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日蓮大聖人・池田大作

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中部文化友好祭 「大いなる人間」の時代へ旭日は昇る

1991.10.20 スピーチ(1991.10〜)(池田大作全集第79巻)

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1  正解に広がる友情と理解の絆
 大成功、大勝利の「文化友好祭」、本当におめでとう。
 皆さまが、限られた時間の中で工夫をこらし、さまざまな制約のなかで素晴らしい創造性を発揮して、これほどの見事な祭典をつくりあげられた。これこそ文化である。知恵である。
 家族的な″人間味″あふれる楽しき広場──学会の新思考の文化祭の模範を、中部の皆さまが象徴的に示してくださったと思う。
 本日は、世界五十三カ国・地域からSGI(創価学会インタナショナル)の友が集われている。また来賓として、岐阜薬科大学の堀幹夫・前学長が出席されており、心からお礼申し上げたい。
 さらに、アメリカから来日されたデラウェア大学教授のデービッド・ノートン博士ご夫妻も、出席しておられる。
 ノートン博士は、著名な哲学者で、初代会長牧口先生の教育学説に共鳴されて、ベセル博士とともに牧口先生の『創価教育学体系』の英語版発刊に尽力してくださった。そのさい、ノートン博士は、「牧口氏の指摘した教育の病弊びょうへいは、今日のアメリカおよび西欧諸国にも存在し、これは、彼の改革案の深淵さと永続性を立証するものである」(英語版の解説)と、牧口思想を高く評価されている。
 また、この英語版の編集・英訳監修に当たられた、アメリカ・インターナショナル大学教授のデイル・ベセル博士ご夫妻も出席されている。
 ベセル博士は、比較教育学の権威で、創価教育学研究の第一人者として、牧口先生の思想と業績を長年にわたり研究してこられた。その博士論文は「牧口常三郎の生涯と思想」であり、『価値創造者牧口常三郎の教育思想』の著書もよく知られている。
 牧口思想を世界に宣揚してくださっているノートン博士、ベセル博士ともに、学会にとっても、また創価大学にとっても、大切な理解者であり、深く敬意を表したい。
 さらに中国大使館からは、唐家璇とうかせん公使ご一行がおいでくださった。。唐公使は、私が一九七四年に第一次訪中をした折、李先念副総理との会見の通訳をしてくださった。私の古い大切な友人である。
 公使は、外交部時代、周恩来総理の通訳をされるなど、日本語が堪能であられる。これまでも創価大学、富士美術館、民音等の活動を支援し、積極的に参加してくださっており、謹んでお礼申し上げたい。
2  父子一体の″魂の継承″で偉業を
 また本日は、インド文化国際アカデミー理事長のロケッシュ・チャンドラ博士ご夫妻が出席されている。この席を借りてチャンドラ博士とお父さまについて、少々ご紹介したい。
 チャンドラ博士の父君・ラグヴィラ博士は語学に造詣が深く、特にサンスクリット語の世界的権威として知られ、インド文化の再発見のために尽くされた。父君はそのためにアジア各地を広く旅された。また、インドの独立運動のために身を投じた「知性」と「行動」の人であられた。
 第二次大戦中には敵国の日本語を教えていたという理由で、イギリス政府から親日派として投獄されている。また、ロシア語を教えていた時には、共産主義のスパイと疑われ、投獄された。混迷の時代であるほど、悪しき社会であるほど、時代変革の「先駆者」「正義の人」には、妬みの風と迫害の策動が襲いかかってくる。嵐の大きさが偉大さの証明なのである。
 ラグヴィラ博士は惜しくも一九六三年に事故で亡くなられたが、その波乱の人生にあって、徹して自身の「信念」に生き抜かれた。そして、その崇高なる精神を継いで立たれたのが子息のチャンドラ博士である。
3  ところで父君・ラグヴィラ博士は、インドの詩聖タゴールとも親しかった。タゴールは、ラグヴィラ博士の仕事を賛嘆していた。
 タゴールは自身の父(デベーンドラナート)のことを「ひとりの敬虔けいけんな魂」と呼び、心から尊敬していたというが、いま、ラグヴィラ博士の子息であるチャンドラ博士は父の夢を継ぎ、その実現へ進んでおられる。父君の創立した「インド文化国際アカデミー」の理事長として同アカデミーの平和・文化・教育の事業、なかんずく、人類の精神遺産の研究・宣揚に尽力されている。
 私にとっても、同アカデミーから栄えある「一九九〇年ラグヴィラ賞」を授与されたことは、生涯の誇りである。(仏教の最高峰・法華経の価値観を世界に宣揚した″ことをたたえ授賞)
 また、父君が発案した「シャタピタカ(百蔵)」シリーズ(インド・アジアの文学の集大成)の発刊も、現在で三百数十巻という大事業となっている。
 私は、こうしたチャンドラ博士のお姿に、高尚なる精神と不動の信念をともにする″偉大なる父と子の魂の継承″の劇を見る思いがする。「父子一体」の偉業のますますの発展を祈りたい。中部の若き諸君も、この博士の姿から何かを学んでいただきたい。
4  詩聖・タゴールの「大いなる人間の出現に勝利あれ」
 今年はインドの詩聖タゴールの没後五十周年──。タゴールは私の青春の愛読書であった。
 第二次世界大戦の暗い時代にあって、死を前に、タゴールは、高慢な、また無礼な旧勢力が瓦礫となって崩れゆくのをあちらこちらでの当たりにする。しかし、それでも彼は「人間」への信仰、大信頼の心だけは絶対に手放さなかった。
 詩聖の″創造と思索の生涯″の到達点──それはやはり「人間」であった。「人間」をこそ尊敬し、その聖なる内面を礼拝した。これは仏法の本来の精神にも通じる。
 大動乱が過ぎ去ったあとのすがすがしい大気のなか、「希望の旭日」が昇りゆくことをタゴールは確信していた。いつの日か、新しい「自由なる人間」の群像が出現し、失われた人類の遺産を取り戻すために、あらゆる障害を乗り越えて進んでくれるだろう、と。
 諸君こそ、その「新しい人間」であると確信する。
5  彼は、そうした「大いなる人間」の出現を歓迎する歌を残している。題して「最後のうた」。死の直前まで書かれた詩集である。その一編をご紹介したい。
  おお大いなる人間がやって来る──
  あたりいちめん
  地上では草という草がふるえる。
  天上には法螺貝ほらがいが鳴り響き、
  地上には勝利の太鼓がとどろく──
  大いなる生誕のよろこびの瞬間ときが来たのだ。
  今日暗き夜の要塞ようさいの門が
  こなごなに打ち破られた。
  日の出の山頂に新しい生命への希望をいだいて
  おそれるな怖れるなと、呼ばわる声がする。
  人間の出現に勝利あれかしと、
  広大な空に
  勝利の讃歌さんかがこだまする。
  (「最後のうた」森本達雄訳)
6  暗き夜のような″権威の門″″傲慢の門″″人間蔑視の門″は破られた。新しい自由な人間の出現に勝利あれ──。
 どこまでも「人間」である。大聖人の仏法も、その目的は「人間」の幸福である。
 どうか、中部の皆さま、そして私どもSGIは、この人間の勝利の賛歌を高らかに歌い続けていきましょう、と申し上げ、スピーチを終わります。きょうは本当におめでとう!

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