Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

ロシア国立高エネルギー物理研究所「名誉… 「師弟不二の凱歌」の証

1998.4.2 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

前後
2  さて、戸田先生の第二の喜びは、「偉大なる師匠を持つ喜び」であった。
 戸田先生は、牧口先生という大哲学者から指導を受け、薫陶を受けきったことを、人生の最大の誉れとされたのである。
 さらに、戸田先生の第三の喜びは何であったか。それは「正義のために勇敢に戦う喜び」であった。
 牧口先生とともに、戸田先生は、戦争中、日本のあの国家主義と対決して、二年間、投獄された。″師匠が大難に遭った時に、弟子として、お供することができた。これほどの名誉はない″と戸田先生は、一生涯、心から感謝しておられた。
 「あなたの慈悲の広大無辺は、私を牢獄まで連れていってくださいました」(『戸田城聖全集』第三巻)と。これが、仏法の精髄であり、創価の真髄である。
 反対に、師匠と難をともにするどころか、師匠と学会を利用して、自分だけが恩恵を貪り、大恩を仇で返すような最低の人間もいる。
 本物は「難」を受ける。「難」を受けてこそ本物である。そうでないのは、インチキなのである。
 私もまた、この四十年間、幾多の難を、ただ一人受けながら、生死を超えて、精神の大闘争を貫いてきた。(拍手)
3  ″知性の栄誉″を恩師に捧ぐ
 ただ今、私は、ロシアの科学の大殿堂である国立「高エネルギー物理研究所」より、栄えある「第一号の名誉博士号」を賜った。この栄誉を、本日、四月の二日、私は「師弟不二の凱歌」の証として、戸田先生に捧げたい。戸田先生の弟子として、私は戦い、私は勝ったのであります。(拍手)
 (会合の席上、ロシア国立「高エネルギー物理研究所」から池田SGI〈創価学会インターナショナル〉会長に対する顕彰が行われた。ログノフ所長〈モスクワ大学前総長〉が出席。同研究所として、世界初の「名誉博士号」が授与された。この授与には、SGI会長の高い哲学性を評価しての「哲学・物理学博士」の意義がこめられている)
 このあとに続くのは、今日集った優秀な「学生部」、そして「未来部」の諸君である。諸君がいるかぎり、未来は何も心配ない。私は信じ、安心している。
 いただいた名誉学位の証書には、ロシアの近代科学の父であり、モスクワ大学の創立者であった、ロモノーソフ博士の肖像が刻まれている。
 博士は、科学の発展や精神の自由を阻む傲慢な勢力と、生涯、戦い抜いた獅子であった。なかんずく、民衆を蔑視し、束縛する、当時の教会勢力には、断固として立ち向かった。迫害にも怯まずに、坊主たちの腐敗堕落を、痛烈に、責めていったのであった。
 私どもも、それ以上に徹底して責めていくべきである。悪を責めるのに遠慮や妥協があってはならない。
4  このモスクワ大学の創立者の「唯一の希望」は何であったか――それは、若き学生たちであった。
 彼は呼びかけた。″無数のわが分身よ、陸続と躍り出でよ! 我らの学園、我らの大学から、待ちに待った、人材の大いなる流れを起こしゆくのだ!″と。
 ずるい大人は、信用できない。もはや、青年しか信じられない――戸田先生も、そういう心情であられた。そして若い私を後継ぎにされた。
 私も、今、同じ心境である。諸君の成長こそ、希望である。青年が立つ以外にない。
5  今日は、新たな大学会の結成、おめでとう!
 ならびに未来部の人材グループの誕生、おめでとう!
 また、この会合の模様は、沖縄で研修されている台湾のわが同志にも伝えられる。ようこそ、いらっしゃいました。本当に本当に、ご苦労さま!
 私が、初めて名誉博士号を拝受したのは、モスクワ大学からである。そして、本日、同じくロシアの貴研究所の名誉学位を賜り、これで、海外の大学・学術機関からいただいた名誉博士号・名誉教授称号は、ちょうど「五十」となった。(=二〇〇一年八月現在で一〇八に)
 とくに、今回は、哲学・物理学博士の意義を込めていただき、私は格別の感慨を禁じ得ない。
6  学びに学べ! ″脳力″は無限
 「一切法は皆是仏法なり」である。ゆえに、若き諸君は、あらゆる学問に、生き生きと、粘り強く、取り組んでいっていただきたい。
 ログノフ博士は論じておられた。
 ″人間の脳には、大脳皮質だけでも、百億以上の神経細胞(ニューロン)がある。しかも、その一つずつに、およそ二千個の連結部分(シナプス)があるとされる。したがって、百億の二千倍ものシナプスがある。ゆえに、脳が織りなすネットワークの組み合わせは、現在、知られている「宇宙の中の物質をつくる粒子の総数」よりも大きいといってよい″と。
 諸君の若き頭脳には、宇宙大の無限の可能性が広がっているのである。
 では、その脳の創造的な力を発揮していくためには、どうすればよいか。ログノフ博士も言われるように、それには「頭脳を絶えず働かせ続けていくこと」、これ以外にない。
7  牧口先生は、獄中でも、カントの哲学を精読し、戸田先生も獄中にあって、微分・積分、また数学史などの研鑚に挑んでおられた。
 信念の闘争のなかで学び、また学びながら、闘争を貫いていく。この努力と執念を、諸君には忘れてもらいたくない。これからは諸君の時代なのだから。
 また仏法では、菩薩の一つの働きとして、「観世音」――世の音を観ずる――という点をあげている。時代や社会の動向を鋭く見つめ、つかむ。先取りしていく。そういう英知が不可欠である。
8  戸田先生が逝去される一年ほど前、私は、当時の科学の粋を集めた国際見本市を視察し、その様子を先生にご報告をした。科学者でもある先生は、じつに興味深そうに、私の報告を長時間、じっと聞いてくださった。そして一言、「『科学と宗教』について、考えていくんだな」と、指導があったのである。
 この戸田先生のたった一言を、私は、真剣に思索し、実践してきた。師匠の一言には千万言の重みがあるからだ。その大いなる結実が、ログノフ博士と発刊した、対談集『科学と宗教』(一九九四年五月、潮出版社刊。本全集第7巻収録)なのである。
 博士が「量子力学」を語れば私が「円融の三諦論」を、また博士が「場の理論」を語れば私が「空の概念」を論じるなど、現代物理学の最前線が、仏法の深遠なる哲学と深く共鳴しあっていることも語りあった。
 科学と宗教は、決して対立するものではない。なかんずく、仏教と科学は矛盾しない。
 科学と宗教が、相補い、協調しあっていくなかにこそ、人類の幸福と繁栄へ、大いなる価値創造の道が開かれることを、博士と私は確認しあったのである。
 二十世紀は、いわば「戦争と平和」の世紀であり、「政治と経済」の世紀であった。来るべき二十一世紀は、「人間と文化」の世紀、そして「科学と宗教」の世紀となっていくであろう。
 この新しきヒューマニズムの大道を、諸君は若き「行動する哲学者」として、颯爽と、悠然と、闊歩していっていただきたい。
9  平和の新世紀へ、友情の並木道を
 ご存じのように、ロシアは、第二次世界大戦において、最も多大な犠牲を払った国である。
 凶暴なナチスが、襲いかかった。その最大の苦難のなか、女性の身で、志願兵として前線の部隊でナチスと戦った、尊き美しき乙女が、ログノフ博士の偉大な伴侶であられたアンナ夫人である。
 アンナ夫人は、昨年、亡くなられた。私と妻は、ご夫人の記念の桜を、牧口庭園に植樹させていただいた。古来、木を植えることは、命を植えることに通ずるからである。
 アンナ夫人の桜は今、馥郁と咲き香っている。きょうは、ご夫人と同じお名前で、その気高い心を受け継いでおられる、お孫さんのアンナさんもお越しくださった。
 どうか、未来部の皆さんは、ともに手をとりあって、新世紀のロシアと日本の美しき友情の並木道、人生の並木道を、仲良く楽しく歩んでいっていただきたい。
10  ログノフ博士と私は、戦争の悲惨さを、本や映画などを通して訴えていく重要性についても語りあった。戦争体験を決して風化させてはならないからである。
 先日(三月十八日)、創価大学の卒業式でご紹介した「人間の翼」(監督・岡本明久氏、原作・牛島秀彦氏)という映画を、私も深い感動をもって拝見した。
 数え年・二十四歳の若さで特攻隊に散った名投手、石丸進一青年を描いたドラマである。
 戦争は、石丸青年から、大好きな野球を奪い、青春を奪い、生命を奪った。石丸青年は、戦争への怒りを込めて、最後のキャッチボールをしてから、特攻機に乗り込んでいったのである。
 映画は、残された父親が大空を見上げて、「進一が帰ってきた!」と叫ぶシーンで、幕を閉じる。
 それは、石丸青年の生命が、「平和への限りない決意」となって、私たちの心に生き続けていく象徴であると、私は見たい。
 仏法では、生命は永遠であり、生死は不二であると説く。ログノフ博士も、亡くなられたご夫人、そして最優秀であられたご長男の生命を抱きしめて、平和のため、人類の向上のために生き抜いておられる。私の胸にも、戸田先生が、いつも、また常に、ご一緒である。
11  かつて、ログノフ博士は、大文豪トルストイの言葉を引いて、凛然と語られた。
 「心のふれ合わない、腹黒い人々が、連合軍を作って行動し、民衆に悪をもたらしているとしたら、世界の平和と善意を望む人が、団結し、力を合わせて、悪に対抗すればよい。何と簡単で真実なことか!」
 このトルストイの言葉のとおり、私たちも立ち上がりましょう!(拍手)
 この正義と人道の連帯を、諸君は希望に燃え、勇気をもって、朗らかに毅然と広げていっていただきたい。
12  ″仏法は勝負″の「実験証明」を
 科学は「実験証明」である。実験して、結果が出るか、どうか。
 日蓮仏法もまた、「現証にはすぎず」――現証に勝るものはない――と説く。こういう宗教は、ほかにない。牧口先生、戸田先生も、よく「実験証明」と言われた。
 ゆえに、わが学生部の諸君は、一年一年、「″仏法勝負″の実験証明」「学問の実験証明」を成し遂げていただきたい。それが後継の証となることを忘れないでほしいのである。(拍手)
 結びに、偉大なる「高エネルギー物理研究所」のますますのご発展を心からお祈りし、そして、敬愛するログノフ博士ご一家に永遠の幸福あれ! と申し上げて、私の謝辞とさせていただく。
 スパシーバ!(ロシア語で、ありがとうございました)
 (創価大学記念講堂)

1
2