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日蓮大聖人・池田大作

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アルゼンチン・フローレス大学「名誉博士… 青年よ苦労せよ! 艱難にまさる教育なし

1999.1.15 スピーチ(1998.11〜)(池田大作全集第90巻)

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1  希望に燃えて! 未完成から完成の坂を
 青年部の皆さん、遠いところ、本当にご苦労さま!
 夜空を流れる「天の川」は、まことに壮大なるロマンの輝きである。
 「ああ、美しいなぁ」――私も幾たびとなく仰いだ。皆さんも、そうだと思う。
 それに比べれば、人間の世界は、あまりにも小さく、汚れている。
 この「天の川」の中で、地球から約五千光年離れた彼方に、新しい星が続々と生まれている空間があるという。先日、その場所を、南米にある天文台が観測したというニュースが伝えられた。鮮やかな写真も発表された。私は感嘆した。
 小さな地球を、はるかに見おろす――私は天文学が大好きである。
 星の誕生は、荘厳なドラマである。激しい間断なき回転のなかで、巨大なエネルギーを結集し、やがて豁然と闇を破って、光の矢を放ちゆく。大闘争である。戦いである。
 万有流転――宇宙も、文明も、そして社会も、瞬時もたゆむことなく、「生」と「死」の絵巻を繰り広げている。
 今、この地球上にあって、二十一世紀へ、新しい「価値創造の人材」を、きら星のごとく誕生させゆく「教育の星雲」は、いずこにあるか。
 それこそ、わが敬愛する南米の若き総合大学、フローレス大学である。(拍手)
 これから、さらに大発展されることは間違いないと私は信ずる。
 とともに、わが創価の青年の陣列もまた、大いなる「人材の揺籃の銀河」であると、私は申し上げておきたい。
 とくに、きょうは、男子部のニュー・リーダー大会、また女子部のヤング・リーダー大会、本当におめでとう!(拍手)
 皆、″これからの人″である。大事な方々である。日蓮仏法は本因妙の仏法である。すでにでき上がった、完成された人生よりも、未完成の坂が尊い。進歩を忘れた大人たちよりも、″さあ、これから″と進む青年が尊い。増上慢の有名人よりも、はつらつたる諸君のほうが何億倍も尊い生命なのである。これを忘れないでいただきたい。
2  ケルテース学長「より高き人生を求めて進め」
 希有の人間教育者であり、世界的に高名な心理学者であられるケルテース学長、並びに学長の偉大な同志であられるクララ先生(学長夫人)。ただ今、私は、無限の希望にみなぎる貴大学の名誉博士号を、最大の誇りをもって、拝受いたしました。ありがとうございました。(拍手)
 (会合の席上、アルゼンチンのフローレス大学から池田SGI〈創価学会インターナショナル〉会長に対する顕彰が行われた。ケルテース学長、同大学教授のクララ学長夫人が出席。「名誉博士号」が贈られた。之は、人類の幸福と平和に対する絶大なる貢献をたたえたもので、東洋人として初の受賞である。あわせて、SGI会長夫人に「社会学部名誉教授」の称号が授与された)
 最高気温三〇度を超す真夏のブエノスアイレスから、凍てつく真冬の日本に、はるばるとお越しくださった、この寛大なるご厚情を、私は終生、忘れることはできません。まことに、ありがとうございました。(拍手)
3  先日、私は、インド・デリー大学の本年の「芳名録」の第一ページに、「何か書いてください」と揮毫を求められた。
 いかなる言葉を残すか。私は迷わず、青春時代からの信条を、率直に書きとどめさせていただいた。
 それは、「艱難に勝る教育なし」という言葉である。私が十七、八歳からの信条である。有名な哲人の言葉である。
 今、多くの人がイージーな、安易な生き方に流れる風潮がある。皆さんは、そうであってはならない。血のにじむような苦労を重ねなければ、「本物の人間」ができるわけがない。その人格の真髄を示しておられるのが、ここにおられる学長ご夫妻である。(拍手)
 諸君は、まだまだ苦労していない分、人を見る目が浅いかもしれない。しかし、私のように、権力から迫害を受け、波乱万丈の人生を戦い抜いてくると″人物″がわかってくるものだ。
 学長は言われる。「より価値的な、質の高い人生の向上を探求せよ!」と。
 地球の反対側で、牧口先生と同じ信念を叫んでこられた。この崇高な理念を掲げて、「民衆のための大学」を創立されたのである。何と尊い行動であろうか。
 フローレス大学は「人間教育の学府」である。人間教育が大事なのである。その点、「日本の教育は、根本が間違っている」と、心ある人は見抜いている。
 一つの大学を創立することが、いかに困難な事業であるか。これは、創立者にしか、わからない苦しみである。
 私の胸には、「アルゼンチンの教育の父」サルミエントの言葉が、学長ご夫妻の大情熱と二重写しになって迫ってくる。
 「人は、教育によってのみ、自己を開花させゆく絶頂に達することができる」「私は『教育に熱狂している』と言われる。しかし、熱狂こそが、今日の世界を作りあげたのである」と。
4  一生の土台を「今」つくれ
 「新しき世紀」を創るものは「青年の熱と力」である。
 きょうは日本中で「成人の日」の集いが開かれている。全国の頼もしき新成人の皆さん、本当におめでとう!(拍手)
 将来、機会があれば、アルゼンチンにも、ぜひ行っていただきたい。この中から、名誉博士号を受けるような人も出てほしい。
 うそつきの大人になるのではなく、一人も残らず、青春の自分自身の誓いを裏切らない皆さんであっていただきたい。
 はつらつと希望に燃えることだ。あえて苦難に立ち向かうことだ。苦労こそが財産となり、宝となる。
 かつてない自分の新しい道を切り開くことだ。
 「あの人がどう」とか、「この人がどう」とか、ちっぽけな低次元の考えであってはならない。他の人がどうであれ、環境がどうであれ、決然と一人立って、「自分の道」をつくることだ。これしかない。
 青春の悔いなき歴史を厳然とつくった人。その人が「人生の土台」をつくった人である。
 遊びや恋愛に流されて、自分を鍛えず、インチキな生活を生きた人。その人は、年配になってから苦しむだけである。「人生の土台」は青春時代で決まるのである。
5  フローレス大学は「学生根本」の偉大な殿堂である。学長みずから、常に学生の中に飛び込み、一人一人との対話を大切にされている。ほとんどの学生を個人的に知っておられるという。
 一対一の人間の連帯――これほど強いものはない。創価学会が強いのも、一対一できたからである。マス(集団)だけでは危ない。強いようで、必ず崩れる。
 ともあれ、学生を心から大事にする大学は、必ず発展する。どんな小さな大学であっても、最後に勝つ。
 どんなに大きくなっても、大学が商業主義に走れば、もはやそれは「教育の府」ではない。企業と変わらない。
 創価学会もまた、無名の会員こそが根本である。これできたから強い。完璧な土台がある。
 ある学者が語っていた。「いちばん苦労している、いちばんけなげな学会員の方々と、心と心でつながり、最大に尊敬してきたがゆえに、今日の世界的な学会となったのではないでしょうか」と。
 この根本を忘れてはならない。
6  心広々と世界で地域で連帯
 今回のフローレス大学からの受章をもって、光栄にも、私が世界の諸大学から拝受した″知性の称号(名誉博士号・名誉教授称号)″は六十を数えるにいたった。(拍手)(=二〇〇一年十二月二十二日現在、百四十まで、決定の通知がきている)
 日蓮仏法では、法華経の人間主義の哲学が全世界に広まっていくことは、「普賢菩薩」の守護の力によると説かれている。
 広げて言えば、「普く」「賢い」知性の力で、世界の広宣流布は進んでいくと言える。知性という普遍的な場で理解され、支持されなければならない。
 ともすれば、宗教は独善に陥り、また教条主義に暴走してしまう。そうではなく、「教育」そして「文化」という普遍的な次元に展開していかねばならない。これが仏法の正しい行き方である。
 その通りに、私は、世界の最高峰の英知との対話を積み重ねてきた。
7  きょうは、すがすがしい青年の集いである。皆、本当に″いい顔″をしている。広宣流布をしている人は「菩薩」の顔になる。心が美しいからである。心が燃えているからである。
 仏法では、正法を行ずる人を見て「ああ、うれしいことだ」と喜び、正法が弘まる姿を「ああ、すごいことだ」と喜ぶことが、大きな仏縁となり善根となると説く。それを妬んだり、心から喜べなければ、福運を消す。
 今、世界中から、私ども創価の行動に、喜びの称賛を寄せていただいていることは、それ自体が画期的な仏縁の拡大につながっている。そのことを、聡明な諸君は知っていただきたい。
 諸君もまた、自らの使命の地域で、「正義と勇気の連帯」を、大胆に、また大胆に広げていただきたい。大胆なくして道は開けない。広布の拡大もできない。勇気なくして幸福はないのである。
 ちなみに、国連では、「本年の十月、人類は六十億を突破する」と推測している。六十億人が諸君の成長を待っている。
8  師弟の道を毅然と歩みゆけ
 貴大学は「フローレス」すなわち「花」――何と優雅な名前を冠しておられることか。
 その「花の大学」から、私の半世紀におよぶ精神闘争の戦友である妻に、初めての「名誉教授」の称号を賜った。妻に代わって御礼申し上げます。(拍手)
 妻が、この仏法の信仰を始めたのは小学四年生の時。私より早い。私の″先輩″である。
 きょうは中等部の結成記念日であり、未来部の代表も出席している。本当にご苦労さま!(拍手)
 妻は初代会長・牧口先生にもお会いしている。大田(東京)の矢口渡の妻の自宅で開かれた座談会に、牧口先生が来られた。おさげ髪の少女であった妻は駅まで牧口先生を迎えに行き、手を引いてご案内した。
 その座談会には、特高警察が三人も来て、廊下で監視していた。戦時中であり、学会は弾圧の嵐のなかにあった。
 当時、多くの近所の人も「警察が来て見張っている。あんな信仰は恐ろしい」等と悪口を言った。今のような自由の時代ではなかった。
 そのなかを妻は、牧口先生を忘れずに、戸田先生とともに、強い強い決心で、親子で戦ってきた一人である。女学校時代も折伏をした。銀行に勤めてからも折伏を貫いてきた。本当の信仰者は、見えっぱりではない。
 どうか女子部の皆さんも、また未来部の皆さんも、先ほど(授章の辞で)ケルテース学長もたたえてくださった、創価学会の「師弟の道」を、第三代の私と一緒に、何があっても負けないで、朗らかに、また毅然と歩みきっていただきたい。(拍手)
9  将来のために一言、申し上げておきたい。
 おうおうにして、親が社会的に偉くなると、子どもにしっかりと信心をさせない場合がある。学会のおかげで福運をつけ、偉くなったにもかかわらず、その恩を忘れてしまうのか。または社会に見えをはってしまうのか。
 私事で恐縮だが、我が家では、絶対にそうさせなかった。恩師・戸田先生の指導通り、信心根本、学会中心の生き方を子どもたちに教えてきた。
 就職先を考える際にも、妻は子どもたちに「有名な企業などに行くことも反対はしないが、創価学会のために働きなさい。絶対に創価学会の組織から離れてはならない。また、できることならば、創価学会に尽くしていけるところで働かせてもらいなさい。これが一番のご恩返しであり、広宣流布につながる道だからです」と話していたようだ。
 もちろん、企業がいけないと言っているのではない。皆が学会の関連の職場で働く必要もない。
 要は、精神である。「見えっぱりには本当の信心はできない」ということである。社会的に偉くなればなるほど、その分、感謝して広宣流布に一層、尽くしていくのが本当の信心ではないだろうか。(拍手)
10  牧口先生「社会にかかわらない宗教は無価値」
 今回、学長のご尽力によって、牧口先生の『創価教育学体系』のスペイン語版を発刊していただいた。本を見て、私は涙する思いであった。
 「牧口先生、戸田先生が見られたならば、どれほどお喜びになられただろう。きっと本に頬ずりするほど喜ばれたに違いない」と。
 牧口先生は『創価教育学体系』で、一貫して、社会に「善の価値」を創造しゆく行動を呼びかけておられる。
 「社会にかかわろうとせず、利己的な幸福を追い求め、個人に自己満足を与えるだけの宗教は、もはや宗教としての存在価値はない」と。
 当時から、牧口先生は厳しく断じておられる。
 利己主義の宗教、閉鎖的な宗教、社会に価値を送らない宗教、それらは「存在価値はない」。
 ここに、この娑婆世界――苦しみの世界、忍耐の世界を舞台とした、創価学会のダイナミックな宗教革命、人間革命の一つの出発点がある。
 仏法即社会である。社会への挑戦を忘れた宗門は、仏法をも忘れてしまった。信心を失い、日蓮仏法を破壊するに至ったのである。
11  ″邪悪な心″と永遠の闘争
 さて、学長も尊敬される、あのアインシュタイン博士は、しみじみと、こう慨嘆している。
 「人間の邪悪な心を変えるよりも、プルトニウムの性質を変えるほうがやさしい」(ジェリー・メイヤー、ジョン・P・ホームズ編『アインシュタイン150の言葉』ディスカヴァー21編集部訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 (プルトニウムは中性子によって、その性質を変え、核分裂を起こす。原爆等をつくるよりも、人間の心を変えるほうが難しいという意味)
 だからこそ、人類にとって、学長が献身してこられた心理学――「心の理の学問」が、ますます重要になってくる。
 仏法の「一念三千」、また「色心不二」「依正不二」等の法門も、一次元から言えば、壮麗にして精密なる心理学である。
 そして、広宣流布とは、邪悪な心との永遠の闘争である。悪人や反逆者が出るのは、仏法が正しい証拠である。
12  牧口先生も、戸田先生も、来日したアインシュタイン博士の「相対性理論」の講義を直接に聞いたことを、大きな誇りとしておられた。恩師は私に、よく話してくださった。
 アインシュタイン博士は、極悪のナチスとの戦いのなかにあっても、悠然と、こう語った。
 「地球は小さな星にすぎません。どこか遠いところには、もっと大きく大切な星があり、そこはもしかすると、もっと気高く幸せなところかもしれないと考えているのです」(NHKアインシュタイン・プロジェクト『NHKアインシュタイン・ロマン』1,日本放送出版協会)
 よくわかる。仏法が説く「仏国土」の思想とも響き合う。
 諸君もまた、大宇宙をも包みゆく、大きな強い「心」で、誓願の青春を生き抜いていただきたい。(賛同の返事)
 二十一世紀へ、ともどもに、一歩も引かずに戦いましょう!
 徹底して前へ前へ、押して押して押しきっていくべきである。その人が勝つ。断じて、一歩も引いてはならない。
13  「精神の力闘」で連戦連勝を!
 結びに、きょうより、かけがえのない我が母校となった貴大学の永遠無窮のご繁栄を、私は心の底からお祈り申し上げます。
 そして、尊敬する学長の故郷である、ハンガリーの十九世紀の民衆詩人ヴェレシュマルティの詩の一節を朗読させていただきたい。
  「われらこの世界に生まれたからには
  力のかぎりに向上を闘い
  その眼の前にうごめく同胞はらからの悲運
  それを深淵の溺れから救うのだ
  精神の力闘の光彩で
  高く高く暗黒を照らすのだ」
  「われらたからかにうたおう
  生命への感謝を
  生きるための労働 その無上の喜びを」
   (『世界名詩集大成』15,今岡十一郎訳、平凡社)
14  苦しんでいる人民を救え! 人民を守れ! 力強い闘争で闇を照らしてゆけ!――と。
 青年部の諸君。ついに諸君の二十一世紀の本舞台はでき上がった。健闘と勝利と栄光を祈りたい。連戦連勝を祈りたい。
 諸君が怒涛の嵐を乗り越え、悔いない大勝利の青春を勝ち取ることを祈って、私のあいさつを終わりたい。ありがとう!
 (東京牧口記念会館)

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