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日蓮大聖人・池田大作

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東京婦人部前進会議 仏法は「善と悪」との大闘争

1999.2.6 スピーチ(1998.11〜)(池田大作全集第90巻)

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1  「退く心なし」の人が「幸福」に
 寒いなか、毎日、本当にご苦労さまです。
 きょうは、二月十一日、戸田先生のお誕生日の記念の集いである。
 大事な東京婦人部の代表の方々がお集まりなので、少々、スピーチを贈らせていただきたい。
 「陰の功労者を讃える」――これが日蓮大聖人の御心であられた。
 流罪された佐渡にあっても、大聖人は、「遠い鎌倉で、けなげに信仰を貫く一人の″お母さん″」を、あたたかく見守っておられた。多くの弟子たちが、大聖人から大恩を受けながら、臆病にも、難を恐れて、次々と退転していった。
 そのなかで、この無名の母は断じて負けなかった。少しでも大聖人をお守りしようと、毅然と行動を起こした。大聖人は、この婦人を最大に賛嘆する御手紙を贈られている。
 「ごぜん御前の一文不通の小心に・いままで・しり退ぞかせ給わぬ事申すばかりなし、其の上自身のつか使うべきところに下人を一人けられて候事定めて釈迦・多宝・十方分身の諸仏も御知見あるか
 ――(多くの門下が退転したり、退転の心があるのに)貴女は学もなく、かよわい(平凡な)身でありながら、今まで(信心を)退かずにこられたことは、言葉に尽くせないほど尊いことです。そのうえ、自分のために使う下男を一人(私のために)付けてくださった。このことは、必ずや釈迦仏、多宝仏、十方(全宇宙)の分身の諸仏も、ご存じのことでしょう――と。
 広宣流布の指導者は、陰の陰で苦労されている尊き同志を、サーチライトで照らすがごとく、徹底して探し出し、光を当て、顕彰していかねばならない。
2  大聖人は、この婦人に対して、こう仰せである。これまでも何度も拝読してきた有名な御聖訓である。
 「第六天の魔王・十軍のいくさを・をこして・法華経の行者と生死海の海中にして同居穢土どうこえどを・とられじ・うばはんと・あらそう、日蓮其の身にあひあたりて大兵を・をこして二十余年なり、日蓮一度もしりぞく心なし
 ――第六天の魔王が、十種の魔の軍勢で戦を起こし、法華経の行者を相手に、凡夫と聖人が同居しているこの娑婆世界を『とられないぞ』『奪ってやる』と、『生死の苦しみの海』の中で争っている。日蓮は、まさにその(第六天の魔王と戦う)身に当たっており、大兵を起こして二十年あまりになる。(その間)日蓮は一度も退く心はない――と。
 人生も社会も、すべてが戦いである。なかんずく、仏法は「広宣流布」が魂であり、善と悪の戦いである。仏と魔の闘争である。
 魔軍との戦いに、一歩も退いてはならない。「戦い抜く信心」の境涯にこそ「幸福」はある。
3  広宣流布とは、この現実社会のまっただ中で、「善の地盤」をどれだけ築き上げるか、「正義の地盤」をどれだけ広げていくかという永遠の闘争である。負ければ、悪の勢力に地盤を奪われてしまう。
 戸田先生も、よく言っておられた。
 「私は今、一本の旗を掲げて、たった一人で濁流の中に立っているようなものだ。少しでも油断すれば、旗と一緒に、濁流に流されてしまう」と。
 とくに、この二十余年間は、ありとあらゆる悪が結託して、仏意仏勅の学会を包囲し、壊滅しようと襲いかかってきた。しかし、私たちは、一切の魔軍を、恐れなく、ことごとく打ち破ってきた。
 大聖人直結の学会は、「悪と徹底して戦う」人間の陣列である。「正義の中の正義」の団体である。庶民の「善の連合体」である。
 いよいよ、完璧なる連戦連勝で、「創価の正義の大いなる地盤」を建設してまいりたい。
4  信心に感傷は内。強く、愉快に、楽観主義で
 一月十一日、北京の中央党学校で、閣僚級の幹部を対象に学習会が開かれた。そこで、江沢民主席が演説をされ、中国の主要紙が一面で報じた。こういう内容である。
 「歴史の中から栄養をくみ取ることができなければ、優れた指導幹部とはなれない」
 「現代経済と科学技術の知識のほかに、理論と歴史を学ばねばならない」
 「全同志が中華民族の歴史を学べ。とくに、民族の独立と自身の解放のために戦った、苦難に満ちた近代の闘争史を真剣に学べ。その中から、先人の事業を受け継ぎ、将来の発展に道を開くための強大な精神的動力を獲得せよ」と。
 創価学会も、無名の庶民である先輩たちが、岩盤を打ち砕くがごとく戦い抜いてこられた。
 その歴史を、絶対に忘れてはならない。常に学会精神の真髄に立ち返っていくことである。
 これこそが、何ものにも勝る「強大な精神的動力」となるからである。
 悲壮感でなく、楽観主義でいくべきである。センチメンタリズム――感傷は、仏法にはない。「現実のうえで、幸福になる」ための人生である。
 何があろうが、強くまた強く、そして愉快に立ち向かっていくのが真の仏法者なのである。
5  先日、お会いした、世界的な経済学者のレスター・サロー教授に、私は質問した。
 「歴史上で、いちばん経済的に成功したのは、いつのどの国でしょうか?」
 教授は、間髪を入れずに回答された。
 「人類史上、最も経済的な繁栄を謳歌したのは、疑いなく古代エジプトだと思います。エジプト人たちは、四千年もの間、経済活動を潤滑に行い、繁栄し続けました」
 このエジプト文明が、初期のころから、″教育に情熱を注ぎ、高度な教育制度を発展させてきた″ことは、よく知られている。それは文明の偉大な創造力の源流ともなった。
 四千年以上も前のことである。ある王が、後継の王子に与えた教訓の中に、こういう一節が残されている。
 「王都が汝を愛するよう、若者たちを育成すべし。また〈新兵たち〉によって汝の支持者を増やせ。見よ、そなたの都市は新たに成長してくる者で一杯だ」(「メリカラー王への教訓」屋形禎亮訳、『筑摩世界文学大系』1所収、筑摩書房)
 大事なことは、後輩を愛し、新しい人を育て、自分以上に伸ばしていくことである。
6  戸田先生も常々、語っておられた。
 「私がいちばんうれしいことは何か。それは、広宣流布のために戦っていく弟子たちが、どんどん成長することだ。青年と会い、青年と語ることが、私の最高の喜びである」と。
 今、全国各地で、新しい人材が澎湃と躍り出ている。先頭に立って闘争を展開している。わが地涌の友の大成長の、この姿こそ、「戸田先生の誕生日」への何よりの祝賀である。
 戸田先生は、若き弟子に語っておられた。
 「今の僕の心境は、大空に真綿を広げて、その上に″大の字″になっているようなものだ。必要なものは自然に具わってくる。不求自得(求めざるに、おのずから得る)だ。この功徳はどこで得たかといえば、二年間の獄中生活によってである。しかし今は時代が違う。牢獄などに行かなくても、その若き生命を尊い広宣流布の使命に生きて、東奔西走していきなさい」と。
 「師弟不二」といっても、広宣流布の組織の第一線で東奔西走していく行動の中にしかないのである。
7  ここで、現在進行中の対談を、ご紹介したい。
 (1)テヘラニアン博士(ハワイ大学教授。総合月刊誌「潮」に連載中〈=『二十一世紀への選択』二〇〇〇年十月二日発行、潮出版社〉)
 (2)ジュロヴァ博士(ブルガリアの芸術史学者。「東洋学術研究」に連載中〈=『美しき獅子の魂』一九九九年十一月十八日発行、東洋哲学研究所〉)
 (3)サドーヴニチィ博士(モスクワ大学総長〈=『二十一世紀をみつめて』総合月刊誌「潮」で二〇〇一年五月号から十二月号まで連載〉)
 (4)ヴィティエール博士(キューバ独立の父ホセ・マルティの研究家〈=『カリブの太陽 正義の詩「キューバの使徒ホセ・マルティ」を語る』二〇〇一年八月二十四日発行、潮出版社〉)
 (5)ナンダ博士(デンバー大学副学長)
 (6)クリーガー博士(アメリカの核時代平和財団所長〈=『希望の選択』二〇〇一年八月二十四日発行、河出書房新社〉)
 (7)エスキベル博士(アルゼンチン、ノーベル平和賞受賞者)
 (8)ロケッシュ・チャンドラ博士(インドの仏教学者〈=「大白蓮華」に『世界の哲学を語る』として二〇〇〇年十月号から二〇〇一年十二月号まで連載〉)
 「対話」が、仏法の精神である。
 サロー教授も「私は、仏教が二十一世紀に果たす役割は『対話』だと思います。『平和のための対話』の精神を世界に紹介していくことだと思います」と語っておられた。
 私どもの対話運動には、世界の知性が期待を寄せているのである。
8  戦いは呼吸、同心の人が勝つ
 結びに、文永九年二月十一日に佐渡で執筆された「生死一大事血脈抄」を拝したい。
 「総じて日蓮が弟子檀那等・自他彼此の心なく水魚の思を成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱え奉る処を生死一大事の血脈とは云うなり、然も今日蓮が弘通する処の所詮しょせん是なり、若し然らば広宣流布の大願も叶うべき者か、剰え日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば例せば城者として城を破るが如し
 ――総じて日蓮の弟子檀那等が、「自分と他人」「あちらとこちら」と隔てる心なく、水と魚のような(一体の)思いになって、異体同心で南無妙法蓮華経と唱えたてまつるところを、生死一大事の血脈と言うのである。しかも今、日蓮が弘めているところの究極は、これなのである。
 もし、そうであるならば(弟子檀那等がこれを実行するならば)、広宣流布の大願も実現するにちがいない。そのうえ、日蓮の弟子の中に異体異心の者があれば、それはたとえば、(城を守るべき)城者が(かえって)城を破るようなものである――。
 大聖人直結の我々は、この御書の通りに、さらに「呼吸を合わせ」「心を合わせて」まいりたい。
 そして、「異体同心」の偉大なる結合の力で、「新しき世紀へ、新しき広宣流布の大勝利の前進を!」と念願し、本日のスピーチとさせていただく。
 (東京・新宿区内)

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