Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

アメリカSGI広布30周年記念勤行会 正法は「民主」と「平等」の大法

1987.2.26 スピーチ(1986.11〜)(池田大作全集第68巻)

前後
1  アメリカSGIの栄光の三十周年
 地元ロサンゼルスをがじめ東部やハワイなど全米各地から集った友の遠来の労に対し感謝申し上げる。また、秋谷会長をはじめ日本の代表幹部、さらには各国の同志からも数多くの祝電が寄せられている。世界の友が喜び祝福するなかで、アメリカSGIの三十周年を祝う集いとなったことを心から喜びあいたい。
 アメリカと日本とは、風土も違う。言語も異なる。宗教的な土壌も違う。ゆえに、アメリカの地に妙法は広まるだろうか。アメリカ人が題目を唱えるのだろうか――先駆の友の心には、不安もあり、心配もあったにちがいない。
 しかし、以来三十星霜。ウィリアムス理事長をはじめ、全同志の奔走と尽力により、世界広布の象徴の地・アメリカにも、厳然たる広布の大基盤ができあがった。これも、ひとえに皆さま方の労苦と汗の結晶にほかならない。必ずや御本尊が、また三世十方の仏・菩薩が、その偉業を賛嘆してくださるにちがいない。また功労の皆さま方に諸天の守護があることは間違いないと確信する。
2  歴史をつくりゆく庶民の力
 太平洋を越えての日本とアメリカの交流。その歴史の中で、日米の無名の庶民たちが大きな″懸け橋″の役割を果たしている。
 まず江戸時代末期、不幸にも難破して漂流し、アメリカの捕鯨船や商船に助けられた日本人達がいる。彼らの多くは、当時、身分社会であった日本の中で、最も低い階層の庶民であった。そのうち中浜万次郎(ジョン万次郎)や浜田彦蔵(アメリカ彦蔵)の名は有名である。
 九死に一生を得た彼らは、災いを転じて、新世界アメリカから多くのものを吸収し日本に伝えた。「平等」「民主」「共和」の先進的思想もその重要な一つである。
 また、これとは逆に、あえて″漂流民″といつわり、わざわざ日本に上陸したアメリカ人もいた。
 貿易商のマクドナルドは、日本に大きな関心を寄せており、一八四八年、北海道に上陸した。しかし鎖国中の日本である。彼はただちに逮捕されてしまう。その後、長崎に護送され、囚人として遇されるのである。しかし彼は、とらわれの数カ月間、幕府のオランダ語通訳に英語を教えた。これが日本における最初の英語教育といわれている。その生徒の中から、幕末最高とされる名通訳らも輩出している。
3  こうした人々をはじめ、日米の交流史上、多くの無名の庶民が重要な活躍をしている。上流階層でもない。有名人でもない。一庶民の力の偉大さを忘れてはならない。
 わがアメリカSGIにおいても、ウィリアムス理事長にせよ、ジェームス・カトウ副理事長にせよ、いわゆる世間的有名人ではない。一庶民である。そうした庶民の努力が実を結び、このようにアメリカに仏法の真髄が伝わった。ここに意義がある。
 庶民であるがゆえに庶民とつながり、庶民とともに歩んでいける。また、その「平等」と「民主」の歩みこそ、″民衆の仏法″である日蓮大聖人の仏法の本義に最もかなったいき方なのである。
 マクドナルドが帰国するにあたって、次のようなエピソードが残されている。
 彼はアメリカ軍艦プレブル号に引き渡される時、日本人に質問された。
 「この船の艦長の地位は、アメリカの最高の地位から数えて何番目くらいになるか」
 それに対し、共和主義者のマクドナルドは、具体的説明の前に、大前提として答えた。
 「最高はピープル(人民、民衆)である」と。
 その時の反応をマクドナルドはこう回想している。
 「当時の日本人には、この答えの意味が、まったくわからなかったらしい」
 「人民が最もえらい」という思想は、階級と権威にとらわれた当時の日本人にとって、驚きを超え、その意味を理解することができないほど無縁の思想であった。アメリカの民主主義は、日本のはるか先を走ってきたわけである。
4  それはそれとして、日蓮大聖人の仏法は、最も本源的な「民主」の原理に貫かれている。その一例として、御書には「王は民を親とし」と仰せである。
 「王」とは現代でいえば権力者であり、社会の指導者である。指導者は本来、民衆を我が親として懸命に仕えていくべきである、との仰せとも拝せよう。これは為政者にとっても、また私ども広布のリーダーにとっても、銘記すべき重要な基本である。
 民衆こそ、一切がそこから生まれる「親」である。民衆こそ最も大切な原点である。私は常に、この一点を忘れてはならないと思ってきた。
 いかなる指導者、著名人よりも、いかなる栄誉よりも、皆さま方「仏子」が尊い。折伏・弘教の実践者ほど大切な、尊貴な存在はない。その仏子を最大に守り、支えていくことこそ私の変わらざる心情であり、信念である。また仏法の「民主」の精神に則ったいき方であると信ずる。
5  今後もさらに広布三十五周年、四十周年、五十周年へと歴史を刻むごとに、アメリカSGIの一層の発展を期してほしい。
 最後に、本日の意義を記念して詩「世紀の太陽よ昇れ――アメリカ広布三十周年の門出に贈る」をお贈りし、本日の祝いとしたい。

1
1