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日蓮大聖人・池田大作

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第八回本部幹部会 学会は「思想界の王者」

2001.8.1 スピーチ(2000.11〜)(池田大作全集第92巻)

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1  史上最高の大勝利、万歳―
 暑いなか、たいへんにご苦労さま! 大勝利、おめでとう!(拍手)
 古代ギリシャの大詩人として世界に名を残したヘシオドスは謳う。
 「正義の道を踏みはずさぬ人々の都市は栄え、その民も花咲くように賑わう」(小川正廣『ウェルギリウス研究―ローマ詩人の創造』京都大学学術出版会)
 勝利――それは「正義の道」を全うした証拠である。(拍手)
 また、皆さまの″友人″であるフランスの詩人ヴィクトル・ユゴーは呼びかけた。
 「歴史を通覧せよ、総ての偉人は諸君以上に侮辱されて居る」(「追放」神津道一訳、『ユーゴー全集』9所収、ユーゴー全集刊行会)
 (東京戸田記念講堂がある)ここ巣鴨は、牧口初代会長、戸田第二代会長が、投獄の大難にあわれた地である。(思想犯などを収監した東京拘置所があった)
 この「法難の地」即「仏国土」の天地に、史上最高の完全勝利の晴れ姿をもって、全国そして全世界から、偉大なる代表が集い合った。これほど誇り高い歴史はない。無名の庶民の勝利、民衆の勝利である。
 全同志とともに、崇高なる健闘をたたえあい、堂々たる勝利の人間賛歌を喜びあいたい。
 連戦連勝の創価の姿を、日蓮大聖人が最高に喜ばれ、ほめたたえておられることは間違いない。(拍手)
2  正しき哲学ありて社会は繁栄
 七百三十年前の一二七一年(文永八年)九月十二日。これは、皆さまもご存じのとおり、「竜の口の法難」の日である。
 大聖人はこの日、法難にあわれる前に、鎌倉幕府の政治上の実力者として権勢を振るっていた平左衛門尉頼綱に、一通の手紙を送られた。(「一昨日御書」御書183㌻)
 平左衛門尉は、軍事、警察、政務を統括する強大な権力を握っていた。
 堕落と嫉妬の悪侶は、みずからの栄華のために、権力に取り入ろうと、策略をめぐらし、うごめいていた。本来、人を救うための出家が、自己の保身しか考えない。いつの時代も変わらない、腐敗しきった姿である。
 大聖人は一人、民衆の幸福のため、平和のために、まっこうから権力の狂いを正していかれた。
 権力者を諌暁したその御書の冒頭で、こう宣言されている。
 「仏がこの世に出現されたのは、ひとえに生きとし生けるものを救うためである」(同㌻、通解)
 仏がこの世に出現したのは、偉ぶった姿を見せるためでもなければ、布施をもらうためでもない。人々を救うためである。これが大目的である。その厳粛なる真髄を仰せになっておられる。
 「宗教のための人間」ではない。あくまでも、「人間のための宗教」である。
 ゆえに、人間のために行動する。社会のために貢献する。正義のために闘争する。これを今、現実に実践しているのは、創価学会しかないと断言しておきたい。(拍手)
 歴史的に見ても、正しい仏法の人間主義を根底にした時、国土は繁栄し、文化が興隆し、平和が開花してきた。インドのアショーカ大王の時代しかり。中国の天台大師の隋・唐の時代しかり。日本の伝教大師の平安朝時代もまた、しかりである。
3  さらに大聖人は、仰せである。
 「(大聖人が)正しい法を知り、国を思う志は、もっとも賞讃されるべきであるのに、邪法邪教の輩が(権力者に)譲奏し、讒言してきた。そのため、長い間、一国を救済しようとする心を抱いてはきても、いまだその望みを、ほんのわずかばかりも実現することができないでいる」(同㌻、通解)
 人間世界に渦巻く嫉妬の讒言、悪意のウソは、″凶暴なる弾丸″である。
 御本仏日蓮大聖人の究極の正義の大闘争を、妬みに狂った坊主らが、まったくの事実無根の讒言で妨害した。これにより、大聖人は、正式な取り調べもなく、裁判も行われず、死罪・流罪の極刑に処せられたのである。嫉妬に狂った人間世界は恐ろしい。
 大法を護持し流布することが、どれほど困難なことであるか――。
 創価学会は、いかなる非難中傷を受けても、一歩もひかず、大聖人の仰せのままに、正義の道を進んできた。そして今、大聖人の願いを、われらが一歩一歩、現実のものにしようとしている(拍手)。大聖人もさぞ、お喜びのことであろう。(会場に掲げられた肖像画の)牧口先生、戸田先生も、「よくやった」と笑っておられる。
4  「革命精神とは嘘を許さない精神」
 佐渡流罪から、ちょうど六百年後、大聖人が大難を受けられた新潟で生誕されたのが、牧口先生である。
 牧口先生は、ここ巣鴨の獄中で、信念の言論闘争を貫かれた。そして最後まで、ドイツの大哲学者カントの研究を続けておられた。偉大なる先師である。
 獄中での最後の書簡に「カントノ哲学フ精読シテ居ル。百年前及ビ其後ノ学者共ガ、望ンデ手ヲ着ケナイ『価値論』ヲ私ガ著ハシ、而カモ上ハ法華経ノ信仰ニ結ビツケ、下数千ニ実証シタノヲ見テ、自分ナガラ驚イテ居ル。コレ故、三障四魔ガ紛起スルノハ当然デ、経文通リデス」(牧口常三郎全集』第五巻、東西哲学書院)と。
 カントは洞察している。
 「虚言は己れの人間たる尊厳の放棄であり、そうしていわば絶滅である」(『道徳哲学』白井成允・小倉貞秀訳、岩波文庫)
 だからこそ、ウソとはまっこうから戦いぬかねばならない。
 さらに、ナチスと戦ったフランスのロマン・ロランの魂の訴えに、こうある。
 「真に革命的な精神は、いかなる社会的虚偽をも容赦しない精神である」(『エセー』I、宮本正清、蛯原徳夫、新村猛、山口三夫訳、『ロマン・ロラン全集』18、みすず書房)
 人間のウソは武器以上に怖い。ウソを見過ごし、放置しては絶対にならない。これが戦いのいちばんの要である。牧口先生は、この「革命的精神」で戦いぬかれた。
 私も戸田先生のもとで、青年らしく戦った。
 当時、学会に対して、多くの中傷があった。偏見も、誤解もあった。
 私は青年室長として、渉外の矢面に立った。単身で乗り込み、人に会っては、堂々と正義を語った。その姿を見て、学会を中傷していた相手も、「立派な青年だ」と言っていた。そういうことさえあった。
 すべて、愛する同志を守り、恩師を守らんがための言論戦であった。
5  今年(二〇〇一年)は、大聖人の「竜の日の法難」から七百三十年。そして、牧口先生の生誕百三十周年。創価学会は、御聖訓どおりに、邪法邪教の讒言、さらには虚言、中傷を、一切、跳ね返し、打ち破って、堂々と勝ちに勝った。(拍手)
 大聖人の悲願であり、牧口先生の悲願でもあった「立正安国」の大理想を、一つまた一つ、着実に実現しながら、平和な地球社会の大建設に邁進してきた。これほど世界に「平和の闘争」を広げている団体が、どこにあるだろうか。
 歴史に輝きわたる「人民の壮挙」である。「民衆の壮挙」「創価の壮挙」は永遠であると、私は申し上げておきたい。(拍手)
6  大闘争から百千万の福徳が
 広宣流布は、この現実社会が舞台である。社会から離れて、口先だけ、格好いいことを言っても、何の価値もない。現実の中で魔軍と戦い続ける、「平和と正義の不滅の大闘争」が、広宣流布である。
 「大闘争」即「仏」である。
 「大闘争」即「永遠の生命の勝利者の証」である。
 一歩たりとも、後退してはならない。これが大聖人の厳命である。
 広布に戦えば、自分が得をする。生々世々、「仏」という絶対的幸福の生命に生まれてくる。
 宇宙には、地球と同じように″知的生命が存在できる星″が、一説には何十億もあるとされる。
 三世永遠の生命であるから、いずれの地であれ、思いどおりの大境涯に生まれ、所願満足の人生を歩み、広宣流布していくのである。
 あっという間の人生である。だからこそ、頑張りぬくことだ。
 大聖人の御在世も、臆病な弟子たちは皆、退転し、叛逆していつた。もっとも哀れであり、卑怯な姿であった。
 絶対に、退転だけはしてはならない。自分が損をするだけである。
 どうせ生きるなら、広布に戦い、大福運をつかんだほうがいい。悠々と、心広々と、楽しく励ましあいながら、新たな前進を開始してまいりたい。(拍手)
7  法華経には「百千万の福」が説かれている。(無量の諸仏を供養した功徳で、福徳にあふれた妙音菩薩の姿を述べたもの)
 戸田先生は言われていた。「『百千万の福徳』を得るのだ。『百千万の福徳』を出すのだ。そのために、広宣流布をするのである。広布の陣列に馳せ参じなさい。折伏に、勇んで馳せ参じなさい。そうしないと、自分が損をするよ」と。
 永遠に自分自身が「幸福の当体」となり、「仏」となる。そのための、今世の戦いと思い切りなさい――これが、大聖人の仰せである。また戸田先生の叫びであった。これを心に刻み、頑張ってまいりたい。
 広布の人には「百千万の福徳」がわくことを深く確信していただきたい。
 広宣流布という尊極なる「仏の仕事」をしておられる皆さまに、ウソの悪口をあびせ、いじめる悪人は、経文に照らし、御書に照らして、厳たる仏罰を受ける。そうでなければ、仏の言葉は虚妄になってしまう。悪人たちの最後は必ず惨めな大敗北の生命となることは間違いないのである。
8  古今の哲人や大思想家の善論は、皆、仏法に通じている。
 ユゴーは叫んだ。「悪をなして永久に栄える道理はない」(「追放」、前掲『ユーゴー全集』9所収)と。
 カントは喝破した。「悪徳は法則に反せる心情の仔であり、人が実にそれと戦わねばならない怪物である」(『道徳哲学』白井成允・小倉貞秀訳、岩波文庫)と。
 では、悪徳という怪物と戦うには何が必要か。それは「道徳的強さ」である。その強さをもってこそ、「人間は自由であり、健全であり、豊かであり、王者である」(同前)とカントは訴えたのである。
 悪徳と戦わなければ、自分が悪徳になる。敵と戦わなければ、自分が敵と同じになる。だから戦え! 悪徳と戦う強さをもて! そう大聖人が教えられ、牧口先生、戸田先生が敢然と実行された。
 「国家のほうが、民衆よりも上」とする転倒とは、断固、戦わなければならない。
 ウソで、正義を踏みにじる人間とは、断固、戦わなければならない。
 ただし男性陣は、奥さまとだけは戦わないほうがいい(笑い)。家に気分よく帰っても、奥さんからビシビシ攻撃される″生き地獄″(爆笑)。これでは″仏国土″とは言えない。(大笑い)
 ともあれ、あらゆる悪徳と戦いぬいたゆえに、創価学会は「宗教界の王者」となった。
 思想界の王者、哲学界の王者、そして精神の王者として、哲学なき現代社会に、平和と幸福への「精神性の柱」を打ち立ててまいりたい。(拍手)
 それには、あらゆる人々を味方にしていくことだ。智慧と勇気と大胆があれば、「敵」即「味方」に変わるのである。
9  われらは全世界が友人!
 きょうは、フランス、韓国、ブラジルをはじめ、二十七の国から同志が出席してくださった。遠いところ、本当にご苦労さま!(拍手)
 創価学会は、「全世界」が友人である。味方である。これが根本の路線である。
 このほど、西アフリカの「平和の大国」コートジボワールにも新しい会館がオープンした。にぎやかに記念の総会が開催された。(拍手)
 (二〇〇一年七月十四日、同国最大の都市アビジャンに完成。翌十五日に総会が行われた)
 コートジボワールといえば、私も、かつてアマラ・エシー外務大臣と親しく語りあい、幾重にも友情を結んできた。(九九年七月、東京で会見)
 これも、愛するアフリカの繁栄のため、わが同志の幸福のために、積み重ねてきた行動である。
 枇置をすり庁らす思いで、人知れず苦労を重ねながら、すべて先手、先手で確かなる栄光の道を開く――本当の戦いとは、そういうものである。
 先日(七月三十一日)、「聖教新聞」に発表した詩(「永遠なる わが敬愛する同志へ」)も、すでに二十七日に詠み、つづった。妻が全部見て、知っていることである。
10  コートジボワールでは、現在五千人のメンバーが活躍している。
 中心者として、さっそうと指揮をとる理事長は、国立アビジャン・ココデイ大学の助教授で、コンピューター科学が専門である。「行動する知性」の模範であり、私も何度もお会いし、語りあった。夫人はコートジボワールの婦人部長。お二人とも、本当に誠実な方である。誠実に勝るものはない。
 勝利者は、つねに誠実である。誠実を裏切る傲慢は、たとえ一時は勝ったように見えても、最後は滅びる。
 幸福者は、つねに誠実であり、芯が強い。その人が最後の勝利者と輝くのである。
 コートジボワールは、中心者の人柄もあって、SGIへの理解の輪が、ぐんぐん広がっている。
 まさに、「法自ら弘まらず人・法を弘むる故に人法ともに尊し」との御聖訓のとおりである。
 この地でも、いちばん活躍しているのは、青年部である。青年部員は、全体の六割以上。青年が青年を糾合して、いよいよ拡大している。女子部長は、本年五月、空手の全国大会で優勝したチャンピオンである。
 日本でも、女子部、そして若き青年部の大健闘が光っている。青年部の勝利である。「青年の時代が来た!」と、私は強く申し上げたい。(拍手)
11  百七十七カ国に人間賛歌! 新たに十一カ国が
 ここで、新しいニュースを報告したい。
 先日、私は、首都圏の婦人部の会合の席上、SGIが百六十六カ国・地域になったことをお伝えした。(七月十日の首都圏婦人部代表幹部会で)
 さらに今回、新たな掌握が急速に進み、なんと一挙に十一カ国・地域がふえたのである。(拍手)
 これでSGIは百七十七カ国・地域に大発展した。私は、皆さま方に、そして牧口先生と戸田先生に、胸を張ってご報告申し上げたい。(拍手)
 新たにふえたのは、アフリカでは四つ。
 まず、アフリカで、もっとも古い独立国で、建国は紀元前といわれる「エチオピア連邦民主共和国」。マラソンで有名なアベベ選手の出身国でもある。
 また、アフリカ大陸の南西部に位置し、内戦で苦しんできた「ナミビア共和国」。ここでも、平和の大仏法を掲げて、友が大奮闘している。
 さらにナミビアの東、ダイヤモンドの産出国として有名な「ボツフナ共和国」。
 そして、大西洋に浮かぶ島「セントヘレナ」でも、メンバーが活躍している。ナポレオンが流され、最期を遂げた島として、あまりにも有名である。
 また中米では、二地域がふえた。
 一つは、大西洋の「バミューダ諸島」。(ニューヨークの南東約千キロ)
 そして、カリブ海の南にある常夏の島「アルバ」。
 ともに、女性が中心となって活躍されている。「女性の時代」は、世界の潮流である。(拍手)
 さらに南米では、ブラジルの北に隣接する「フランス領ギアナ」。すでに百五十人のメンバーが頑張っておられる。
 次はヨーロッパ。
 まず、バルト海に面する北欧の合唱の国「エストニア共和国」。
 地中海に浮かぶ楽園「マルタ共和国」。
 そして、イギリスとアイルランドの間にある「マン島」。″現存する世界最古の電車″が走っていることでも知られる。(一八九三年に製造され、ギネスブックも公認)
 さらに、内戦で多くの犠牲者を出し、長く苦しんできた、中央アジアの「タジキスタン共和国」でも、SGIのメンパーが、国の復興のために奔走している。(拍手)
 以上の十一カ国・地域が、今回、われらの仲間になった国々である。
 世界広宣流布が加速度的に進んでいる事実を、ともどもに喜びあいたい。
12  皆さま方は、わが地域に根ざし、炎天下、尊い広布の汗を流しながら、一軒また一軒と、友のもとへ、一生懸命に足を運んでこられた。これが何より強い。そして一人また一人と、地道なる執念の対話。この積み重ねがあるゆえに、学会は壊れない。これが大勝利、大建設の基盤である。
 この真剣な祈りと草の根の行動、すなわち「地域から世界へ」「一人から全人類へ」――これが、平和と広宣流布への波動となっている。
 私たちの日々の活動は小さく、地味に思えるかもしれない。しかし、その一つ一つが、じつは、ダイナミックな波動となって全世界に広がっていることを、どうか誇りとしていただきたい。
 ついに、世界が瞳目する「創価の時代」が到来した!(拍手)
13  栄冠を″無名の英雄″の頭上に
 今から六十年前、牧口先生、戸田先生は、軍国主義のまっただなかで、広宣流布の闘争を、いよいよ強めていかれた。戦争が激しくなればなるほど、信心が強くなる。勇気が強くなる。すごい生命力である。
 同じころ、ヨーロッパでは、勢いを増す極悪のナチスが勝つか、民主主義陣営の「最後の砦」となったイギリスの民衆が勝つか――世界の「転換占」の一つとなる決戦があった。有名な「ブリテンの戦い」である。
 ヒトラーは、イギリスの民衆を恐怖におとしいれ、士気を衰退させることを目的に、首都ロンドンヘの猛爆撃を開始した。
 恐怖をあたえる――独裁者の常套手段である。日顕宗もそうであった。学会を、どれだけいじめ、どれだけ供養を奪ったことか――。
 しかし、ヒトラーの狙いは外れる。イギリス民衆の不屈の闘志が衰えることはなかった。軍と一体になって敵を跳ね返した。ヒトラーの作戦は結局、失敗に終わる。まさに「奇跡」と呼ばれる、イギリス民衆の勝利であった。
 忍耐である。厳然たる忍耐――そこに勝利も栄光もある。
 時のイギリスの指導者チャーチルは、民衆という「無名の戦士」こそが英雄である、と叫んだ。
 無名の戦士――まさに広宣流布に戦う皆さまである。
 私のところには、さまざまな学会員の方から手紙が来る。なかには、多宝会の″おばあちゃん″もいる。皆さまが広宣流布のために、どれほど必死の思いで戦っておられるか。手紙につづられた、そのけなげな心に、涙がこみ上げてくる。
 たどたどしい文章もある。字の間違いもある。しかし、すべてが尊い広布の戦士の手紙である。
 その功績をたたえ、大切に保管させていただいている。
 やがて、ナテスが完全に降伏した時、チャーチルは言った。
 「邪悪の徒はいまや、われらのまえにひれふした」(アンドルー・セイント、ジリアン・ダーリー『図説ロンドン年代記』下、大出健訳、原書房)
 そして民衆に語りかけた。
 「これは、あなた方の勝利です。わが国の長い歴史上にも、これほどの偉大なる勝利はかつてわれわれの知らぬところであります」(ロバート・ペイン『チャーチル』佐藤亮一訳、法政大学出版局)
 この言葉を、偉大なる勝利を築いた、偉大なる同志の皆さまに捧げさせていただきたい。(拍手)
14  永遠の「人材の大城」を万代に
 わが創価大学ならびに東西の創価学園の卒業生が、世界に雄飛し、また社会のあらゆる分野に躍り出て、日覚ましい活躍を開始している。
 教育界では、創大・学園出身の教育者は、すでに三千人を超えた。四月には、創大から第一号の中学校の校長が誕生している。さらに、アメリカ、ケニア、マレーシア、中国、香港、マカオ、韓国、キルギス、メキシコなど、海外の大学の教員として教鞭をとるメンバーも年々、ふえている。
 創価大学、また皆さまの尽力で開学したアメリカ創価大学でも、創大育ちの教授の方々は、だれよりも学問を磨き、学生を大切にしながら、決然と立ち上がって頑張っていただきたい。
 経済界でも、創価同窓の健闘と連帯が光っている。
 先月(七月)の学園「栄光の日」のさいも、学園出身で、会社の社長など経営者の有志の方々が、母校のためにと、後輩たちに、さまざまな配慮をしてくれた。その真心が、私は、うれしかった。
 また先日、上場した一流企業でも創大一期生が要職を担っている。銀行の支店長も十人を超えた。
 いよいよ創価教育の同窓生の時代に入ったのである。また同窓生の多くが、わが子を学園に、創大にと進学させてくださっている。美しい母校愛である。
 かつて牧口先生は、痛烈に教育改革を論じ、そして叫ばれた。
 「百年の大計を立てるべき教育事業を、人気取りに汲々としている政治家は、せいぜい次の総選挙までという近視眼鏡を掛けて、顧みようともしない」
 私たちは、遠大な未来を見つめ、壮大なる世界の視野に立って人間教育を推進してまいりたい。(拍手)
15  先日、アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」が、アメリカ創価大学オレンジ郡キャンパスを紹介する記事を掲載した。(七月二十五日付)
 (一面と十三面で紹介。同紙は全米最大級の発行部数を誇り、知識層を中心に愛読される日刊紙。世界の主要都市にも配送されている)
 アメリカの一流紙が、教育に対して、またアメリカ創価大学に対して真摯に注目しているのである。同紙は、「今後は、この地(オレンジ郡)において、世界平和のための人道主義、平等主義の価値観が育成される」と大きな期待を寄せている。
 創価教育を開かれた牧口先生、戸田先生も、どれほどお喜びのことであろうか。
 私は、わが身を犠牲にして、後輩を守りながら、恩師の偉大さを世界に宣揚してきた。師匠との誓いを、また一つ果たすことができ、こんなうれしいことはない。
 世界平和の指導者を育てゆく「人材の大城」である創価大学、創価学園、そしてアメリカ創価大学を、万代にわたって守り、栄えさせてまいりたい。
16  最後に、ヨーロッパの英知の言葉を贈りたい。
 旧チェコスロヴァキアの大思想家・政治家であるマサリク。彼が影響を受けた、祖国の革命の闘士ハヴリーチェクは、こう語っている。
 「一つの虚偽は数千の虚偽を生み、一つの専横は数千の権利を破壊する」(石川達夫『マサリクとチェコの精神』成文社)
 重要な言葉である。「専横」とは、まさに横暴な権力者の振る舞いである。
 ユゴーはつづった。
 「侮辱は余をして益々、余の確信と、意志を強めるばかりなのである」(「追放」、前掲『コーゴー全集』9所収)
 そして欧州統合の父クーデンホーフ=カレルギー伯。私とも、対談集を発刊している。(『文明・西と東』。本全集第102巻収録)
 彼は、記している。
 「支配者にかわって指導者が現われねばならない」(『実践的理想主義』鹿島守之助訳、鹿島研究所出版会。以下、引用は同じ)
 民主主義に必要なのは、支配者ではない。民衆の指導者である。
 続けてクーデンホーフ=カレルギー伯は「高貴な名前のかわりに高貴な精神がなければならない」と言う。
 今は反対である。名前ばかりが先行している。
 そして「富裕な懐中のかわりに豊かな心がなければならない。このことが、民主的と呼ばれる発展の精神である」と。
 「心こそ大切」である。豊かな心を育む哲学や精神性こそ、民主主義の発展の基盤なのである。
 きょうは暑いなか、また長時間、本当にご苦労さま!
 大切な大切な全同志の健康と幸福を心からお祈り申し上げ、私のスピーチを終わりたい。
 きょう、お会いできなかった方々に、どうか、くれぐれもよろしくお伝えください。ありがとう!
 (東京戸田記念講堂)

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