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日蓮大聖人・池田大作

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全国総県長会議 勇気ある信心で人生の行路を開け

2003.9.11 メッセージ集(池田大作全集第67巻)

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2  「傲れる者は倒れる」
 私は世界桂冠詩人であり、世界の有名な詩人については、ある程度、勉強してきたつもりである。
 イギリスにトムソンという詩人がいる。自然詩『四季』は、18世紀の大ベストセラーとなり、ルソーの『エミール』にも大きな影響を与えた。トムソンは烈々たる思いを詩に込めた。
 「世の悪党共を悉く打ち倒さねばなるまい」(『ジェームス・トムソン詩集』林瑛二訳、慶應義塾大学出版会)
 この一節は、悪人どもが幅を利かせ、平気で人を食い物にする社会に怒り、立ち上がった一人の勇士の誓いである。結局、悪人の末路は悲惨だ。
 「傲れる者は倒れる」(『リチャード二世』小田島雄志訳、『シェークスピア全集』6所収、白水社)と、シェークスピアの劇の科白の中にも出てくる。戸田先生も、よくおっしゃっていた。「傲れる者は倒れる」――これは大変重要な言葉であり、忘れたことはない。
 イタリアの詩聖ダンテは、『神曲』につづっている。
 「裏切りを働くと、肉体はすぐさま悪魔の手に取られてしまう。それからは命数が尽きるまで悪魔が肉体を支配する」(平川裕弘訳、『世界文学全集』2所収、河出書房新社)
 つまり、信念を裏切った人間は、生きながら、魂が地獄に堕ちている。大詩人の人間洞察は、あまりにも鋭い。
3  青年ホセ・リサールの正義の革命
 先日、一冊の新刊書が届いた。
 『見果てぬ祖国』(ホセ・リサール原作、村上政彦翻案、潮出版社。以下、同書から引用・参照)
 フィリピンの革命家であり、教育者・科学者であり、大文学者であるホセ・リサールの二つの代表作『ノリ・メ・タンヘレ(我に触れるな)』と『エル・フィリブステリスモ(反逆者)』を、日本人にも幅広く親しめるよう、一つの小説に見事に翻案したものである。
 リサールは、これらの小説を書いて、腐敗した聖職者を告発し、厳しく迫害された。しかし生涯、理想を貫いた。アジアの民主革命の歴史に燦然と輝く偉人である。
 『見果てぬ祖国』の物語は、主人公の青年が、留学先のヨーロッパから故郷のフィリピンに帰ってくる場面から始まる。
 留学している間、故郷では信じがたい事件が起きていた。
 愛する父が、あろうことか、獄に囚われ、病死していたのである。清廉な人格者で、庶民のために働き、尊敬を集めていた父が、なぜ......。
 その陰には、狡猾な聖職者による醜い陰謀があった。教会の改革を目指して戦っていた父は、教会の巨大な不正の事実をつかんだ。そのために汚名を着せられて、葬り去られたのである。
 青年は、父の冤罪を晴らそうと懸命に行動した。
 青年には、大きな夢があった。正義と繁栄の社会をつくるには、教育によって、民衆を賢くし、人間を変えねばならない! そのために祖国に学校をつくろう! 青年は、この夢のために奔走したのである。
 しかし、権力の魔酒に酔った聖職者にとって、民衆が賢くなることほど忌まわしいことはない。青年は、さまざまな妨害を受けたうえ、教会に破門された。さらに国家反逆罪で追われて、姿を消した。
 それから十数年――。莫大な富を持つ謎の宝石商が現れ、一躍、マニラの社交界の花形となった。じつは、この宝石商こそ、あの青年だったのである。
 彼は、牢獄から救い出した同志とともに復讐を開始する。まず、民衆を味方にして聖職者の巨悪を告発した。聖職者は脳卒中を起こして倒れ、憤怒のなかで死んでいった。
 権力に踊らされ、父を陥れる記事を書いた野心家のジャーナリストも破滅した。
 しかし、物語は、予想もしなかった結末を迎える。主人公は、若き同志に見守られながら息を引き取る。同志は、こう告げた。
 「あなたの志は私を残しました。私は広く、民衆の中に根を張ります。そして、必ず、私達のこの国を目覚めさせます。
 私は生き抜きます。あなたの救った幼子が、私達の息子が、娘が、フィリピンの歴史を語るとき、最初のフィリピン人として、あなたの名を呼ぶ日のために」
 正義の革命に殉じた生涯は無駄ではなかった。未来に素晴らしい種を蒔いたのだ――。
 壮大なロマンあふれる小説である。
4  ホセ・リサールは、医学、物理学、化学、そして経済学、地理学、言語学、歴史学、哲学と、あらゆる学問に精通した「万能の大学者」であった。
 フィリピン独立に、すべてを捧げて走り抜き、35歳で銃殺された。
 私は、その偉大な殉難の生涯を青年に伝え残そうと、これまで何度もスピーチしてきた。リサール協会のキアンバオ前会長とも語り合った。(=対談は『世界の文学を語る』と題し、2001年11月潮出版社から発刊)
 1998年2月のフィリピン訪問の折には、マニラにあるリサール像に献花させていただいた。
 創価大学には、リサール協会から贈られたリサール博士の胸像が大切に飾られている。
 (=名誉会長は、リサール協会から、日本人初の「リサール大十字勲章」〈96年11月〉、第1回「リサール国際平和賞」〈98年2月〉、第1回「最高文学賞」〈2000年10月〉を受賞。名門・南フィリピン大学から、第1回「リサール平和賞」〈同〉を贈られている)
 『見果てぬ祖国』には、リサールの生き方をほうふつさせる科白がちりばめられている。
 「人生は真剣なものだ。知性と勇気を持つ者だけが、その価値にふさわしく生きることができる。
 生きるということは、人間の中で生きることだ。人間の中で生きるということは、戦うということだ。
 この戦場では、人間にとって智慧より強い武器はない。自分の心に優る力はない。だから、おまえの心を研ぎ澄まして、鍛えて、磨いて、強靱な精神を育てるんだ」
 皆さまも、強き信心という無敵の武器をもって、人生の戦場で勝ち抜いていただきたい。
 「人間は、教育と文化を通して自分自身を改良できる。教育が高座に君臨するとき、青年は旺盛かつ俊敏に開化する」
 「学校を、苦痛の場所ではなく、知的な楽しみの場所にしよう。何よりもまず、子供達に、自信、安心、自尊の心を教えることが必要だ」
 偉大な青年を育てることは、偉大な未来を創ることである。
 どうか、皆さまも、リサールのごとく、偉大な信念に生き抜いていただきたい。青年の模範となっていただきたい。
5  理想へ! 自分自身に生きよ
 フランスの文豪、ロマン・ロランは、若き友への手紙につづっている。
 「高慢も卑下もいけません。それは二つの病気です。在るがままであり、自分にできるすべてのことをしなければなりません」(「ルイ・ジレ=ロマン・ロラン往復書簡」清水茂訳、『ロマン・ロラン全集』32所収、みすず書房)
 何があろうと、どこまでも自分らしく、自分自身に生ききっていくことだ。ここに信仰者の生き方の真髄がある。
 マハトマ・ガンジーは語っている。
 「人生は向上心であり、その使命は、自我実現という完全追求のための奮闘である。自分に弱点や欠点があるからといって、理想を低下させてはならぬ」(K・クリパラーニー編『抵抗するな・屈服するな』古賀勝郎訳、朝日新聞社)
 自我実現とは、いわば、人間革命ということである。
 人生とは、偉大な人間の可能性を開花させる、たゆみない挑戦なのである。
6  「創価の女性は美しい」
 21世紀を、すべての女性が輝く世紀に!――これが私たちの信念である。そうならなければ、真実の平和も幸福も築けないからだ。
 「創価世界女性会館」も開館3周年を迎えた。すでに来館者は30万人に迫る勢いである。
 これまで南太平洋・パラオ共和国のレメンゲサウ大統領ご夫妻、またゴルバチョフ元ソ連大統領とその令嬢・令孫、私が対談した未来学者のヘンダーソン博士、香港の芸術の母・方召麐ほうしょうりん画伯はじめ、世界から国家的な指導者や学者、文化人が訪れている。
 この「女性の世紀」の幸福城を守り支えてくださっている皆さまに、私は心から感謝申し上げたい。
 信濃町近辺に在住され、私どもと“ご近所づきあい”しているウクライナのコステンコ大使ご夫妻は語っておられた。(2002年1月11日)
 「創価世界女性会館に入る女性の方々は、皆、おきれいです!」
 「でも私は、会館に入る時以上に、出てくる姿は、もっと美しいと思うんです。生命が躍動しています。幸福感に満ちた“輝く女性”を、たくさん見かけます」
 まことにうれしい評価である。
 御聖訓には「法妙なるが故に人貴し・人貴きが故に所尊し」とある。
 どうか、妙法とともに、同志とともに、この女性会館から「平和の光」「幸福の光」「希望の光」そして「勝利の光」を、さらに一段と発信していっていただきたい。
7  名画「第九の怒濤」に魂のメッセージ
 おかげさまで、東京富士美術館は今年、開館20周年になる。
 その佳節を記念して、この11月からロシアが誇る最高峰の名画が公開される。19世紀屈指の大画家・アイワゾフスキーの傑作「第九の怒濤」である。
 今回、国立ロシア美術館より特別に貸し出され、出展される運びとなった。
 アイワゾフスキーは生涯、若々しい青年の息吹で、海を中心に6000点もの絵を描き続けた。信念と人間愛の画家として知られている。
 主題である「第九の怒濤」は、嵐の海についての言い伝えに由来している。
 大波は一定のリズムをもって襲ってくる。そのなかで9番目の波が最も巨大で、最も激しい。しかし、その試練の怒濤を乗り切ることができれば、大きな活路が開けてくる――という言い伝えである。
 大画面に描かれているのは、長い嵐の夜が明けようとする早朝の海。いまだ荒れ狂う大海原の波間で、難破した船の帆柱が木の葉のように揺れている。船員たちは疲れ果てながら、折れた帆柱に必死にしがみついている。
 そこに、巨大な「第九の怒濤」が白いしぶきを上げながら、今にも襲いかかろうとしている。船員たちは力を合わせ、勇敢に怒濤に立ち向かう。
 その猛々しい怒濤の彼方には、まばゆいばかりの黄金の旭日が、新しい時代の希望の勝利を象徴するかのように、荘厳な光を放っている――。
 この名画には、「勇気を奮い立たせよ! 恐怖にも屈するな! 強靱なる人間の意志の力は、どんな嵐にも勝利することができるのだ!」との魂のメッセージが込められているといえよう。
 わが波涛会の同志の貴重な体験を伺うと、実際の航海でも、波から逃げよう、避けようとして不用意に旋回すると、かえって横波を受けて転覆してしまう危険があるということだ。
 広布と人生の航路にも「第九の怒濤」の試練が当然あろう。しかし「法華経の兵法」をもって越えられない波など絶対にない。
 「勇気ある信心」を、いよいよ燃え上がらせ、「来るなら来い!」「さあ、かかって来い!」と正面から迎え撃ち、断固として突破していくことだ。
 御聖訓には仰せである。
 「生死の苦悩に満ちた大海を渡ることは、妙法蓮華経の船でなければ、成し遂げられない」(御書1448㌻、通解)
 21世紀の激動の荒海にあって、生命尊厳の大仏法を掲げ、新しい人類の平和と共生と繁栄の大航路を切り開きゆく大船――それが創価学会である。
 今、世界の心ある知性は、未来の希望の光源を、この創価の勝利と拡大に見いだし始めた。
 仏教とイスラムに橋を架ける対談を私とともに行ったハワイ大学のテヘラニアン教授も、こう期待を寄せてくださっている。
 ――本来、文明というものは、一つに帰結する。それは「人間の文明」である。「生」と「死」という人類共通の根本課題を探究し、打開しながら、この新たな「人間の文明」を創造しているのが、SGIである――と。
 さあ、いかなる怒濤をも、強く麗しき「異体同心の団結」で、愉快にまた愉快に、そして、堂々とまた堂々と、乗り越え、勝ち越えていこう!
 そして「創価完勝」の旭日を、朗らかな笑顔で、朗らかな歌声をもって、また勝利の歓声をもって、ともどもに仰ぎゆくことを約し合っていこうではないか!
 どうか、お体を大切に!一人ももれなく丈夫になって、健康で長生きしていただきたい。
 何ものにも優先して、強い生命をつくることである。すべて祈りが根本である。
 「信心も、仕事も、頑健になるために戦うのだ!」――自分でそう決めて、そこから出発していくことである。
 お帰りになられましたら、各地域の皆さま方に、くれぐれもよろしくお伝えいただきたい。
 各方面、各県の晴れやかな勝利へ、そして創価の「完勝」へ、勇躍、大前進して、来月、また笑顔で、愉快に、お会いしましょう!
 (創価文化会館)

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