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キルギス共和国「アブドモムノフ賞」授賞… 青年よ働こう! 全人類のために

1998.9.19 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

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1  見よ! 地球をつつむこの連帯
 敬愛するキルギスの人民作家アブドモムノフ先生は、詩心も豊かにこう語られました。
 「地球よ! 幾多の悲しみも、幾多の喜びも、共に包みこんで、地球は止まることなく回っている。悲しみも、喜びも、愚かさも、賢さも、忍耐も、裏切りも、真心も、残酷さも、そして、生も、死も……すべてを包みこみながら、地球は回っている」と。
 (会合の席上、中央アジアのキルギス共和国から、池田SGI〈創価学会インターナショナル〉会長に対する顕彰が行われた。「キルギス国立音楽協会」のケリムバエフ総裁画、SGI会長に同共和国の「文学の最高栄誉」の賞である。「アブドモムノフ賞」を授与した)
 たしかに今、この式典が挙行されている一時間ほどの間にも、われらの青き地球は、大宇宙の確たる軌道を時速千七百キロで自転しながら、時速十一万キロという猛烈なスピードで公転し続けております。
 宇宙も、生命も、すべて「動き」であり、「動」であります。青春もまた、間断なき「行動」の異名であります。
 では、この生々流転する地球を大舞台として、いかなる人生の劇をつづりゆくか?
 アブドモムノフ先生は、こう訴えられました。
 「自分中心に、位や名誉のために考えたり、動いたり、心を騒がせるのではなく、私たちは何十億の人々のために、また人類の運命のために、自分を惜しまず探究し、そして働こう!」と。
 正義の言です。SGIの目的も「全人類のため」であります。
2  本日は、この同じ心で、地球の未来を担わんとする、五十一カ国・地域の頼もしき青年が一堂に会しました。
 なかんずく、ここに集った青年リーダーは「生と死」という人類にとって究極の課題に挑戦し、打開しゆく「生命哲理の若き実践者」であります。
 深刻な不況のなか、若い皆さん方が大変な苦労を重ねながら来日してこられたことも、私は、よくわかっているつもりであります。
 ただいま賜りました最高に栄えある「文化の大賞」を、この愛する世界の青年たちとともに謹んで拝受させていただきます。(拍手)
 キルギス芸術界の偉大な指揮をとられる「国立音楽協会」のケリムバエフ総裁に、私は、心から御礼を申し上げます。また、公務ご多忙のところ、本当にようこそお越しくださいました。
3  「地位は解けゆく氷。芸術は心に残る宝」
 先ほどは、キルギス国立歌舞団の先生方が、妙なる″天の曲″″大地の歌″を奏でてくださいました。悠遠なる調べを聞きながら、私たちは、まるで青空にそびえ立つ天山山脈の銀の峰を仰ぐような、壮大な心になりました。
 また、シルクロードの大草原を白馬に乗って駆けゆくような、そして、満天の星空のもと、「神秘の湖」のほとりで友と語り合うような、心の高鳴りを覚えたのであります。
 国を超えて共鳴しあう、この「詩心」こそ、平和の根本の光源であります。
 キルギスの有名な箴言には、「地位というものは、解けていく氷。芸術というものは、民の心に残る宝」とあります。
 たとえ、いかに権勢を誇る権力者であろうとも、民衆の「正義の太陽」に照らされれば、氷のように、はかなく消え去ってしまう。
 反対に、いかに無名であり無冠であろうとも、民衆に「生きる喜び」「生き抜く希望」を贈る芸術家は、人々の心に不滅の光を放ちゆく「美の帝王」であります。
 ゆえに、私も、「芸術の使者の方々こそ最大に大事にお迎えしたい」と願い、文化の交流を進めているのであります。
 ここで私たちは、総裁をはじめ、歌舞団の先生方に、もう一度、感謝と尊敬の大拍手を捧げたい。(大拍手)
4  世界の情勢は激動しております。国際関係も、政治という″権力″の結びつき、また経済という″利害″の結びつきだけでは、どうしても不安定になってしまう。
 だからこそ、地道なようであっても、文化という、より広範な、より永遠性のある、民衆の″心″の結びつきが、揺るぎない平和の土台となっていくことを、私は確信してやまない一人であります。
 そしてまた、確固たる「人間主義の哲学」をもった青年の″精神の連帯″が、絶対に不可欠であります。この連帯なくして、地球の安定はありえないでしょう。
5  地球規模で考え、地域で行動せよ
 きょうは、民衆の「草の根」の力の開発に人生を捧げてこられた、世界的な″行動する未来学者″ヘンダーソン博士が光栄にもご臨席くださいました。(拍手)
 巨大な国家でもなければ企業でもなく、目覚めた市民勢力こそが、世界を変える「第三の力」である。この信念で、博士は、「創価の青年運動」に大いなる期待を寄せてくださっております。
 かつて「ローマクラブ」のスローガンとなり、世界の平和運動の指標となった「地球規模で考え、自分の地域で行動せよ!」という有名な言葉も、博士が自らの運動の中で考案されたものであります。
 仏法で説く「本有常住」という生き方にも通ずる、この素晴らしいスローガンについて、ローマクラブ創立者のペッチェイ博士と語り合ったことを、私は懐かしく思い出します。
 ヘンダーソン博士は、いわゆる一般の大学教育は受けておられない。それゆえに、「主婦に経済学がわかるものか」といった傲慢な嘲笑を浴びせられたこともあったと、うかがっております。
 また、その先見性と、弱者の側に立った勇敢なる言動のゆえに、激しい非難にも、さらされてきたのであります。
 しかし、博士は、常に負けじ魂を発揮して、圧迫を毅然とはね返し、打ち返してこられた。多くの世界的な学者とも、堂々と議論し、論破しておられます。
6  博士は、ゴルバチョフ元大統領夫妻とも大変に親しい。三年前の秋、政界復帰が噂される元大統領を、博士が、きっぱりと激励されたエピソードも大変、有名であります。
 すなわち、元大統領に「狭い一国に閉じこもるよりも、あなたは世界市民として、より大きな活躍をすべきです!」と励ましを贈ったのであります。(拍手)
 一昨年、ボストン二十一世紀センターの「世界市民人道賞」を受賞された際、博士は晴れ晴れと語られました。
 「私たち一人一人は、じつに神聖な存在なのです。私たちが内に秘めている、この神聖な生命を輝かせながら、英知と正義と慈愛に満ちた社会を、ともどもに築いていこうではありませんか!」と。
 この博士の崇高なる理念と足跡に対して、賛同と称賛を込めて、大喝采を贈りたいのであります。(拍手)
7  活路は「価値創造の人材」に
 わが創価学会が創立されたのは、昭和五年(一九三〇年)の十一月。あの世界大恐慌のさなかであります。
 生活の困難、思想の混乱、世相の険悪化――現在と同じような様相が、眼前に展開しておりました。しかし、当時の日本の多くの為政者も、学者も、宗教家も、皆、混沌の渦中に巻き込まれ、ただ、茫然自失――うろたえ、自信を失い、あるいは騒いでいるだけであった。
 『創価教育学体系』の中で、牧口先生(初代会長)は、痛烈に叱咤されました。
 すなわち、責任ある指導階層が、これほど指導力を失ってしまった時代はない。なかんずく、正しい思想哲学を指導する教育が麻痺し、枯渇してしまった。何の力もない。ここにこそ、社会の根本の病因があると、牧口先生は喝破されたのであります。
 要するに、行き詰まっているのは政治ではない。経済でもない。「人間」が行き詰まっているのだ――と。牧口先生は本当に鋭い。
 ゆえに、何よりもまず、「生命」という無上の原点に立ち返れ! その無限の力を引き出す「人間教育」から出発すべきである! そして、「民衆」に奉仕し、この大波乱の時代を乗り切っていく、若き「価値創造の人材群」を育成していく以外にない。それしか世界の活路はあり得ない。
 これが、牧口先生の卓見でありました。
 社会には、自分のことしか考えず、後輩を大切に育てようとしない指導者があまりにも多い。
 しかし諸君は「創価の青年」であります。世紀末の闇が深ければ深いほど、一人一人が、社会と地域の厳然たる灯台となって、赫々と光り輝いていこうではありませんか!(拍手)
8  ″悪と戦う″青年群が希望
 キルギスの文化の巨人、アブドモムノフ先生は言われました。
 「自分の死後、何を残すか。木を残すのも、よいだろう。家を残すのも、よいだろう。道を残すのも、よいだろう。しかし、よき後継者を残すことほど、よいことはない」
 私には、世界中に、かくも多くの立派な後継者が、澎湃と続いております。私は誇らかに世の指導者に紹介したい。(拍手)
 うれしいことに、はるかなキルギスの天地でも、わが創価大学出身の青年が、颯爽と教育界で活躍しているのであります。(拍手)
 先ほどの演奏で、キルギスが生んだ大作家であり、私の親友であるアイトマートフ先生の作品にちなんだ曲(サリ・オゾック)を披露してくださいました。
 このアイトマートフ先生が、私との対談(『大いなる魂の詩』読売新聞社。本全集第15巻収録)の中で断言しておられた言葉が忘れられない。
 「未来は、常に悪との戦いです。このことを、一日たりとも忘れてはなりません。青年を育てるということは、青年を悪との戦いに備えさせるということです」と。
 今、皆さんが、正義のため、民衆のために、一人で何役も引き受けて、人の何倍も苦労し、訓練を受けていくことが、二十一世紀を勝ち抜いていく原動力となっていくことを忘れないでいただきたい。すべて自分自身のためであります。(拍手)
9  「生きるということは(中略)困難な、あらゆる種類の環境と戦い、かつ、それに負けないことを意味する」(『混迷の時を超えて』小島慶三・斎藤志郎訳、佑学社)これはヘンダーソン博士の師匠であり、「仏教経済学」を提唱した世界的に著名なシューマッハー博士の至言であります。
 この言葉のごとく、ともどもに、何ものをも乗り越え、勝ち越えながら、新世紀の地球に、「喜びの歌」を、「平和の曲」を、そして、民衆の「栄光の凱歌」を、創価学会は朗らかに、にぎやかに奏でゆくことを約し合って、私の謝辞といたします。
 ラフマット(キルギス語で、ありがとうございました)。(拍手)
 結びに、青年部の皆さんに箴言を贈りたい。
 まず、イギリスの詩人バイロン。
 「逆境とは真実にいたる第一の径なのである」(『ドン・ジュアン』小川和夫訳、冨山房)
 キューバの英雄ホセ・マルティ。
 「最良の人間を信頼せよ! そして最悪の者に打ち勝て!」
 またガンジーいわく。
 「世界で最も偉大な人は常に一人立つ」(『私にとっての宗教』浦田広朗ほか訳、新評論)
 諸君、これでいきましょう!(拍手)
 「喜びとは、苦悩の大木に実る果実なのだ」(『ヴィクトール・ユゴー』辻昶・横山正二訳、新潮社)。これはヴィクトル・ユゴーである。
 そしてキューバのホセ・マルティの言葉、「皆とともに! そして、皆のために!」と申し上げ、スピーチを終わりたい。
 サンキュー・ソー・マッチ!
 (創価国際友好会館)

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