Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

米国・モアハウス大学「最高学識者」称号… さあ新世紀へ「私たちは必ず勝利する」

2000.9.7 スピーチ(1999.10〜)(池田大作全集第91巻)

前後
1  命ある限り邪悪と戦い続ける
 あと百十六日で、二十一世紀が開幕します。(授与式の行われた九月七日から数えて)
 いま、あらゆる次元で、過ぎゆく二十世紀の総括がなされております。
 それでは、社会的、政治的、芸術的に見て、二十世紀に輝く最高の演説は、いったい何であったか?
 アメリカの学識者たちが選んだ、今世紀の第一位のスピーチ。それこそ、モアハウス大学が生んだ「人権革命の大指導者」キング博士の不滅の魂の名演説だったのであります。(拍手)
 時は一九六三年の八月二十八日。ちょうど、あのリンカーン大統領の「奴隷解放宣言」から百年後に行われた、歴史的な「ワシントン大行進」の集いでありました。場所は、リンカーン記念堂の前の階段であります。
 若きキング博士は、二十五万人の大聴衆を前に、あの有名な言葉――「私には夢がある!」と叫びました。三十四歳の青年の獅子吼であります。
 獅子吼してこそ青年である。邪悪と戦ってこそ青年であります。そして、私たちには「広宣流布」という夢があります。
2  キング博士は呼びかけました。
 「わが友よ、私は皆さんに申し上げたい。きょうも、あすも、きっと、いろいろな困難や挫折に直面するだろうが、それでもなお、私には夢がある!」
 「私には夢がある! いつの日か、この国が立ち上がり、真に、その信条のままに生きるようになる夢が! すなわち『すべての人間は平等につくられている――これは自明の真理だ』と考えるようになる夢が!」
 (さらに「私には夢がある! いつの日かジョージアの赤土の丘の上で、かつての奴隷の子孫と、かつての奴隷主の子孫が、いっしょに兄弟として同じテーブルに着くという夢が!」等と続く)
 キング博士は、この崇高な夢に生き抜き、壮絶に殉じていったのであります。
 そして、夢を受け継ぎ、夢の実現のために、命をかけて戦い続けておられるのが、きょう、ここにお越しくださった、お二人の偉大な知性の先生なのであります。(拍手)心から尊敬申し上げるカーター所長ならびにミラー教授、私たちは深い感動と敬意をもって最大に歓迎申し上げます。(拍手)
3  青年の力で「牧口先生の夢」を実現
 ここ東京牧口記念会館は、キング博士と同じように「平和と正義の夢」を掲げながら、獄死していった牧口初代会長を記念する殿堂であります。
 狂いに狂った国家主義が死に至らしめた牧口会長こそ、二十世紀の日本が世界に誇るべき「最高の学識者」でありました。ただ今、貴大学より賜りました栄誉を、私は、この誉れの先師に、「創価学会創立七十周年の栄光の象徴」として、つつしんで捧げたいのであります。(拍手)
 (会合の席上、米国・モアハウス大学・キング国際チャペルから池田SGI会長に対する顕彰が行われた。エドワード・カーター所長ら一行が出席。非暴力の体現者としてのSGI会長を高く評価し、「最高学識者」の称号が贈られた)
 きょうは、世界四十五カ国・地域から、SGI青年研修の二百五十人の皆さまが参加しております。遠いところ、経済的にも大変なところ、本当に、よくおいでくださいました。ありがとう!(拍手)
 求道の心強き皆さまは、日蓮大聖人から「善哉、善哉」と最高に賛嘆される方々であります。
 真の仏法者であります。偉大なる仏の直弟子の集い。広宣流布の闘士の集い。それが創価学会であり、本日も、その象徴であると申し上げたい。(拍手)
 皆さま方、一人ひとりのことは全部、私の生命の奥深くに入っております。私は、「まさに起って仏を敬うがごとく」、若き指導者の皆さまを心からお迎えし、賛嘆申し上げたい。(拍手)
 どうか、二十世紀の「キング博士の夢」を、そして「牧口先生の夢」を、わが世界の青年部の団結の力で、二十一世紀に断固として実現しゆくことを、私は心からお願いするものであります。(拍手)
 新しき世紀は、一切、青年部にお願いするしかない。新しい人材にバトンタッチするしかない。青年部、よろしく頼む!(拍手)
4  カーター所長は先日、ある大学でスピーチしておられます。(米国ジョージア州のメーサー大学)
 「今や、科学者たちは『″祈りはDNAをも変える″ということは、ほぼ、証明されうる』と考え始めています」と。(DNAは、デオキシリボ核酸のことで、遺伝情報が組み込まれている)
 「祈りの力」が、どれほど偉大か。それを科学が証明しようとしている、と。
 二十一世紀の科学と宗教を考えるうえで、まことに示唆深い発言であります。
5  虐げられ、苦しむ人々の味方たれ
 カーター所長は、「師弟」という最も気高い「精神の継承の道」に光を当ててこられました。所長は、キング博士の師匠である、モアハウス大学のメイズ学長を宣揚する名著も編纂しておられます。(『ウォーキング・インテグリティー(歩く高潔の人)』)
 そこには、大教育者の珠玉の哲学がちりばめられています。たとえば、メイズ学長の、こんな言葉がある。
 「よい宗教を見極める試金石とは、何か。それは、一番高いところにいる人ではなく、一番低いところにいる人に対して、どう振る舞うか。また、教育を受けた人ではなく、自分の名前すら書けない人に対して、どう接するかである」
 じつに、奥深い慈悲の目線であります。広布の指導者も、すべての人に対して、このように接していただきたい。どこまでも謙虚に、また謙虚に、会員に奉仕し抜くことである。断じて増上慢になってはならない。
 虐げられ、苦しんできた人々の味方になって戦う――これがキング博士であります。創価学会であります。ここに学会の最高の誇りがあり、強さがあります。
 メイズ学長は、こうも言われる。
 「大学は、スピーチや議論がうまい、利口な卒業生を送り出すだけでは、十分ではない。むしろ、我々が育てるべき人間は、公私にわたって信頼できる誠実な人間、そして、社会の邪悪と不幸と不正を鋭敏に感じ取り、その悪を正す責務を進んで引き受ける人間である」
 まさに、人間主義の根本であり、仏法の真髄に通ずる言葉であります。この理念の通り、モアハウス大学は、キング博士をはじめ、無数の「人材」を育成してこられました。一世紀を超える正義の闘争の伝統に、私たちは心からの尊敬を表したいのであります。(拍手)
6  私が感嘆するのは、異文化に対して広々と開かれた貴大学の「学識の力」によって、インドのガンジーの「非暴力」の思想が、アメリカの人権運動に大きく生かされていったという史実であります。キング博士を中心とした「非暴力」の実践は、近年では、ヨーロッパに伝播し、「東欧の民主化」の原動力ともなった。
7  生命の尊厳の連帯を新世紀に
 さかのぼれば、ガンジーの「非暴力」の思想は、ロシアの文豪トルストイに触発されている。さらに、トルストイは、アメリカ・ルネサンスの哲学者ソローから感化された。そして、このソローは、大乗仏教の精髄である「法華経」のフランス語訳から、深く学んでいたのであります。まことに遠大なる、世界的な精神の連鎖であります。
 青き地球を包みゆく、こうした壮大なる「生命の尊厳の連帯」を、私は、新世紀に、いよいよ広げ、強めていきたいと願う一人であります。
 わがアメリカ創価大学は、この大いなる人間主義の使命を担い、新たな人類の価値創造を成し遂げていく大学となっていただきたい。今、その「栄光の第一期生」には、全米、全世界から続々と優秀な青年が志願してくださっております。
 二つの教室棟は「ポーリング夫妻棟」「ガンジー夫妻棟」と命名されました。これも、兄と仰ぐモアハウス大学の「開かれた精神」のように、「世界の偉大な平和の魂」から限りなく学んでいこうとする、一つの象徴であります。
 今、アメリカSGIの前進も、まことに目ざましい。アメリカは、まさに「世界の要」であり、「広布の要」の天地であります。この十月には、私のアメリカ初訪問四十周年を記念して、ロサンゼルスでの一万人集会をはじめ、全米各地で盛大に総会が行われるとうかがっています。心から、ありがとう! おめでとう! と申し上げたい。(拍手)
 ところで、カーター所長との光輝ある友情の第一歩は、じつは、アメリカSGIの一人の真摯な女性教育者との対話から始まったと、うかがっております。
 いずこの国、いずこの地域にあっても、生き生きとした創価の女性の活躍が、新しい希望と信頼の道を切り開いております。本当に、女性の力はすごい。
 日蓮大聖人は、すでに十三世紀に、「男女はきらふべからず」等と、男女をはじめ、すべての人間生命の本源的な平等を高らかに宣言しておりました。「三世を知るを聖人と云う」の御金言のごとく、はるか未来まで見通しておられたのであります。
8  そして明日(九月八日)は、各国の女性リーダーの代表が出席し、晴れやかに「創価世界女性会館」がオープンします。おめでとう!(拍手)
 (=開館式では名誉館長の池田SGI会長夫人と代表がテープカット。SGI会長は九月九日、初訪問した)
 ともあれ、学会のリーダーは、どこまでも女性を尊敬し、大切にしていっていただきたい。
 男性の幹部は、敵と戦う時は、毅然とした態度で臨むべきである。しかし、純真な婦人部や女子部に対して、威張ったり、叱ったりすることは絶対にあってはならない。そういう傲慢な幹部は追放される時代に入ったことを知っていただきたい。
9  逆境こそ勝利のチャンス
 さて、幾多の危険と障害の連続にあって、キング博士の運動も、苦渋の敗退を余儀なくされたことがあります。しかし博士は、そこから猛然と、反転攻勢の行動に打って出ていきました。
 いちばん苦境の時にこそ、反撃に打って出る――これが名将軍の手の打ち方である。たいていは、いったん負けると、臆病になり、愚痴をこぼしたりする。しかし本当は、その時が「変毒為薬」のチャンスなのである。
 キング博士は、当時、最も人種差別が激しかったバーミングハムに、あえて乗り込んでいきました。「最も困難な場所で勝ち抜くことが、一切の流れを変え、全部、勝つ方向へと転じていける」「自由と正義の全闘争を逆転勝利させゆく推進力になる」と信じたからであります。
 最も困難なところへ――ここに急所がある。何か問題が起きたり、大変な場面にあうと、多くの人は逃げ出す。しかし、あえて、一番大変なところへ乗り込んでいくのが一流のリーダーである。偉大なる人間である。キング博士は、それを身をもって証明されました。ここに私は、博士の強さを感じるのであります。
 私自身、この行動を、ずっと貫いてきました。だから、勝ち続けてきた。どんな戦も、そうであります。
 「牧口先生、戸田先生がつくられた学会を、何があっても守り抜くのだ。そのためなら、あらゆる難は、私一人が受ける。どうか、ほかは、だれ一人として、難にあいませんように」――会長になって以来、私は、そう祈り続けてきた。
10  キング博士は、一番大変な、最も厳しい地盤で、「嵐のような拡大運動」を起こしてみせると、固く固く決心しておりました。そのために、博士自身が率先して現場に飛び込み、街々の「小さなグループ」を訪ねて回っては、あらゆる人々と対話を繰り広げていったのであります。深く心に刻むべき一点です。
 「大きい会合」だけでは、一人ひとりが見えてこない。心が伝わらない。「小さな会合」が大事である。「一対一」の対話でこそ、固く強い連帯を築いていける。
 行く先々で、キング博士を待ち構えていたのは、たいてい、硬直した、冷ややかな反応でありました。しかし、それで、たじろぐような博士ではなかった。賢明な博士であった。偉大な博士であった。
 博士には、闘争から遠ざかっている人々にも新しい活力を吹き込み、皆を、正義の陣列に大結集させていくのだという、烈々たる闘魂が燃えさかっていたのであります。博士は、率直に問題の急所に言及しながら、懇切丁寧に、そして何よりも、誠意を尽くして語り抜いていきました。
 リーダーは、何を言ってるかわからないような、あいまいな話ではいけない。パッと急所を押さえ、「何を悩んでいるのか」を明快につかむ。そして、「今、何をすべき時なのか」を具体的に語っていくことである。
11  宇宙をも味方にする壮大な行進を
 キング博士の、忍耐強い、徹底した対話の積み重ね――それは、やがて、疑いや誤解にとらわれて感情的になっていた人々の心さえもつかんでいった。一人また一人と、「そうか! じゃあ一緒に戦おう!」と、奮い立っていったのであります。
 「忍耐強い」ことが「勝利」であります。
 さらに博士は、リーダーの中に一人も無駄な動きがないよう、互いの連携を密にし、切磋琢磨していきました。「静かなる闘争」によって、「少人数」を″核″としながら、運動の機運を大きく、強く盛り上げていったのであります。
 大きな会合で立派そうに話すだけで、自分は責任を負わず、何もしない――そんな「人気とり」のリーダーになってはならない。真の「将軍学」「指導者学」を身につけていただきたい。そうでなければ、人はついていかない。
 キング博士が築いた人々の結合は、奔流の勢いで加速し、やがて、百千万の民衆に支持を広げながら、ついに劇的な大勝利をもたらしていったのであります。
 「宇宙は正義に味方する!」――これが博士の揺るぎない大確信でありました。私たちも、博士と同じ確信でいきましょう!(拍手)
 狭い日本にとどまらず、宇宙全体をも味方にしていくような壮大なる行進を、そして壮大なる勝利を勝ち取ってまいりたい。
 今、わが創価の同志もまた、意気軒高であります。きょうは、元気な壮年部の記念の大会、おめでとう!
 先ほど、藤原関西長が「壮年革命」を呼びかけていた。いい言葉である。やりましょう、「壮年革命」を! 若々しく、胸を張り、行動して、境涯を広げてまいりたい。
 壮年部は、全員が「二十一世紀のキング博士」との自覚で、勝利と拡大の名指揮を頼みます!(拍手)
12  語れ! 正義の勢力を結集せよ
 「善人が沈黙する時のみ、悪ははびこる」とは、貴大学のメイズ学長の信念でありました。仏法者の信念もまた、同じであります。
 キング博士の命を奪い、マハトマ・ガンジーの命を奪い、牧口先生の命を奪った、恐るべき闇の力が、人間社会には、今も、宿命的にうごめいております。正しき人に嫉妬して、讒言という言論の暴力で抹殺しようとする魔性が、いまだに、はびこっている。
 また、日本の反動的な国家主義の台頭を危惧する、アジアの識者もじつに多い。危険な日本の流れを憂慮する声は絶えません。
 だからこそ、善なる民衆が沈黙を破って、思う存分、声をあげ、「正義の光の勢力」を断じて拡大していく以外に、人類史の悲劇の流転は、絶対に転換できない。
 日蓮仏法では、「善と悪との勝負を決していかない限り、時代社会の災難はやまない」と説いています。ここに私たちは、明年、千載一遇の二十一世紀の緒戦を、断固として、一千万の「平和」と「人道」の未曾有の連帯で勝ち取っていくことを、約し合いたいのであります。(拍手)
13  キング博士も、またマハトマ・ガンジーも、どんな苦しい戦いに臨んでも、その周囲には、楽しい笑いが絶えなかったといわれております。いつも、不屈の希望に燃え、気取らない笑顔で皆を勇気づけ、励まし続けていったからであります。
 挑戦の人生は明るい。理想に向かう前進は、朗らかです。「勝ち戦」への行進だからであります。さらに、キング博士の行くところ、向かうところ、あの有名な「我々は必ず勝つ(ウィ・シャル・オーバーカム)!」との歓喜の合唱が響きわたりました。この歌を歌える人はいますか?
 (SGI会長の呼びかけに応え、代表が「ウィ・シャル・オーバーカム」を合唱)
 ありがとう!(拍手)
 我々は必ず勝つ!――この決心で、私たちもまた、二〇〇一年五月三日へ向かって、堂々と勝利の大前進を行ってまいりたい。
 終わりに、尊敬申し上げるカーター所長はじめ、すべてのご出席の皆さま方の限りないご健勝、そして、アメリカをはじめ、四十五カ国の限りないご繁栄を心の底からお祈り申し上げ、スピーチを結びます。
 サンキュー・ベリーマッチ!
 (東京牧口記念会館)

1
1