Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第七章 庶民の“灯台”として  

「太陽と大地開拓の曲」児玉良一(池田大作全集第61巻)

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3  働く喜び
 池田 家ではほかに、どんなことをされるんですか。
 児玉 まあ、とにかくできることがあれば、何でもやります。大工のまねもすれば、左官をやったり、鍛冶屋もやってみたり。(笑い)
 池田 やはり、いくつになっても働けるということは、すばらしいことですね。
 児玉 でも、じつを言うと、家にいて修理とか修繕とか、必要に迫られるもんでね。自分でやらなかったら、職人を雇ってしてもらわなくちゃいけない。自分の家ですから、やはりできることは自分でしないとね。(笑い)
 池田 では、働くことに年齢は関係ないと。
 児玉 自分のことを振り返ってみると、とにかく働かないと困ってしまう状況でしたから、年とか関係なかったですね。まあ、体の頑張りがきくのは、三十代から五十代まででしょう。私も運転手の仕事をしてたのが、五十歳代まででしたから。
 池田 人間、働ける時に思うぞんぶん働かなければ悔いを残しますね。これは日本の壮年の人たちにもよく話します。(爆笑)
 運転手のあとは、どんな仕事をされたんですか。
 児玉 そうですね。養鶏をしたりしました。それと、子どもと一緒に住むようになってからは、レンガを作ったりとか。当時、ブラジル人が新しくレンガを作ったという話を聞いたもんで、見にいったんです。それで寸法を測ったりして同じものを作ってみた。われながら立派なものができましたよ。(笑い)
 レンガ作りには、乾燥させる場所が必要なんです。ところによっては野外でもできますが、たいていは大きな蔵ですね。レンガを並べるところの幅が十メートル、奥行きが三十メートルぐらいですかね。
 池田 なるほど。いつも新しい勉強を忘れない。
 児玉 やっぱり、男の生きがいは仕事ですよ。そして仕事に成功すること。人間は、仕事を通して自分の力や価値を発揮するものだと思うんです。
 でも、まあ、何歳まで働けるかとなると、これは本人の意志の問題ですよね。心身ともに健康であれば、年に関係なく働ける。たとえ外で働けないにしても、何もやらないと“ボケ”ちゃいますよ。(笑い)
 池田 たしか、前にお話しした昔の日本の医書にも「身体は少しずつ労働すべし。久しく安坐すべからず」とありました。のんびり座ったままでなく、少しずつでも体を動かしていく――児玉さんは、まさにこのとおりに実践されている。だから体もお元気で精神的にも充実しているんですね。
 高齢者と仕事の問題は、日本の将来にとっても大きな比重を占めるテーマです。高齢の人たちに対して“家のことも気にしないで、のんびりしてほしい”と言うのは、家族として自然な心情かもしれません。しかし、それが極端な場合には“あんまり、うろうろしないで。おとなしくしてて”となってしまう(笑い)。いくら大事にされても、これでは、たまりませんよね
 。(大笑い)
 児玉 私も、年寄りだからと特別扱いされるのはいやですね。(笑い)
 池田 福祉の充実や、高齢者に対する地域・家庭の理解。そして高齢者自身が近隣の人々や家族とかかわりながら、人生に「生きがい」を見いだせる社会を、どのように築いていくか――。私はよく、恩師戸田先生から「使命を果たすことによって幸せになるのだ」ということを教わりました。自分の人生にいかなる「使命」を見つけ、「自覚」し、人生をどう完成させていくかを、皆で考えていくべき時代ではないでしょうか。
 児玉 まったく、そのとおりです。
 池田 その意味から児玉さんたちは、ブラジルに生きるたくさんの若い日系の方々にとっても、「庶民の灯台」ともいうべき存在です。だからこそ、さらにご長寿であっていただきたいという思いでおります。
 児玉 ありがとうございます。

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