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日蓮大聖人・池田大作

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リオデジャネイロ州立大学「名誉博士号」… 諸君が勝ち取れ!正義の凱歌を

1998.4.29 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

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1  偉人に育て! 試練を重ねて
 二十一世紀に前進しゆく、わが愛する学生部の諸君に、次の言葉を贈りたい。
 アインシュタイン博士の言葉――「人間としての真の偉大さにいたる道は、ひとつしかない。それは何度もひどい目にあうという試練の道である」。この一言である。
 わがブラジルは、世界に冠たるサッカー王国である。二十万人を収容できる、世界最大のサッカー競技場も、リオにある。しかもそれは、ブラジル最高峰の名門である、わが「リオ州立大学」の隣にある。
 一九五〇年、リオ州立大学が創立された年のこと。完成したばかりのこの大サッカー場で、第二次大戦後、初めてのワールド・カップ(世界大会)が行われた。優勝候補は、もちろん地元ブラジル。ところが、そのブラジルが決勝戦で、まさかの逆転負けをしてしまう。リオに結集した大観衆は、皆、言葉を失った。
 しかし、その悔しき試練を乗り越えて、やがて、史上最強の四回優勝という、ブラジル・サッカーの″黄金の伝統″が築かれていったのである。
 私の人生の師である戸田城聖先生は、よく、「勝った時に、負ける原因をつくることもある。反対に、負けた時に、勝つ原因をつくることができる」と教えてくださった。
 「建設は死闘。破壊は一瞬」である。人生、勝つためには、いささかたりとも油断はできない。
 「追撃の手をゆるめるな!」とは、戸田先生の永遠不滅の遺言である。
2  ブラジルの国土は、日本の二十三倍。自然も、そして人間も、万事にわたって、スケールが大きい。
 創価教育の創始者であり、独創的な地理学者であった牧口常三郎先生は、一九〇三年、三十二歳で発刊した名著『人生地理学』の中で、いちはやく、ブラジルについて言及している。
 奇しくも、きょう、お越しくださった総長のご子息(総長室長)は、三十二歳の若き地理学者であられる。(拍手)
 牧口先生は、ブラジルのような「大平原の国」には、人種や文化を融合させ、共生させゆく利点があると、鋭く論じていた。事実、ブラジルは「人種デモクラシー」の最先進国である。
 さらに、牧口先生は、博大(博くて大きい)な人物や、博大な事業が、生まれ出るのも、ブラジルのごとき大平原の天地からであると洞察しておられたのである。
3  このブラジルが誇る「偉大なる人材の揺籃」リオ州立大学より、私は、ただいま栄えある名誉博士号を授与していただいた。(拍手)また、まことに意義深き「独立の父」(ジョゼ・ボニファシオ)の功労賞記念メダルも、謹んで拝受した。(拍手)
 (会合の席上、ブラジルのリオ州立大学から池田SGI〈創価学会インターナショナル〉会長に対する顕彰が行われた。ペレイラ総長夫妻ら一行が出席。SGI会長には、「名誉博士号」ならびにブラジル独立の父を記念する「ジョゼ・ボニファシオ功労賞」が授与された)
 公務ご繁多のなか、はるばる来日してくださったペレイラ総長ご夫妻、ならびに、ご子息ご夫妻に、重ねて感謝申し上げたい。(拍手)
 ペレイラ総長は百二十七大学からなる「ブラジル大学総長会議」の副議長を務めておられる。また「リオ大学総長会議」の議長でもあられる。
 高名な国際法の大学者である総長のもと、リオ州立大学は、図書館や大学病院の充実、文化行事の拡大をはじめ、めざましい大発展を遂げておられる。
 また、大学の門戸を広く市民に開いて、六十歳以上の方々を対象とした「第三の人生の公開大学」も開講されている。さらに、庶民のための「法律相談」や「健康相談」などのボランティア活動も、大変に有名である。これらは、世界の多くの大学が見習っていくであろう模範である。
 総長は、あの「ブラジル文学アカデミー」の文学賞を受けられた作家としても名高い。
 総長の小説の中に、「だれ人たりとも、身命を惜しまず戦わなければ、祖国を建設することはできない」という力強い一節がある。総長とご家族は、この精神で、大学のため、民衆のため、国のため、気高き建設の人生を戦い続けておられる。
 私は、わが学生部の英才の諸君とともに、盛大な拍手をもってご家族を歓迎し、賛嘆したい。(拍手)
4  裏切り・弾圧を越えて――ブラジル自由闘争の執念
 さて、総長の故郷である「ミナス・ジェライス州」は、十八世紀のブラジルの大英雄・ティラデンテスが生まれた大地である。また、日本の山梨県とも、交流を行っている州である。
 「ミナス・ジェライス」という州の名前は、″鉱物のある原野″という意味であり、金の産地であった。植民地支配の圧政と重税は、この豊かな大地から、搾りとるだけ搾りとり、民衆を、いじめたい放題にいじめていた。狡猾な聖職者も加担していた。
 その鉄鎖を断ち切って、庶民の顔に幸福と喜びを与えたのが、若き学生らとともに立ち上がった獅子――ティラデンテスである。
 私も、これまで何回となくスピーチしてきた。
5  いよいよ彼が革命に決起する直前のことである。一人の裏切り者の密告によって、大弾圧が始まってしまった。この裏切り者は、莫大な自分の借金を帳消しにすることをもくろんで、同志を売ったのである。
 最低中の最低の卑劣な人間である。しかし、こういう人間に皆が踊らされてしまったのである。まさしく「裏切りは人間として最大の犯罪」と言われる通りである。
 いつの世も、正義の人が陥れられる陰には、こうした卑劣な構図があることを、学生部の知性の諸君は、冷徹に見抜いていっていただきたい。愚かではいけない。だまされてはいけない。「真実」を暴き、戦わなければならない。
 英雄ティラデンテスと同志は逮捕され、苛酷な拷問を受けた。耐えきれず、脱落者が続出した。
 中枢だった十三人の同志たちまで、リーダーの彼だけを見殺しにして、自分たちは生き永らえていったのである。
6  中心者を見捨てて裏切る――日蓮大聖人の時代も、そうであった。
 牧口先生、戸田先生の時代も、″大幹部″が裏切った。第三代の私も裏切られた。
 人間とは、ひどいものである。これが古今に変わらぬ方程式なのである。
7  ティラデンテスは、ただ一人、正義を堂々と訴え抜いて、ついに死刑を宣告された。
 「戦える人間がいない!」――英雄ティラデンテスの嘆きは痛切であった。私には、その気持ちがよくわかる。しかし彼は、あとに続く未来の連帯に希望を託したのである。
 大事なのは青年である。学生である。
 近い世代の″横の連帯″以上に、私と諸君との″縦の連帯″が大切なのである。この大切な青年たちを、先輩は決して、むやみに叱ってはならない。叱る資格はない。
 ティラデンテスは、毅然と胸を張って、信念に殉じていった。その遺体は、残虐にも、四つに切り裂かれ、見せしめのため、故郷に戻された。
 だが、この英雄の悲劇こそが、民衆の魂を揺り動かし、覚醒させ、その三十年後に、独立が勝ち取られていったのである。
 厳たる一人の師を継いで、三十年後に凱歌――。私も今、諸君が必ず正義の凱歌を勝ち取ってくれると信じている。(拍手)
8  貫きとおした人が勝利者に
 先ほど、記念のメダルを頂戴した「独立の父」ボニファシオも、悠然と達観していた。
 すなわち、「我々に対して、エゴイズムと卑しい貪欲の連中が吠えている。しかし、その凶暴な憎悪と調子はずれの喚き声は、むしろ我々が、道理にのっとって、真実の人間の大道を勝ち進んでいくための刺激である」というのである。
 その通りである。焼きもちの声なんかに動かされてはならない。
 日蓮仏法では、「にくまばにくめ」、「いまだこりず候」と教える。これこそ、創価の「負けじ魂」であると思うが、諸君、どうだろうか!(拍手)
 御聖訓には、「日蓮は此の経文を見候しかば父母手をりてせいせしかども師にて候し人かんだう勘当せしかども・鎌倉殿の御勘気を二度まで・かほり・すでに頸となりしかども・ついにをそれずして候へば、今は日本国の人人も道理かと申すへんもあるやらん
 ――日蓮は、幕府による処罰(流罪)を二度までこうむり、すでに頸の座にもついたけれども、最後まで恐れずに貫いたので、今では、日本国の人々も「(日蓮の言うことが)道理かもしれない」という人もあるであろう――とある。
 断固、「正義の勇気」を!――これを貫き通した人が勝利者である。
 そして、断固、「正義の執念」を!――これを貫き通した人が、最後の勝利者なのである。
 この「仏法勝負」の精髄を、諸君は、ゆめゆめ忘れてはならない。(拍手)
9  波乱と激戦こそ青年の幸福
 このほど、中国の文豪・金庸先生と私との対談集『旭日の世紀を求めて』が発刊された(一九九八年五月。潮出版社)。その中で、金庸先生は、トインビー博士の「挑戦」と「応戦」の歴史観への共鳴を語っておられる。
 それは、「世界の各文明が存在し、さらに繁栄と発展を持続できるゆえんは、重大なる『挑戦』を受けながらも、それに見事に『応戦』できる能力を備えていることによる」という法則である。
 一つの文明が、歴史に″勝ち残れるか、いなか″。それは短兵急に見てはならない。長い眼で見ていかなくてはならない。
 「人類の幸福」と「世界の平和」を目指しゆく創価学会も、二十一世紀へ生き抜き、勝ち抜いていくために、後継の青年部が、波乱と激戦のなかで、逆境の中で、今こそ学び、鍛え、賢く強くなっていく以外にない。その意味で、「激戦」こそが幸せなのである。
 本日は、中国の若き芸術の英雄・李自健りじけん画伯と、詩人としても著名な丹慧たんけい夫人が、出席してくださっている。心から、御礼申し上げたい。(拍手)
 日本軍による南京大虐殺の歴史を描かれた画伯の作品を拝見した時、私は体が震えるほど感動した。涙が出る思いであった。
10  結びに、ペレイラ総長の友情に、重ねて感謝して、「ブラジル独立の父」の「友情の譜」の一節を紹介したい。
 「ああ! 麗しき平和と聖なる自由
 これこそ 賢者のみの財宝である!
 地上の権力者は この宝を知らない
 なぜなら この宝(平和や自由)は 友情の中にこそ 深く秘められているからだ」
11  傲慢な権力者に、真実の「友情」というものが、わかるはずがない。そして、「友情」がわからないゆえに、平和も、自由も、本当に、わかっていない――というのである。
 だからこそ、聡明な民衆による友情の拡大こそが大事なのである。これが平和の拡大となり、自由の拡大となり、ヒューマニズムの拡大となるからだ。
 学生部の諸君は、この人間としての勝利の金剛の連帯を、スクラムを、日本中へ、世界へ、そして二十一世紀へと、朗らかに、誠実に、そして、大胆に広げていっていただきたい。
 総長ご夫妻をはじめ、ご臨席のすべての皆さま方の、ますますのご健康とご活躍を心からお祈りし、西暦二〇〇〇年に、晴れやかな創立五十周年を飾りゆく、わが愛する「リオ州立大学」の無限の繁栄を念願して、私のスピーチといたします。
 ムイト・オブリガード(ポルトガル語で「大変にありがとうございました」)!
 (創価大学記念講堂)

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