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日蓮大聖人・池田大作

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第二十一回SGI総会(第2日)(2) 「指導者革命」の模範の皆さま

1996.6.23 スピーチ(1996.6〜)(池田大作全集第87巻)

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2  昨日の「総会第一日」では、初の「世界女性平和会議」が開催され、新しい歴史を開くことができた。全世界の婦人部・女子部の皆さま、おめでとうございます。
 チリの「人道詩人」と、たたえられ、中南米で初のノーベル文学賞を受けた詩人に、ミストラル女史がいる。女史は、コロンビア大学(アメリカ)でも教鞭を執ったことがあり、深き慈愛で、学生を育んだ人間教育者としても知られる。
 女史は、美しくうたい上げている。
 「肉親でない子どもたちを守り、愛していく中で、実の母親以上の母にしてください! 私の子どもたちを、私の最も完璧な詩と歌わせてください!
 そして、私の歌声が消えた後にも、その子どもの心の中に、私の最も美しいメロディーが残るようにしてください!」(``Beauty and the Misson of the Teacher'',WILLIAM J. CASTLEMAN, Exposition Press)と。
 私たちも、また、こうした心で、青年部を、未来部を慈しみ、育ててまいりたい。皆さまが、それぞれの地で、後輩を自分以上に立派に育て上げながら、見事な人生の総仕上げを果たしていかれることが、私の願いである。
3  皆さまは、それぞれの社会、地域にあって、無償で、大勢の仏子のことを、わが子のごとく祈り、守り、尽くし、励ましておられる。その姿は、まさに、偉大なる菩薩の振る舞いであり、尊き仏の境涯に通じる。
 御書には「いよいよよ実なれば位いよいよよ下れり」――教えが正しいほど(功徳が大きいので)、修行の位や機根の低い人たちも救うことができる――とある。
 これは「法」について述べられているが、「指導者」に約していえば、信心が深まるほど、同志を敬い、より多くの人に尽くしていかねばならない、と拝することもできよう。
 因果の理法に照らして、今、多くの人々を大切にし、面倒をみた福運によって、生々世々、多くの人々に守られ、支えてもらえる境涯となる。今世の仏道修行は、生々世々、大指導者となりゆく修行なのである。
4  牧口先生も、『創価教育学体系』において、「指導者革命」を提唱されていた。すなわち、民衆が、権力者が生きのびるための″手段″にされる時代を終わらせなければならない。そして、自己の生活を捧げ、民衆に貢献していく新たなリーダーを陸続と輩出していかねばならない、と。
 リーダーは、いわゆる「上に立つ」人ではない。ましてや、「自分は特別」とし、民衆を見くだすなどということは、論外である。皆の中に入っていこう、皆を尊敬していこう、皆から謙虚に学んでいこうと思った瞬間に、偉大な指導者へと出発できる。ここに、牧口先生の「指導者革命」の一つの焦点もあった。
5  だれよりも祈り、学び、たたえるリーダーに
 アメリカの、ある興味深い研究では、時代遅れの組織を「バッファロー(野牛)の群れ」に譬えている。(``FLIGHT OF THE BUFFALO'', JAMES A. BELASCO & STAYER 参照)
 バッファローの群れは、一頭のリーダーに皆が従い、リーダーの思いどおりの所へ行き、思いどおりのことをする。つまり、リーダーの指示を、ただ待つだけというのである。
 バッファローにはそれが最良の生き方であっても、人間の組織がそうなってしまえば、もはや烏合うごうの衆である。結局、こうした組織は、時代の変化に対応できず、衰退していくしかない。
 反対に、成功する組織の例に、「雁の飛行」が挙げられている。雁の群れの飛行は「V」の字の形をなしている。「V」の要となって、群れをリードする役割を、雁は、皆でひんぱんに交代しながら飛ぶというのである。
 すなわち、それぞれが責任者であり、平等であり、団結していくというモデルである。こうした組織こそ、新しい時代に勝ちゆく組織と論じられている。
 そこから、指導者の心がけるべき点として強調されるのは、次のようなポイントである。
 (1) 各自が、進んで責任を引き受け、リーダーとしての自覚がもてるような環境をつくる。
 (2) 「リード」することは、まず自分自身が「学ぶ」ということである。そして、皆も学ぶように勧める。皆が学んでいくことが、成功の秘訣である。
 (3) リーダーである自分が変わるところから、組織の建設的な変化が始まる――ことを自覚する。
6  会員のため、広布のためなのか、それとも、自分中心で学会と会員を利用しているのか。その、目には見えない一念の差は、やがて大きな違いとなって現れる。
 戸田先生は言われた。
 「きょう、ここに集った人たちは、学会の幹部であり、自分自身が幸福になると同時に、自分の指導している人たちが幸福にならねばいけないと考えている人ばかりだと思います。自分が幸福になるぐらいは、なんでもない。簡単なことです。
 他人まで幸福にしていこうというのが、信心の根底です。そのようにまっすぐに御本尊様を拝んで、信心を強くし、信仰のためには、何もいらないという気がなければ、本当の指導はできないと思う」(『戸田城聖全集』第四巻)と。
 どうか、リーダーとして、″皆を断じて幸福にしてみせる″″皆を必ず勝たせてみせる″との誓願を、炎のごとく燃やしていただきたい。
7  具体的には、リーダーは、メンバーをほめたたえ、励ますことが大事である。感情で怒ったり、どなったりするようなことは、決してあってはならない。
 御書には「讃する者は福を安明に積み謗ずる者は罪を無間に開く」――(法華経を行ずる人を)讃嘆する者は、福徳を須弥山のごとく積み、誹謗する者は無間地獄に堕ちる罪を犯す――との伝教大師の言葉を引いておられる。
 仏法の因果の法から見るならば、仏子をいじめた人間の末路は実に厳しい。峻厳である。
 反対に仏子をほめたたえていく人は、王者の山であるヒマラヤのごとく、揺るぎない大福運の人生を築くことができる。
 また大聖人は仰せである。
 「法華経の功徳はほむればいよいよ功徳まさる、二十八品は正き事はわずかなり讃むる言こそ多く候へと思食すべし
 ――法華経の功徳は、ほめれば、いよいよ功徳が多くなる。法華経二十八品は、教えそのものはわずかである。ほめる言葉こそ多くあると、知っておかれるがよい――。
 まず「ほめること」である。人間である以上、さまざまな感情の起伏があるのは当然である。
 だからこそ、リーダーは、たとえば、開口一番、「サンキュー!」「ご苦労さまです!」と気持ちよく、皆に声をかけていく心がほしい。そうすれば、相手も自分も、すがすがしい。喜びが広がり、功徳が増していく。
8  ここに「地球民族主義」の縮図
 この会場には、多様な言語、民族、文化の方々が集われている。まことに麗しき地球家族の集いである。戸田先生の提唱された「地球民族主義」の偉大な実証がここにある。
 アメリカのデラウエア大学の教授で、『創価教育学体系』の英訳にも尽力してくださった故ノートン博士が、光栄にも私に捧げてくださった遺著(IMAGINATION, UNDERSTANDING< AND THE VIRTURE OF LIBERALITY'' 〈想像の力、理解の力、寛容の徳〉)の中で、こう論じられていた。
 「私のいう寛大さの徳とは、自分が信じている以外の真理や価値をも認めるように培われた心のことである」
 「他国を無視することは、もはや不可能である。人類が直面している課題は、地球的規模のものであり、有望な解決を図るとすれば、互いに影響しあう協力が必要となる」と。
 だからこそ博士は、SGIが築いている「民衆の連帯」に深い期待を寄せておられた。
 なお、コロンビア大学での講演の際、博士の令夫人である、お元気なメアリー女史とも再会でき、私も妻も大変にうれしかった。ひとたび結んだ縁を、私たちは永遠に大切にしていく。
9  SGIは「社会の善なる団体」
 「カルチャー(文化)」の語源は、ご存じの通り、″カルチベート(耕す)″である。
 仏法の実践もまた、生命の「開拓」、精神の「開拓」作業である。その意味で、仏法と文化とは表裏一体である。SGIは、人類の「平和の沃野」「友情の花園」を開拓しゆく大文化運動を、さらに力強く展開してまいりたい。
10  ここフロリダ総合方面は、これまで多大な文化交流、社会貢献に尽力してこられた。その尊き行動は、くわしくうかがっている。心からの敬意を捧げたい。
 (地元の環境保護団体として、セミナー、教育展などの開催を重ねてきた。四年前、フロリダを襲ったハリケーンの時にも、地域の救助と復興へ大きく尽力している。なお、アメリカSGIの国連支援をたたえる「特別表彰」が、国連協会のマイアミ都市圏ならびにブロワード郡支部から贈られている)
 サイモン・ウィーゼンタール・センター(ロサンゼルス)での講演(「牧口常三郎――人道と正義の生涯」)でも言及したが、牧口先生は「社会に利益を与えることが善である」と定義し、宗教の存在意義も、そこにあるとしていた。
 社会貢献こそ、SGIの根本精神である。
 そこで、最後に一つ提案をしたい。「SGI」という名称について、内外の多くの方にわかりやすく、親しみやすい愛称を考えてはどうか。
 たとえば、SGIは、「ソーシャル(S)・グッド(G)・インスティテューション(I)」(社会の善なる団体)を一つの合言葉としてはどうだろうか。
 社会に大いに貢献し、信頼の輪を力強く広げるところにこそ、広宣流布の脈動がある。
11  ドイツの文豪・シラーは語った。
 「人間の内面が明るくなれば、周りの闇も速やかに消え去っていく。また、内面が穏やかになれば、宇宙の嵐も静まり、自然界の競いあっている勢力も、互いの休息の地を見いだし、調和がとれる」と。
 混迷を極める暗い世紀末の世相にあって、わがSGIこそ希望の光明である。
 すべては、一人の人間革命から始まる。まず自らが、人生に勝ち、生活に勝ち、社会に勝っていく。そして、自身が光り輝く存在となり、周囲を、地域を、国土を、人類を明々と照らしてまいりたい。
 結びに、お世話になった役員の皆さまに、衷心より、感謝申し上げたい。サンキュー! シー・ユー・アゲーン(また、お会いしましょう)!

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