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日蓮大聖人・池田大作

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疲労回復のカギ 朝の勝利は、健康の勝利

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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1  森田 前回は、「夜遅くの勤行」など、日ごろの信仰活動で注意すべきことが話題になりました。今回は、それに加えて、「個人会館や個人会場を使わせていただくさいは、最大の礼儀と感謝と配慮を」ということを確認しておきたいと思います。
 池田 以前にも申し上げましたが、会場として使用される同志の家は、仏道修行の宝処です。
 また人材育成の道場でもある。地域広布の灯台であり、民衆勝利の大法城です。どれほど尊いか、また、ご苦労も多いか。私は深い感謝をこめて、会場提供者の皆さま方に、日々、題目を送らせていただいています。
 森田 学会本部では、(1)担当幹部は会場提供者に最大の札を尽くしていく*(2)夜の会合は「午後八時三十分終了」を厳守。そのあとの打ち合わせも、できるだけ短時間で*(3)禁煙を励行し、終了後の清掃などを徹底する*(4)未入会のご家族がおられる場合は、最大の感謝を*(5)病気の方や乳幼児、受験生などがいる場合は、細心の配慮を、などと徹底しています。
 笹川 一つ一つ大事なことですね。
 中泉 夜の会合が終わったあとなど、路上で声高に話したり、タバコを投げ捨てたり、車のエンジンを一斉にふかしたりして、近隣のひんしゅくを買い、拠点のお宅に迷惑がかかるようなことがあっては絶対にならないと思います。
 池田 会場の定員も絶対に厳守していただきたい。会館も同じです。
 今はそういうことはないが、昔、うかがったお宅の会合で、人が集まりすぎて、会場の床が抜けてしまったことがあった。幸い、ケガ人もなくすんだが、定員は絶対に守る、これが鉄則です。無理をして大勢の人を入れ、事故を起こすようなことがあってはならない。
 御聖訓には「以前よりも百千万億倍、用心していきなさい」(御書一一六九ページ)とあります。お互いに注意しあいながら、中心者は「無事故こそ勝利」と強盛に祈り、配慮していくことです。
2  テンポよく、手を振って歩く
 池田 前置きが長くなってしまいましたが(笑い)、今回のテーマに入りましょう。
 森田 とくに、梅雨時であっても、心身ともに、はつらつと生活できるよう、「疲労回復のカギ」についてです。
 笹川 また、夏バテをしないためにも、夏を迎える前から疲れをためないような工夫や準備が大事です。でないと暑い夏が来ると、疲労困憊してしまいます。
 池田 疲労回復といえば、やはり基本の食事や運動、そして睡眠が大切ですね。
 森田 はい。以前も取り上げましたので詳細は省きますが健康のためには、まず適切な運動や食事が欠かせません。
 中泉 「歩くこと」など適度な運動は、疲労をとるためにも必要です。運動後は筋肉の緊張がほぐれ、高血圧の人は血圧も下がります。また血液の循環がよくなって、肩凝りや頭痛も和らぎ、不安や憂欝な気分も解消されます。
 森田 脳の活動も高まります。
 池田 ドイツの哲学者カントは、毎日、必ず決まった時刻に散歩をしていたことで有名ですが、彼の最もすぐれた思想は、「座っている時」でなく、「歩いている時」に現れたという(小原國芳編『例話大全集』玉川大学出版部、参照)。当然、日ごろから思索しぬいていたからでしょうが、一日に四、五時間歩くのがふつうだだったアメリカ・ルネサンスの思想家ソローも、彼の作品のよいものは、「一番よく歩いている頃のもの」(ガンジー『ガンジーの健康論』〈岡芙三子訳、編集工房ノア〉の中で紹介)と言っています。
 頭のいい歩き方というのはありますか。(笑い)
 森田 そうですね。テンポよく、手を振るなどして歩くと、血液の循環がよくなり、脳に適当な刺激をあたえます。体がポッポッと温かくなる程度が目安です。
 笹川 ただし、年配者は決して無理な運動は、しないでください。買い物に行ったりとか、家の掃除をするなど、日常生活そのものが「運動」です。寝たきりの方は、たとえば、ひざを曲げたり伸ばしたり、体を起こすだけでも運動になっています。
 中泉 私の場合、通勤電車の中で座らずに、立って新聞を読むようにしたり、病院内では階段を使い、エレベーターには、できるだけ乗らないようにしたりしています。ちょっとした運動につながっています。
 池田 ガンジーも記している。
 「どんなに忙しく仕事に追われていても、食事をするのと同じように、運動をする時間はとらなくてはなりません。それは仕事の余裕をなくするどとろか、反対に余裕を生み出す」(同前)と。
 その点、学会活動にはつねに「行動」がある。ともに勤行する。会合に参加する。同志のもとへ激励に出かける。友好活動に励む――動いたぶんだけ、充実があり、向上がある。心も体も生き生きとする。これほどの健康法はありません。
3  肥満防止に朝食は重要
 池田 ところで飲み物や食べ物で、ストレス解消にいいようなものはありますか。
 森田 たとえば、緑茶やイチゴ、キウイ(ビタミンC)、アーモンドに大豆、卵(ビタミンE)、豚肉、牛レバー、ウナギ(ビタミンB1)、牛乳、チーズ、ひじき(カルシウム)、リンゴやバナナ(カリウム)、こまつ菜やノリ(鉄分)などがあげられるでしょう。
 いずれも摂取が足りないとストレスに弱くなったり、ストレスが続くと不足しやすい栄養素をふくんでいます。
 池田 毎日三度の規則正しい食生活も大切ですね。
 中泉 はい。疲れやすい人のなかには、食事の内容が偏っていたり、食事を抜いている人が多いようです。とくに朝食ですね。
 森田 朝食は、昼食までの活動を支えるエネルギー源を供給します。エネルギー源となる血液中のブドウ糖が不足すると、脳の働きが鈍くなり、集中力が欠けたり、ボーッとしたりします。
 池田 「朝食は金の価値がある」と言いますが。
 森田 はい。朝食をとらない人を調べてみると、前日の夕食時間が不規則だったり、夜遅く食べたりするケースが目立ちます。
 眠っている間も、胃や腸が働いているので、目覚めても食欲が出ず、朝食がおいしく食べられないのです。
 中泉 朝食をきちんととることは、肥満防止にも重要です。同じ物を食べる場合は、夜食べるより朝食べたほうが太りにくいと言われています。
 笹川 食事も「朝が勝負」ですね。
4  睡眠は″最上の薬″
 池田 「朝の勝利」が「一日の勝利」であり、「健康の勝利」です。その積み重ねが、人生全体の勝利となっていく。アメリカの大統領ウィルソンも「勝利の第一の秘訣は早起きだ」と語っています。
 その意味でも、「睡眠」が大事ですね。戸田先生も「あらゆる工夫をして寝なさい」と言われていた。また「真夜中以前の一時間の眠りは、以後の二時間ぶんに値する」という言葉もある。
 多忙な現代人にはむずかしいかもしれないが、時間を価値的に使うことです。そして朝を、さわやかに出発する。信心即生活の智慧が、自分自身を守っていくのです。
 笹川 とくに、年配者は、疲れをためないようにすることです。睡眠に勝る薬はありません。
 池田 そうですね。「ナポレオンは毎日三時間しか寝なかった」という伝説があります。発明王エジソンも短眠だったと言われる。若いころは、そうした気概も欲しい。だが、年配になると、そうもいかない。病気の場合もある。人それぞれ体力も違う。賢明に考えなくてはならない。
 笹川 私は寝る前に、よく眠れるように御本尊に祈ってから布団に入ります。時間も大事ですが、翌日、目覚めたとき、爽快感や満足感が得られる睡眠ができたかどうかが重要です。
 中泉 睡眠は、眠り始めの三時間がもっとも深く眠っていると言われています。このときの眠りの深さが、熟睡の大きなポイントです。
 池田 なるほど、それで「寝る前に食べるとよくない」わけですね。
 中泉 そうです。睡眠中には、成長ホルモンが分泌されますが、これには疲労回復や細胞を修復する働きがあります。寝る前に食べると、成長ホルモンが分泌されにくくなります。じつは、このホルモンは、寝ついた直後に訪れる深い眠りのときに、いちばん多く分泌されるのです。
 池田 「疲労は最善の枕である」という言葉もありますが、やはり、日々の充実した活動、価値ある生活であってこそ快適な眠りとなり、爽快な朝を迎えられる。これこそ心身ともに健康な生命の土台でしよう。
5  枕や布団は?
 池田 ところで、寝る前にお酒を飲むのはどうですか。
 中泉 少量であれば寝つきをよくし、深い眠りを誘う効果があります。ですが飲みすぎると、のどが渇いたりトイレが近くなったりし、眠りを妨げてしまいます。コーヒーなどのカフェインのとりすぎも要注意です。
 池田 熟睡できる姿勢というのはありますか。
 森田 一晩中、同じ姿勢で寝ている人は、まずいません(笑い)。自分がいちばん楽な姿勢で休むのがいいと思います。
 池田 枕や布団は、どうですか。
 笹川 一般に、(1)柔らかすぎる敷布団*(2)重すぎる掛け布団*(3)高すぎる枕は、寝にくいものです。
 とくに枕は、高すぎたり、偏りがあると、頸椎を圧迫したり、肩凝りやいびきの原因になります。また、頭だけを枕に乗せるのでなく、圧力が分散するように、首までを枕に当てるようにしてください。
 森田 ベッドや布団も同じです。柔らかすぎても硬すぎてもいけません。硬すぎると一点に圧力がかかり、腰痛の原因になります。圧力が分散されるような、ほどよい硬さが大事です。
6  寝る直前に熱い風呂は控える
 池田 快眠のポイントとして、入浴もあげられますね。
 中泉 はい。ただし、寝る直前の熱い風呂は控えてください。一度上がった体温が下がるまでに時間がかかり、寝つきが悪くなるからです。
 森田 反対に、寝る三十〜六十分前の、三八〜四〇度のぬるま湯はお勧めです。ちょうど寝るころに、上がった体温が下がってきて、気持ちよく眠ることができます。
 池田 湯船に入っている入浴時間は、どれくらいが目安ですか。
 中泉 十〜二十分でしょう。
 笹川 入院されている患者さんの中には、一日中、ベッドの上にいるので、就寝時間が来ても、なかなか寝つけず、つらい思いをしていることがあります。そんなとき、足を湯に漬ける「足浴」だけでも緊張感を解きほぐすことができます。時間がないときは、少し熱めのシャワーを、ひざの裏に十秒ほど当てるだけでも効果があります。
 また、パソコンなど機器に長時間向かっている方は、同じ姿勢を続けているので、肩凝りなど、疲れを感じやすいと思います。そういうときは、首を蒸しタオルなどで、温めるのもいいですね。
7  いきなり湯船には入らない
 森田 入浴は、血行がよくなって、疲れや筋肉の凝り、痛みを和らげてくれます。
 中泉 尿や汗が出やすくなり、体内の老廃物も排泄されやすくなります。血圧を下げる効果もありますし、ストレスも解消されて、気分も新鮮になりますね。
 池田 仏典にも、入浴の効能が記されています。この「入浴」には現在の蒸し風呂もふくまれているようですが、(1)呼吸を楽にする*(2)病の平癒を得る*(3)ゴミや垢を除去する*(4)疲れをとり、体を軽快にする*(5)肌をきれいにする、というものです。(「増一阿含経」)
 最近、入浴剤も流行しているそうですね。
 笹川 はい。入浴剤は、保温効果のほかに、香りなども楽しめ、気分もリフレッシュされます。ゆず湯やしようぶ湯は有名ですが、ミカン、レモンなど、かんきつ系の皮や大根の葉っぱなども保温効果があります。
 池田 入浴をさけたほうがいいのは、どんなときですか。
 森田 食事の直前直後、運動の直後、お酒を飲んだあとはさけてください。もちろん、風邪などの病気の場合も控えたほうがいいと思います。
8  「健康」になるための信心――浴室での事故を防ぐ
 池田 ほかに入浴で注意すべき点はありますか。
 笹川 いきなり湯に入らずに、足先から「かけ湯」をして、お湯の温度に体を慣らしてください。そのあと、ゆっくりと湯船に入る。急に肩までつかると、心臓や肺に負担がかかります。
 中泉 先ほども言いましたが、熱い湯だけはさけてください。急に熱い湯船につかると、血圧が上がり、脳出血を起こすことがあります。また、汗も出やすく、利尿効果で脱水ぎみになり、血液が固まりやすくなります。血栓ができて血管を塞いでしまうと、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすことがあります。
 森田 前回、家庭内の事故が意外に多いという話をしましたが、そのうち、お風呂での死亡事故は交通事故死よりも多く、年間一万五千人とも言われています。
 笹川 とくに高齢者は要注意です。体力が落ちているため、山に登ったときと同じくらいの疲れを感じると言われています。
 池田 お年寄りを浴室での事故から守るためのポイントは、どうでしょうか。
 笹川 血圧の変動が見られる、服を脱いだとき、湯船に入った瞬間、風呂から上がったときの三つに注意してください。
 中泉 具体的には、(1)家族に一声かけてから入る*(2)入浴前後にコップ一杯の水分を補給*(3)冬期間は脱衣場、浴室をよく暖めておく*(4)風呂の温度はつ三八度から四〇度*(5)入浴時間は十分程度*(6)半身浴で心臓に負担をかけない*(7)湯船から急に立ち上がらない――以上になるでしょうか。
 池田 どれも大切です。たかが入浴と油断すると大変な事故になる。
 森田 とくに「激しい温度差」は注意が必要です。寒いというだけで、血圧が上がりますから。
 池田 たしかに、浴室から温度差のある脱衣場に急に出たときに、倒れる場合が多いですね。
 中泉 そうなんです。ですから、浴室と脱衣場との温度差を小さくするなどの工夫が必要です。
 心臓病や高血圧の人も十分な注意が必要です。
 池田 それと台所やお手洗いなど、家の中で寒い所は、少しでも暖かくしたほうがいいですね。
 笹川 寒い時には足元も大切です。厚い靴下をはいたり、じゅうたんを敷いたり、いろいろと考えてください。暖房器具をトイレに設置されている方もいらっしゃいます。
 池田 外出するときも大事です。「寒いところにこれから出ていくんだ」と、心構えをし、寒さに対して心も体も備える。意識せず、ぼんやりしたまま、ぽっと出ていくのは良くありません。
 また、湯船から出るときもそうですが、勤行が終わったあとも、体温や脈拍が上がっているので急に立ってはいけない。呼吸を整えながら、ゆっくりと立ち上がることです。
 笹川 先ほどもあったように、声かけも大切だと思います。家族の知らないうちに浴室で倒れ、大変、危険な状態におちいったというケースをよく聞きます。
 池田 そのとおりですね。
 いずれにしても、長い人生です。一日一日、賢明に、生き生きと働き、はつらつと毎日を生きていきたい。
 何となく惰性と習慣で夜ふかしし、朝も寝坊してしまう。それでは悪循環である。疲労もとれないし、正しい信心即生活のリズムとはいえない。
 「健康」になるための信心です。「価値ある人生」のための仏法です。朗々たる唱題で智慧と生命力をわかせ、「さあ、きょうも働こう」と、さわやかな朝の出発ができるよう挑戦していきたいものです。

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