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日蓮大聖人・池田大作

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長寿の秘訣 学会活動こそ長寿の軌道

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  人は百二十歳まで生きられる
 池田 そこで、医学的には、人間はいったい、何歳まで生きられると、考えられていますか。
 森田 生理学者などは、百二十歳あたりと考えているようです。
 池田 そうですか。仏典でも百二十歳まで生きられると説いています。中国の天台大師は「人の寿命には三種類ある。早くて四十歳、中ほどで八十歳、最高は百二十歳である」(「金光明経文句」)と、百二十歳を″不老不死″に匹敵する長寿の最高峰としています。
 笹川 不思議な一致ですね。
 四十歳、八十歳という年齢も、人生の節目の一つではないでしょうか。
 池田 ポーリング博士、カズンズ博士など、私が対談した世界の最高峰の識者も、人間は百十〜百二十歳まで生きられると指摘されていた。
 ウンガー博士も同じ意見でした。
 博士は、その理由として、私との対談で「人間の細胞は、百二十歳までは何らかの形で再生が可能だと言われているからです。そして、百二十歳をこえると再生面力がなくなると考えられています」(『人間主義の旗を――寛容、慈悲、対話』東洋哲学研究所)と語っていました。このことについては、どう思われますか。
 中泉 私たちの体を構成している細胞のDNA(デオキシリボ核酸)の末端には、その細胞の分裂回数を決める情報が組み込まれています。その回数以上に細胞が分裂し成長することはありません。
 森田 もちろん、人間の寿命を決める要因は、これ以外にも、生活習慣や環境など、さまざまあると思います。
3  世界の長寿村
 池田 当然、そうでしょうね。
 また、寿命が長いかどうかで人生の幸不幸が決定するわけではない。短命のようでも、何倍も価値ある人生を生きた人もいる。これは、だれもが実感していることです。そのうえで、長寿について語っていきたいのですが、世界には、多くの高齢者が健康で若々しく生活する長寿村がありますね。
 中泉 黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方、パキスタンのフンザ地方、南米エクアドルのピルカパンパなどが有名です。
 日本では、沖縄県・玉城村(=二〇〇六年一月、佐敷町、知念村、大里村と合併し南城市となった)や長野県・喬木村などが知られています。
 池田 沖縄は″長寿県″で有名ですね。そこで、はつらつと広宣流布に戦っている、わが多宝会は、まさに長寿社会の鑑です。
 またコカサスは、ロシアの文豪トルストイが滞在していたところです。ゴルバチョフ元ソ連大統領の出身地でもあり、私との対談でも、「個性豊かな美しい土地です」(『二十一世紀の精神の教訓』。本全集第105巻収録)と語っていました。
 笹川 コーカサス地方では、百歳を超えた高齢者も背筋をしゃんと伸ばし、軽快なステップでダンスを楽しむといった話を聞いたことがあります。
 森田 もう三十年近く前になりますが、学術部・ドクター部が中心になって、長寿村の調査を行いました。
 静岡県賀茂郡南伊豆町伊浜区に在住する高齢者の方を対象にしたものです。
 池田 そうでしたね。現在、この地域でも多くの学会員が活躍しており、その様子を私も、うれしくうかがっています。
 森田 伊浜区は温暖な気候と清浄な空気、海や山の美しい環境に恵まれた地域です。
 そうした豊かな自然が生んだ、良質なわき水や、魚、ノリ、ワカメ、緑黄色野菜を中心に、栄養のバランスのとれた食事が、高齢者の健康を支えていることがわかりました。
 中泉 そうした点は、世界の長寿村にも共通しています。
 池田 塩分や動物性脂肪の少ない料理や、ヨーグルトなどの発酵食なども、世界の長寿村の特徴だと聞いたことがあります。
 森田 伊浜区では、海の幸が豊富なこともあり、六割もの人が肉より魚が好きと答えていました。
 また、植物性タンパク質源である大豆製品も多く摂取されており、六割の人が毎日三杯のみそ汁を飲んでいました。
 笹川 魚類から動物性タンパク質を、大豆製品などから植物性タンパク質を、バランスよく摂取していたのですね。
 中泉 魚類の脂肪は、動脈硬化の予防に効果があります。
 森田 同様に、コレステロールの増加を防ぎ、動脈硬化を予防する食品にゴマがあります。
 この地域では、各家庭でゴマを栽培し、ゴマダレなどに利用し、ふんだんに食べていたこともわかりました。
4  「多忙こそ長生きの道」――高齢者は頻繁に水分の補給を
 池田 先ほど、良質の水も伊浜区の長寿の要因にあげられていましたが、よく高齢者にとって水分の補給は大切と言いますね。
 笹川 はい。脱水症状で入院される方を何人も見てきました。
 中泉 高齢者はもともと、成人に比べ体内の水分量が少ないのです。そのうえ、のどが渇くといった自覚症状が少ないので、知らないうちに、脱水症状を起こしていることがあります。
 池田 一日どのくらいの量の水分を補給すればよいのでしょうか。
 森田 一日二リットルと言われますが、なかなか大変です。一.二〜一.五リットルはとってほしいですね。大きめの湯飲み茶碗だと、五、六杯になります。
 笹川 食事のさいには必ずコップ一杯ぶんの水分をとり、食間にも工夫してとってください。もちろん、お茶でも大丈夫です。
 池田 話は伊浜区にもどりますが、食生活以外に目立った点はありましたか。
 森田 はい。伊浜区は、三方に迫る山々と、海に囲まれた傾斜地にあります。ですから、農作業で畑に行くのにも、坂道を上っては下るの繰り返しです。
 池田 長寿で知られる地域は、山坂が多いと聞きました。
 伊浜区も、坂道を歩くことが自然と健康の維持・増進につながっているわけですか。
 森田 はい。調査に同行した若いメンバーは、七十歳台の方が、坂道をスタスタと上っていくのに驚いていました。(笑い)
 そのほか、生活面の特徴としては、「安らかな睡眠」「入浴を心がける」などがありました。
5  「過去を追うな、未来を憂うな」
 池田 長寿には、一般的に、心の持ち方も大きく関係していると言われますね。
 森田 そうです。伊浜区の各家庭には「老人八訓」というのが掲げられていました。そこには「くよくよするな」という項目がありました。
 中泉 たしかに、長生きされている方は、だいたい楽天的な方が多いようです。
 池田 いい意味での楽観主義ですね。
 仏典には、こう説かれています
 「過去を追うことなかれ。未来を願うことなかれ。過去は捨て去ったもの。未来はいまだ来ていない。ならば、現在することを、おのおのよく心得て、揺るがず、動ぜず、それを正しく実践せよ。ただ、きょう、まさに、作すべきことを熱心になせ」(「中部教典」)
 いつまでも過去にとらわれて悩んだり、今から心配してもしょうがない未来のことで苦しんだりするのは愚かである。
 大事なことは、「きょう」という一日を、いかに価値あるものとするかです。そのために一生懸命に、そして、ていねいに生きることです。
 笹川 その積み重ねが、人生の勝利に通じますね
 池田 それが道理です。
 私の大切な友人の一人に、香港の高名な画家・方召麐ほうしょうりん先生がおられます。九十歳になられた今も、日々、生き生きと美の創造に挑戦されている。(=二〇〇六年二月、九十二歳で逝去)
 本年(二〇〇四年)、方先生からは「松濤」、そして「正義感」と、したためられた書をいただいた。どちらも、あふれんばかりの若さが躍動していて感動しました。
 笹川 私も展覧会を拝見しましたが、その生命力には圧倒されました。
 池田 方先生は語っておられる。
 「多忙こそ長寿の道です。忙しく働いていれば、あれやこれやと、くだらないことを考えずにすみます。くよくよしないで、心に、わだかまりが残りません」と。
 まことに至言です。
 方先生は、若くして夫君に先立たれ、八人のお子さんを女手一つで立派に育てあげられながら、画業を貫き、偉大な仕事をしてこられた。
 その波澗万丈の人生を考えれば、この言葉は万鈞の重みをもって迫ってくる。まさに達観した楽観主義であり、″模範の長寿″の人生の軌跡と言えるでしょう。
6  「不機嫌は怠惰の一種」
 中泉 「くよくよしない」ためには「ユーモア」や「笑い」も大切だと思います。
 笹川 学会の会合、とくに婦人部や多宝会の皆さんと、にぎやかに語りあっていると、会合に来る前にあった悶々とした悩みも吹き飛んでしまいます。
 笑いがあふれ、これこそが″健康の源″という感じがします。(笑い)
 池田 「笑いは最上の医薬」という言葉もあります。どんなときも、「愉快な心」をもって生きたい。
 そのためには、日々、自分に勝ち、人生に勝つことです。満々たる生命力で、前へ前へと進むことです。そのための私どもの信仰です。
 森田 伊浜区の高齢者の性格や特徴を調べたところ、「明るい人柄」の方が圧倒的に多いことがわかりました。
 池田 たしかに、そういう例は多いようですね。反対に、「不機嫌は怠惰の一種」(『わかきヴェルテルの悩み』神品芳夫訳、『ゲーテ全集』6所収、潮出版社)とゲーテは論じています。(笑い)
 中泉 たしかに怠け者は、すぐに不機嫌になりますね。「大変だ」「ああ、いやだ」とすぐに文句が顔に出る。(笑い)
 池田 私のお会いした多くの世界のリーダーの方々を見ても、偉大な人格の人は、打てば響くような朗らかさがある。生き生きと前進している。若々しい。
 笹川 ゴルバチョフ元大統領や南アフリカのマンデラ前大統領も、笑顔が印象的でした。
7  信心に定年はない、広宣流布に引退はない
 森田 長寿者には、「目標をもって生きる」方が多いです。生きがいもなく、毎日を漫然と過ごすのでは、心に張りがありません。
 池田 大事なことです。目標を見失い、惰性に流されるだけの人生であっては、むなしい。
 トルストイの『戦争と平和』には、ある伯爵夫人が、運命にほんろうされて、生きる意味を見失った姿が描かれています。
 「彼女(=伯爵夫人)は自分が偶然この世におき忘れられた、もういっさい目的も意味も持たぬ人間のように感じた。彼女は食い、飲み、睡り、醒めていたが、しかし生活してはいなかった。もはや人生は彼女に何の印象もあたえなかった」(米川正夫訳、岩波文庫)
 自分が生きる意味、存在する価値を見失うことほど、人間にとっての悲劇はない。
 森田 本当にそう思います。何かに依存する生き方は、それがあるときはいいですが、失うとガックリくるものです。
 池田 その意味でも、大きな目的のために貢献していく生き方は強い。
 私の尊敬する友人である、ノーベル平和賞受賞者ロートブラット博士(パグウォッシュ会議名誉会長)は現在、九十五歳。(=二〇〇五年八月、九十六歳で逝去)
 一九八九年十月、大阪で初めてお会いし、二〇〇〇年二月、沖縄で再会しました。今もなお、平和のために、正義のために戦い続けておられる。
 中泉 核兵器の廃絶を訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」の十一人の署名者のなかで、唯一の生存者ですね。
 池田 「健康長寿の秘訣」を聞かれて、博士は語っておられる。
 「一つの大きな目標に向かって、わき目もふらずに進んできた。それが生きがいになっていると思う」(「聖教新聞」一九九五年十月十五日付)
 私との対談のさいも、「私は『疲れる』ことを自分に許さない」と意気軒高に語っておられた。
 博士に比べれば、私どもは、まだまだ若い。まして、信心に「定年」はない。広宣流布の舞台に「引退」はない。ゆえに、戦って戦って戦い続けることです。
 笹川 入院患者さんを見ていても、明確な目標を持って、「生きぬこう」「病気を治そう」と取り組んでいく方は、回復や社会復帰も早いです。
 池田 中国の文豪・魯迅は、つづっています。
 「自己満足しない人間が多くいる種族は、いつまでも前進し、いつまでも希望をもつ」(『魯迅選集』6、増田渉訳、岩波書店)と。
 自分に勝とう、自分を乗り越えていこうとする人には、前進があり、希望がある。そして、若々しい。いつも、はつらつとしている。いわんや、「広宣流布」という、水遠の希望に進む私たちには、大いなる目的があり、生きがいがある。これほどの幸福はない。
8  人に尽くせば新しい生命力がわく――日々、新しい一日
 笹川 生きがいと聞いて、白樺会の先輩を思い出しました。埼玉県所沢市に住む白樺会の先輩は、現在七十四歳。現役の助産師さんです。
 これまでに取り上げた新生児は一万二千人を超え、親子二代にわたって取り上げた方もいます。
 池田 白樺会の模範の方ですね。
 笹川 先輩のモットーは「だれかのために尽くすところに、新しい生命力がわく」というものです。新生児を取り上げることは、自身の中に喜びと新たな力を生むのだそうです。
 池田 どういうきっかけで助産師になられたのですか。
 笹川 じつは、先輩は、長男を出産わずか四時間後に、二男を生後四日後に病で亡くされています。
 三男こそ、やっと無事に育ちましたが、「私と同じような悲しみを味わう人が出ないように、少しでも力になれれば」と、本格的に助産師として生きる決意を固められたのです。
 池田 そうしたご自身の体験があればこそ、多くの人を支え、勇気づけてこられたのでしょう。偉大な勝利の人生です。人のために、わが身をなげうって働く――多宝会、そして白樺の友は、まさに「健康の世紀」をリードしておられる。
 中泉 これまで数多くの入院患者さんと接してきましたが、学会の中で広宣流布のために戦ってこられた方は、皆さん、入院してからも同じ姿勢を貫いています。
 自分自身がいちばん、大変な状況に置かれていても、「どうやって、みんなを激励しようか」と考えています。
 本当にすごいことだと思います。そういう方は、病に対しても強いのです。
 池田 パグウォッシュ会議の会長であるスワミナサン博士も語っていました。博士は現在、七十八歳です。
 高齢者が、健康長寿で生き生きと暮らしていくために何が大事か――。
 それは「『自分のため』だけではなく『他の人々の助けになりたい』という目的です」。
 そして「『ただ生きている』以上のことをすれば、毎日が楽しくなります。毎日が『新しい一日』になります。毎日が『新しい夜明け』になります」と。
 「人のために生きる」ことこそ、真に健康な生命であり、そして、最高の長寿の秘訣というのです。
9  「生き生きと、永遠に前へ前へ」
 森田 「人のために生きる」といえば、伊浜区の高齢者に、どんな生きがいを感じているのか尋ねたところ、女性でいちばん、多かった答えは「公共物の掃除」でした。老人クラブの建物などを掃除するのを楽しみにして、満足感を味わっていたのです。
 こうした傾向は、女性ばかりでなく、この地域の長寿の方に共通した生活感と考えてよいと思います。
 というのは、先ほど述べた「老人八訓」に「役に立て」という項目もありました。さらに各家庭には「日常の五心」というのも掲げられていて、そこには「ワタシガシマスと言う」とありました。いずれも「奉仕の心」を表した標語だと思います。
 池田 沖縄の高齢者の調査からも、社会に積極的にかかわっていくことが、長寿の要因であることがわかっていますね。
 森田 高齢化がさらに加速する二十一世紀には、皆が生涯にわたって元気で働き続けられる社会環境を整えていくことも不可欠です。
 池田 いずれにせよ、学会員の皆さまは、広宣流布という「大目的」に向かっている。真実の「楽観主義」で進んでいる。エゴと独善がはびこる、社会の現実の真っただ中で、法のため、人のため、社会のために即応くし、みずから「生きがい」と「希望」をつくっている。どれほど尊い人生か。これ以上の健康長寿の軌道はない。
 ホイットマンは詠っています。「永遠に生き生きと、永遠に前へ前へ」(木島始編訳『ホイットマン詩集』思潮社)と。
 だれもが生き生きと生きられる「長寿社会」の真髄は、日蓮仏法にあり、創価学会にあることを確信して、生涯、希望に燃えて前進しましょう。

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