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日蓮大聖人・池田大作

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SGI欧州アフリカ諸国会議 広布の組織は民衆の大地潤す大河

1987.6.6 スピーチ(1986.11〜)(池田大作全集第68巻)

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2  私は今回で、十一回目のフランス訪問となるが、先日、初めて、セーヌ川を、青年や婦人部の代表の方々と一緒に遊覧する機会があった。
 この悠久ゆうきゅうなるセーヌの流れは、パリの都を、この地に誕生させ、二千年にわたって発展、成長させた原動力となってきた。そもそもパリは、セーヌ川に浮かぶシテ島を発祥の地とし、船の交易によって栄えてきた。とともに、セーヌ川は人々の心にも大きな影響を与え、フランスの芸術をはぐくんできた母なる川といわれる。
 セーヌ川の水源は、パリ盆地南東部のラングル高原の標高四七一メートルの地点にある。川の全長は七七六キロ。傾斜がなだらかで、水量の豊富な、安定している大河川である。
 このセーヌ川は紀元前後には「セクバナ川」と記録されている。セクバナという古名は″ゆったりした川″を意味するケルト語に由来するといわれる。まさに、その名の通り、悠然とフランスの大地を潤し、人々の心に安らぎと豊かさを与えてきたのが、セーヌ川であるといってよい。
3  ″組織″は信心の向上と深化のために
 広宣流布は、一面から言えば″流れ″それ自体である。その、とうとうたる″流れ″の道を開いていくために、私どもの信心向上の「組織」がある。
 たとえていえば、広宣流布のための組織も、このセーヌ川の姿に似ているといえるかもしれない。広布の組織は、人間の「生命」という大地を、無限に潤し、耕していく。そして、一人一人の心に安心と触発と力とを与えてくれるからである。
 会議の開催地がフランスであったのでセーヌ川を例にあげたが、中欧から東欧に流れるドナウ川、イギリスのテムズ川、ドイツのライン川、またアフリカのナイル川にも、同様なことが言える。
4  ところで組織は慣れてしまうと、その重要性を深く感じなくなるものである。それは、ちょうどパリの方々にとって、セーヌ川があまりに身近すぎて、その恩恵に対する感謝の心がうすらいでくるようなものといえよう。
 しかし、かのナポレオンが、セント・ヘレナの孤島で寂しく没した時、その遺言には「セーヌのほとりに埋めてほしい」とあったという。そのように、離れて独りぼっちになった時に、そのありがたさをしみじみと感じるのが、信心深化の「組織」なのである。
 かつてフランスの歴史家であるミシュレは、その著『民衆』の中で、次のように論じている。「生命は生命と出会うと輝き出て、磁気をびるが、孤立すれば消え入ってしまう。生命は自らとは異なった生命とまじりあえば、まじりあうほど、他の存在との連帯を増し、力と幸福と豊かさを加えて生きるようになる」(大野一道訳、みすず書房)と。
 ここには、人間と人間が集いあうことの意義が、端的に示されている。学会が広布の組織をもち、大事にする意味もここにある。こうした次元から見ても、学会は最先端をいっていることがおわかりいただけると思う。
5  そもそも人間の体それ自体が、見事な組織体となっている。目や耳や鼻などの器官、また手や足、さらに心臓、肝臓、胃などの臓器などが互いに連携をとり、補いあいながら、それぞれの力を最大に発揮し、一つの生命体をつくりあげている。もし、各部分の組織的なつながりがなければ、生命体としての完全な機能を果たすことはできない。
 また、人間社会も同じである。特に現代は組織の時代であり、国家も、企業も、あらゆる団体が組織の存在なくして、いかなる前進も、発展も考えられない。宗教界にあってさえ、それが効果的に機能しているが否かは別にして、ほとんどすべてが組織をもっている。
 末法万年へと続く広宣流布を考えるとき、広布の活動を進め、信心を深め、人間革命をはぐくんでいく「組織」という″大河の流れ″を絶対に欠かすことはできないことを認識していただきたい。
6  広宣流布が成就された暁には「組織」は必要でなくなるかもしれない。また、広布が進展し、社会との関係性が変化するのにともない、組織形態も変わっていくにちがいない。各国で、広布の進展と時代社会の状況に応じて、最も適した組織形態を考えていけばよいと思う。それはそれとして、今日、各国で確立されている小さな「組織」が、広布の未来を開いていく源流なのである。
 組織があると、それに縛られ、自由がなくなってしまうと、批判する人がいる。しかし、それは、組織の一面的なとらえ方である。
 信心は一人だけで全うできるものではない。一人だけの信心は、どうしても自分に妥協し、自分本位の修行になってしまう。それでは信心の修行にならないし、強じんな精神、清浄な生命への錬磨はできない。さまざまな人と切磋琢磨せっさたくまし、励ましあってこそ、信心は進んでいくことができる。ここに組織の意義がある。
 組織は本来、人間から出発して、人間に帰着するものである。広布の組織は、人間としての錬磨のため、また、信心を強め、深めていくためのものであることを、よくよく知っていただきたい。
7  一人一人が妙法流布の″源″たれ
 御書に「源に水あれば流かはかず」――源に水があれば、その流れは決してかわくことはない――と仰せである。
 各国の広宣流布の流れにあって、皆さま方、お一人お一人は、妙法流布への尊い″源″の存在である。
 その流れが、悠久の大河へと限りなく裾野を広げていくか、それとも、広布の途上で、わびしくれてしまうか――それは、すべて″源″の存在である皆さま方の信心と活躍で決まるといってよい。その意味から皆さま方こそ、各国の平和と繁栄の未来のために、最も重要な存在であることを確信されたい。
 未来への力強い前進のためには、「団結」こそ肝要である。「団結」なくして、偉大な広宣流布への″源流″となることはできない。ゆえに、何よりも、各国の中心者は、後進の友を、弟や妹のごとく、また親友のごとく、心から大切にしてほしい。そして友の成長のための真心の励ましを忘れないでほしい。もちろん、信心の上の誤りを正したり、確信ある指導は大事である。しかし権威で接したり、感情的な言葉で叱咤することはあってはならない。
 また、中心者も凡夫であるがゆえに、様々な欠点もある。メンバーの方々が物足りなさを感じたり、誤った行き方だと思う場合もあるかもしれない。そのさいは、広く、大きな心で、中心者を支え、時に率直に語り合いながら、足りない点を補い合っていただきたい。ともあれ、仲の良い、異体同心の団結で、広布の大河へと進みゆく、確固たる″源の流れ″をつくりあげていただきたい。
8  本日は、小さな会場での集いとなった。今後、フランスにも、広布の伸展に伴い、大きな会館が建設されていくと思う。その時には、きょうの集いは、良き思い出となって残っていくにちがいない。
 また、ヨーロッパ、アフリカの各国にも、これから、広布の城である会館が建設されていくと思う。それを、発展への節を刻む当面の目標ともしながら、たゆみない前進をお願いしたい。
 皆さま方は、久遠元初にあって広布を誓い合い、それぞれ使命の国土に生まれあわせた″地涌の勇者″である。どうか世界中に確かな広布の軌跡と平和の砦を築きながら、永遠に輝きゆく妙法の功労者として、所願満足の人生を飾っていただきたい。
9  皆さま方は、すばらしき広布の指導者である。大聖人も必ずや御称賛くださるにちがいない。また諸天の加護も絶対にまちがいない。私は、皆さま方のご健勝とご活躍を祈り、題目を送り続けたい。
 今回、お会いできなかったヨーロッパ、そしてアフリカの同志の方々に、くれぐれもよろしくお伝えいただきたいことを念願し、本日のスピーチとさせていただく。

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