Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第1回SGIパン・アメリカン諸国会議 広布新世界への船出

1987.2.14 スピーチ(1986.11〜)(池田大作全集第68巻)

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1  ″広布のコロンブス″たれ
 第一回「SGIパン・アメリカン諸国会議」の盛大な意義ある開催を、心から祝福したい。本日、集った皆さまは、世界広宣流布の先駆者であられる。
 南北アメリカ大陸――いわゆる″新世界″を発見した先駆者コロンブスは「世界の海の提督ていとく」と呼ばれた。また「海の王者」とたたえられた。
 皆さま方は、妙法流布による平和の″新世界″へ船出した、いわば「広布のコロンブス」であり「妙法のコロンブス」である。「世界広布の提督」であり、「世界広布の王者」であられる。
 いな、仏法の説く「三世永遠」という生命の次元に立てば、皆さま方はコロンブス以上に尊き、大英雄である。コロンブスは、たしかに新大陸に到達した。先住民の立場からの批判もあるが、ヨーロッパからアジアに向かう″西方航路″を見いだし、人間世界を大きく広げた。その業績は偉大であろう。
 しかし、皆さま方は人類を根底から救いきる″平和の道″″成仏の道″の開拓者であられる。三世にわたる永遠の幸福への確かなる″生命航路″を人々に教えておられる。コロンブスよりも、はるかに尊く偉大な、仏の使いなのである。やがて幾百万、幾千万、幾億もの世界の人々が皆さま方の開いたこの道を勇んで歩みゆくにちがいない。
2  今、皆さま方の広布へのてい身と活躍は、因果倶時の理法で、生命に栄光の未来を刻んでいる。ゆえに、現在、皆さま方は、あるいは社会的に決して有名でないかもしれない。また華やかな地位にないかもしれない。しかし百年後、五百年後、千年後には、皆さま方の名はコロンブス以上に、まばゆい光彩を放ち、万代に薫っていくことを確信していただきたい。
 また諸天善神、三世十方の諸仏菩薩が皆さま方を守りに守っていくことは間違いない。皆さま方の活躍なくして、世界の広宣流布は断じてでき得ないからである。私もまた、懸命に皆さま方のご多幸を祈り、あらゆる角度から励まし見守っていきたいと念願している。
3  さて、米諸国の英雄であるクリストファー・コロンブスは、スペイン語でいえばクリストバル・コロン。先日、私がドミニカ共和国で頂戴した勲章は、この彼の名を冠したものである。
 彼は今から約五百年前、「黄金の国・ジパング(日本)」があるという東洋を目指し、スペインから西回りの航海に出発した。そしてジパングのかわりに、無限の可能性を秘めた新世界、このアメリカ大陸を発見した。
 カリブ海の地図を眺める時、コロンブスの成し遂げた業績が、いかに大きかったかが、改めてわかる。
 すなわち第一回の航海では現在のバハマ、キューバ、ドミニカ共和国、ハイチに到着。第二回には、同じく小アンティール諸島、プエルトリコ、ジャマイカ、第三回ではトリニダードトバゴなど。そして最後の第四回航海では、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、コロンビアに到着している。
4  このように、まさに南北アメリカ大陸の新しき歴史の幕を開いたのがコロンブスだった。本日は、そのアメリカ大陸のすみずみから、二十九カ国・地域もの使命の友と友が一堂に会した、歴史的会議である。生命の世紀という二十一世紀の「歴史の夜明け」を厳然と開きゆくスタートとなるにちがいない。
 コロンブスはヨーロッパ人には未知であった大陸と島々を″発見″した。これに対し、私どもの広布の航海は、ある意味で″人″を発見する旅である。アメリカのウィリアムス理事長、ブラジルのロベルト・サイトウ理事長はじめ、各国の中心者の方々は、最初は三人か四人の同志をつくるところから始めた。その地涌の友の″発見″から今日の壮大なる広布の広がりが始まったのである。
5  ″実践の学校″で自分を鍛えよ
 コロンブスは、イタリアのたいへん貧しい家に生まれた。ゆえに満足な教育も受けられなかった。しかし彼は少年時代から、冒険家の魂を持っていた。海への情熱やみがたく、早くから航海に加わり、二十四歳の時には、エーゲ海への大航海に参加した。
 彼は、いうなれば″実践の学校″で自らを鍛えたのである。理論のみの学舎ではない。深き伝統にのっとった、厳格で最高の訓練――それは実践の中にしかない。彼は実地の航海の真っただなかで努力し、もまれつつ、航海士としての理想の資質と能力を身につけていったのである。
 いうまでもなく、コロンブスも人間である。多くの欠点を持っていた。しかし、それらを超克して、彼には″自分を鍛えよう″″立派な航海士になろう″という、純粋にして懸命なる一念があった。ゆえに、航海士としての彼を見る時、若き日から鍛えぬかれた、その精髄には、一点のくもりも傷もなかったといわれる。
 いわば、青春の厳しき鍛えが、彼をして危険多き航海の最高のリーダーへと成長させていった。ここにコロンブスが「世界の海の提督」とたたえられるゆえんがある。
6  自らの″鍛え″とは、私どもにとって、その根本は行学の二道の真剣なる実践である。厳格なる鍛えのない人は、いざという時に力が発揮できず、大きな仕事はできない。そして、時とともに人々に見放され、自分も苦しむことが余りにも多い。とくに若き青年リーダーの皆さんは、″実践の学校″での自らの鍛えに徹しぬいていただきたい。
7  目的地に到達するまで航海
 「よしなき愚痴ぐちをいうなかれ」との歌もあるが、偉大なる歴史を開きゆく人、信念と勇気の人には、困難に直面して愚痴はない。コロンブスも、また、そうであった。
 彼が、新世界への初めての航海に旅立ったのは、四十一歳の時である。一四九二年八月に出航した。しかし、一向に目的地には到達しない。十月に入ると、風も強まり、雨も激しく降ってきた。確証もないまま、これ以上、先に進むことは無意味であると考えた乗組員達は、コロンブスに向かって″引き返せ″と、反逆の気配さえみせた。
 しかし、記録によれば、この時コロンブスは、全力で彼らを激励し、未来への希望を約したという。そして、彼は、こうも言った。
 「愚痴を言っても始まらない。私は、東洋に行くために旅に出た。発見するまで航海を続ける以外にない」と。
 私どもの広布の旅路もそうである。前途に何があろうとも、″成仏の道″″人類を救いゆく道″″平和への道″を進みゆく以外にない。愚痴を言ってもはじまらないし、広布の願業を達成することもできない。
8  ある歴史家によれば、乗組員達に″引き返せ″と迫られた時、コロンブスは、あと三日以内に発見できなかったら引き返す、と約束をしたという。しかし、まさにその最終日の十月十二日、ついに彼らは新世界に出あうことができたのである。
 この「十月十二日」といえば、皆さまご存じのように、日蓮大聖人が、人類の苦悩の闇を開き、永遠なる幸福の人生を築きゆく根源である、本門戒壇の大御本尊を御図顕された意義深き日である。奇しくも、その記念の日に、コロンブスが苦悩の航海の波を越え新世界を発見したということに、時の不思議さを感ぜざるをえない。
9  ところで、偉大なる広布の指導者であった戸田先生は、一九五五年(昭和三十年)の年頭に、次の和歌をみ、私どもを激励してくださった。
   妙法の 広布の旅は 遠けれど
     共に励まし 共々に征かなむ
 当時の日本で、学会の世帯数は約十五万であった。その数からすれば、まさに広布ははるかなる旅路であった。そういう状況の中で、戸田先生は、広宣流布の旅程の遠いことを教え、短兵急たんぺいきゅうな活動の進め方を戒められたのである。
 この、はるかなる遠征の旅路を、仲良く、共々に励ましあいながら、一人の落後者らくごしゃも出さずに、元気に目的地に達しよう、と。
 また、戸田先生は、若き青年リーダーの集いである「水滸会」の席上、世界広布の構想を次のように語っておられた。これについては、小説『人間革命』(第七巻)の中につづっておいたが――。
 「そもそも御本尊は、一閻浮提いちえんぶだいのための御本尊であります。全世界の太陽を意味しておられる。決して日本一国のため、というような偏狭な国家主義的なものではない。御本尊の絶大な哲理のお力を信ずることができるならば、世界の広宣流布の道程も必然なことです。まず日本における証明が確立されるならば、時代の潮流は、それを世界広布へと運ぶことは、自明の理ではないか。今のところ、世界の民衆は、まだ夢にも御本尊の存在を知らないでいる。しかし、物質文明のきわまるところに、早くも人類滅亡のきざしを感じています。遠からず、それが不可避だと、悟る時がやってくる。その時、民衆は大御本尊の存在に気づいて、渇仰かつごうするに決まっている」
 さらに「その人びとを、いったい誰が指導するかといえば、まず諸君たちであり、また諸君たちの後輩や子孫のなかにしか、指導者は育たないのです。
 今は、そういっても、ずっと先のことを言っているように思うだろうが、物質文明の行き詰まる速度は、意外に速いようだ。十年、二十年のことではないにしても、二十一世紀まではかからないだろう。これは、もう確定的なことといって差し支えないことです。こういう時代が到来した時、君たちはいったいどうするつもりか? 君たちの生きねばならぬ時代なんだよ!」と。
 まさに世界は戸田先生の言われた通りの時代に入ってきた。皆さま方の広布の活動が、日一日と重要になり、光彩を放っていくのである。どうか、それぞれの国にあって、よき国民、よき市民として地涌の誉れ高き使命の道を歩み抜いていただきたい。
 皆さま方の「ご健康」と「ご多幸」と「ご活躍」を心から念願し、本日のスピーチとさせていただく。

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