Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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アメリカSGI青年研修会 皆さんは社会と人間の開発者に

1990.2.14 スピーチ(1990.2〜)(池田大作全集第74巻)

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2  私は次の世代の知性派のリーダーをつくりあげておきたい。皆さんは、仏法を根本として、広く知識を学び、深き人生観、社会観、宇宙観を身につけていただきたい。それが、自分自身の内奥に、すばらしき境涯の広場、花園をつくりあげ、自在の知恵をわかせ、無限の指導力を発揮していける源泉となるからである。
 人々の心に巣くっていた古い「常識」が打ち破られ、新しい「常識」が生き生きと語られ始めるとき、時代は変わり、世界は変わる。
 地動説もコペルニクス以前は″非常識″であった。進化論もダーウィン以前は″非常識″であった。しかし今は「常識」である。仏法もまた、今は多くの価冠や無理解がある。しかし必ずや時とともに、人類の「常識」になっていくにちがいない。その時が広宣流布である。
 仏法はあまりにも先駆的であり、あまりにも偉大であるゆえに、今はなかなか理解されない。あえてたとえれば、子どもにダイヤモンドを見せても、その価値はわからない。仏法の偉大さは、人間の英知が進めば進むほど、明らかになっていくことを確信してほしい。(拍手)
3  独立革命とベインの「コモン・センス」
 かつてアメリカ独立革命において、まことにドラマチックな大転換を成し遂げた一冊のパンフレットがある。それは、わずか五十ページほどの小冊子であった。著者も無名の庶民であった。しかし、この一冊のパンフレツトがアメリカを変え、世界を変えた。
 そのタイトル(題名)はご存じのとおり、『コモン・センス』(トマス・ペイン著)――。日本では一般に「常識」と訳される。ある意味で「コモン・センス」は、仏法で言う「道理」にも通ずるといえよう。
 そのタイトルに象徴されているように、この一冊のパンフレットは、植民地の古い常識(コモン・センス)に縛られ、萎縮し、臆していた人々の心を一変させた。
 独裁や世襲などの悪しき権威・権力に屈してはならない。「自由」と「独立」の道へと勇んで踏みだすことこそ、新しい、また正しい「コモン・センス」である、と。
 このパンフレットは、わずか数力月で十万部以上も出版されたといわれる。これは現代で言えば、六百万部を超えるベストセラーとなったに等しい。(計算の仕方により、それ以上ともされる)
 言論の力は、まことに大きい。この″自由への声″が人々の胸に火をつけた。
 今、私たちは「生命の世紀」――全人類が「平等」に、真実の「幸福」と「自由」を満喫する新世紀をめざしている。仏法という根底的な、生命の「コモン・センス」を高らかに掲げて、みずから行動し、主張しているのである。(拍手)
 その歩みは、平坦ではない。大きな山に登りゆく苦労がある。しかし仏法には無駄がない。苦労した分だけ、わが永遠の生命に黄金の日記文書がつづられ、きざまれていく。(拍手)
4  ところで、このパンフレットの著者「トマス・ペイン(一七三七年〜一八〇九年)が、みずから一志願兵として、独立の戦いに身を投じたことも有名なエピソードである。
 彼は当時三十九歳。総じて青年部のリーダーの年代である。
 私は、「志願」の尊さに着目する。いかなる世界にせよ、自発的な志願にこそ、自立・独立の精神があり、他人に言われて動くのは、精神の奴隷である。
 広宣流布も、みずからの久遠の誓いのままに志願した自立の勇者によって進められる。みずから志願した以上、その人には愚痴がない。文句もない。障害が大きいほど、勇気がわく。知恵と力がわく。
5  「戦いが苦しいほど勝利は輝く」
 当時、ワシントン将軍(のち初代大統領)率いるアメリカ軍は重大な窮地に立たされていた。勢力は圧倒的に劣っている。敗走につぐ敗走。後退につぐ後退。兵士の中にも脱走する者が後を絶たなかった。
 そうした大苦戦のなかに、あえてペインは身をおいた。そして、ある厳寒の冬の晩、野営(野外の陣地)のかがり火のもとで、何かをつづっていた。
 それは、「今こそ人間の魂にとって試練の時である」との有名な一文で始まる「アメリカの危機」という文章である。(『コモン・センス』小松春雄訳、岩波文庫)
 彼は問いかける。この勝敗を賭けた危機に臨んで、しり込みするか、それとも今この時に踏みこたえ、反撃に転ずるか、と――。
 そして「暴政は地獄と同様に容易に征服することはできない。しかしわれわれには戦いが苦しければ苦しいほど、勝利はますます輝がしいという慰めがある」(同前)と。
 どんな戦いも勝利は容易ではない。容易であれば、むしろつまらない。日本のスモー・レスラー(力士)が、子どもに勝っても、少しも偉くない(笑い)。厳しい条件のなかで戦い、勝ってこそ、その勝利は偉大なる歴史として、燦然と輝くのである。(拍手)
6  その年の暮れの吹雪の日、ワシントン将軍は、兵士たちを集める。敗退につぐ敗退で意気を喪失し、疲れきった兵士たち。ワシントン将軍は、戦いの第一線に立つ兵士たちに、この文章を読み聞かせることにした。
 兵士たちの心に熱いものが走った。正義の戦いへの息吹が蘇った。ペインが激戦の渦中から発しつづった魂の叫びが、一人一人の兵士に限りない勇気と希望の力をあたえたのである(拍手)。こうしてアメリカ軍は大攻勢に転ずる。凍てつく川を越え、クリスマスに酔いしれた敵の兵士を一気に打ち破った。そして、この戦いが大きく流れを変え、やがて独立の勝利へとつながっていった。
 いかなる戦いにおいても、指導者が人々に何をあたえていくかが大事である。広布のリーダーである皆さん方は、妙法の同志に、「信心」の勢いを、「生命」の勢いを、「人生」の勢いをわきいだすような励ましをお願いしたい。そして、諸天善神がますます威光勢力を増しゆく信心の戦いであっていただきたい。
7  ″道理″の力が時代を変える
 大聖人は、信心のゆえに理不尽な圧迫を受け、たいへんな苦境に立たされていた四条金吾に対し、こう励ましておられる。
 「仏法と申すは道理なり道理と申すは主に勝つ物なり
 ――仏法というものは道理をもととするものである。道理というものは主君のもつ悪しき権力にも必ず勝つのである――と。
 仏法は最高の道理である。いうなればもっとも深く、もっとも普遍的な「コモン・センス」を説ききっているのが、この仏法である。
 仏法は、宇宙の究極の法であり、幸福への最高の法である。この仏法を信受したことは、わが生命に幸福の種子を植えたことである。ゆえに、怨嫉や退転によって、幸福の種子を捨てたり、煎ってダメにしてはならない。
 ともかく、何があっても題目を唱えぬいていくことだ。良いときも悪いときも、喜びのときも悲しみのときも、楽しいときも苦しいときも、題目を唱えていけばよい。その人こそ、生活の勝利、人生の勝利、社会の勝利を勝ち取っていけるのである。
8  なお、本日の研修を記念して、創価大学の重宝の中から、何点か紹介させていただきたい。ナポレオンの書簡集、アインシュタインがユダヤ人の団結をベルリンから呼びかけた手紙、ホイットマンのサイン入りの詩集『草の葉』の初版本など、ごく一部であるが、後ほどご覧になっていただきたい。
 最後に、広布の未来は、すべて皆さんに託す以外にない。私は皆さん方のご多幸を祈りたい。健康を祈りたい。そして一生涯、皆さん方に題目を送り続けていきたいと申し上げて、本日の記念のスピーチを終わらせていただく。
 (創価大学ロサンゼルス分校)

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