもしろい。歩くのは大変だが、歩くから、いい景色を楽しみながら、目的地にたどり着ける。それを、飛行機でパッと行って帰っても、つまらない。人生も同じだ。
 仏道修行は、自分が自分らしく輝き、永遠の幸福を築く法則である。大変なようだが、苦難と戦うなかに偉大な人間になる道がある。大聖人のお言葉に間違いはない。
 金吾は、その仰せのままに純真な信心を貫き、大聖人に敵対する人間に立ち向かった。勇敢に、恐れなく、正義を叫びぬいた。四条金吾の名は、今も歴史に厳然と輝いている。
17  叫ベ! 叫ベ! 正義の師子吼を
 「師匠の一念」と「わが一念」が融合し、一致した弟子は強い。何ものにも負けない。
 牧口先生における戸田先生、戸田先生における私がそうであった。これが創価学会の三代の会長である。永遠に変わらぬ方程式である。
 「御義口伝」には、師子の「師」とは師匠(日蓮大聖人)、「子」とは弟子であり、弟子が師匠と同じ心で戦い、正法を弘めゆくことが「師子吼」の意義であると説かれている。
 (「師子とは師は師匠子は弟子なり」、「師とは師匠授くる所の妙法子とは弟子受くる所の妙法・吼とは師弟共に唱うる所の音声なり」)
 正義を叫ぶことだ。「師子吼」で悪を打ち破ることだ。
 私は親き日、学会を陥れんとする輩とは徹底して戦った。虚偽の非難や中傷は絶対に許さなかった。断固、抗議した。戸田先生を守りぬいた。
 金吾が主に活躍したのは、現在の神奈川の地である。私は、神奈川の友の奮闘に期待している。
 どうか、東京や関西を超える「模範」を示していただきたい。
 神奈川の皆さん、よろしく頼みます!
 また、立派な会館、おめでとう!(拍手)。(=神奈川文化会館が二〇〇三年三月十三日に新装オープン)
18  大聖人は金吾のことを、「負けじ魂の人」と讃えられている。(「まけじたまし不負魂の人」)
 「負けじ魂」といえば、創価学園の伝統精神である。
 今、創価学園は日本でトップクラスの学校と評価されている。卒業生からは、教育者、博士、芸術家、実業家等々――あらゆる分野に一級の人材が出ている。創立者として、これほどうれしいことはない。
 その学園生に、私は「負けじ魂の君よ!」と呼びかけてきたのである。
 ともあれ、仕事に勝ち、社会に勝ち、人生に勝ち、一切に勝ちゆく「負けじ魂」。これは「学会魂」であり、私たちの信念である。きょうは、このことを確認しあいたい。
 かといって、夫婦ゲンカで負けじ魂――これはいけない(爆笑)。後輩に威張る負けじ魂――それも必要ない。
 女性を尊敬し、大事にすることだ。また、後輩は抱きかかえて励ましていただきたい。
 私は、創価大学で文豪ゲーテなどをめぐって「特別文化講座」を行う予定である。(=二〇〇三年三月十日に第一回が行われた)
 文学を語り、真実の魂を語り、新たな伝統を築きたい。すべて大事な青年のためである。
19  ゲーテ「沈黙するな! どしどし物を言い、行動せよ」
 ゲーテは叫んだ。
 「現代は、誰も沈黙してはならない。誰も負けていてはならない。わたしたちはどしどし物を言い、積極的にうごくのだ」(「ゲーテ格言集」大山定一訳、『ゲーテ全集』11所収、人文書院)
 沈黙は「金」ではない。「毒」である。「敗北」である。勝つためには反論することだ。言いきることだ。戦うことだ。やりましょう!(拍手)
 きょうは長時間、本当にありがとう!
 長い人生である。疲れた時は無理をしないで休むことである。長生きをして、うんと福運を積んでいただきたい。賢明な人生を、いい人生を生きぬいていただきたい。
 皆さん、いつまでも、お元気で― サンキュー!
 (東京牧口記念会館)

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