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日蓮大聖人・池田大作

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薬と生命力 希望、使命感、愉快な心が健康力

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

前後
1  森田 今回から、ドクター部の上東健康相談室議長と白樺会の荻上書記長に加わっていただきます。
 上東洋一健康相談室議長・荻上文子白樺会書記長 よろしくお願いします。
 池田 読者のために、遠慮なく、いろいろ教えてください。
 上東・荻上 はい。
 池田 長生きして生き生きと仕事を続けた文豪ゲーテは、こう謳っています。
 「『教えてほしい いつまでもあなたが若い秘密を』
 何でもないことさ。つねに大いなるものに喜びを感じることだ」(「不老不死の薬」内藤道雄訳、『ゲーテ全集』1所収、潮出版社)
 私たちも、広宣流布という大いなる目的に向かって、若々しく朗らかに進んでいきたいものです。
 そのためにも健康は大事です。前回は、生活習慣病のカギを握る、食事と運動について語りあいました。それ以外にも、日常生活で気をつけなければならない点はありますか。
 上東 ある程度の年齢になったら、日ごろから、ちょっとした体調の変化にも注意してほしいですね。″何かおかしい。いつもと違う″――素朴な疑問から重大な病気が見つかることも少なくありません。
 荻上 若いころから頭痛持ちだった患者さんが、いつものように薬を飲んでも治らないと相談に来たことがありました。脳外科の受診を勧めたところ、くも膜下出血の始まりだとわかったのです。
 森田 熱が出た。痛みがある。そういう、つらい症状が続くときは、だれでも、病院に行こうとします。ですが、食欲がない。眠れない。何となく違和感がある。ずっとではないが時々痛む。こういう体のサインの場合は、つい我慢して見逃してしまうことが多いのです。
 池田 異常があっても、甘く見てしまう場合がある。神経質になる必要はないが、用心するに越したことはありませんね。
2  自分の健康は自分で守る
 上東 はい。がんや高血圧、糖尿病などの生活習慣病も初期の間は、あまり症状がありません。
 森田 ですから、何か症状が出たら病院へ行くというのではなく、健康診断を定期的にぜひ受けていただきたいのです。
 池田 そのとおりですね。大切な人生であり、使命のある生命です。自分の健康は、自分でしっかりと守っていく以外にありません。
 日蓮大聖人の弟子である四条金吾は、敵に命をねらわれるという危難を師の教えどおりに乗り越えていきました。大聖人はその姿勢をたたえられて、「前前の用心」、「けなげ」、「信心つよき故」であると仰せです。
 常日ごろからの用心、さらに、いざという時の勇気、そして強い信心があってこそ、自身の健康も生命も守られるのです。そして「強い信心」には、聡明な「智慧」がなければならない。
3  正しい薬の飲み方――副作用を起こさないために
 森田 「用心」と言えば、「薬」も注意が必要です。
 本来、薬というものは体にとって異物なのです。毒性も多少あります。量や飲み方を間違えると、大変な副作用が起きることがあります。
 池田 たしかに「薬は毒にもなる」と言われますね。読者の皆さんが安心できるように、正しい薬の飲み方を教えてください。
 上東 簡単に言えば、(1)内服薬(飲み薬)は、水やぬるま湯といっしょに飲む*(2)決められた時間にきちんと飲む*(3)決められた用法・用量、注意事項を守る、です。
 荻上 必ず、コップ一杯くらいの水といっしょに飲んでください。錠剤やカプセルが、のどや食道に引っかからないためにも大事ですし、胃の荒れなども防ぎます。
 池田 お茶やコーヒーなどで飲んではいけませんか。
 上東 薬によっては、若干の影響が出ますので、水やぬるま湯で服用してください。とくに、お酒はやめてください。
 池田 飲みやすくするために、錠剤を砕いたり、カプセルをはずしたりしても大丈夫ですか。
 上東 それもさけてください。本来の効果や作用する時聞にも影響が出る場合があります。大きくて飲みにくい場合などは、医師や薬剤師に相談してみてください。
 荻上 保管にも気をつけてください。薬は光、温度、湿度に影響されやすいので、高温多湿をさけて、缶の中や引き出しなど涼しい所に保管してください。子どもの手の届かない場所に置くことも大事です。
4  年齢、状況で服用に注意を
 池田 お年寄りゃ子どもが注意すべき点はありますか。
 森田 お年寄りの場合、成人の常用量だと多すぎることがあります。できるだけ病院などで相談してください。
 市販の薬をやむをえず利用される時には、定められた量の半分くらいから飲み始めることを、お勧めしたいと思います。
 荻上 子どもの場合は、決められた量を、きちんと守ることです。また解熱剤は、むやみに使わないほうがいいでしょう。
 上東 妊娠中は、どうしても必要な薬以外は飲むべきではありません。
 胎児の生命は薬物に敏感なので大きな影響をあたえる危険があるのです。妊娠初期についてはとくに、なるべく薬を控えたほうがいいと思います。
 森田 アレルギー体質の人や腎臓・肝臓の悪い人は、副作用が出やすくなります。
 医師や薬剤師に、アレルギー体質や妊娠の有無とともに、今、使っている薬を必ず伝えてください。
 池田 以前にも紹介したが(本巻二四七ページ)、大聖人も「病人に薬をあたえるには、前に服用した薬のことを知らなければならない。薬と薬が(体内で)ぶつかって、争い、人の体を壊すことがある」(御書一四九六ページ、通解)と仰せになられています。これは、正しい仏法を弘めるうえでは、その国でどのような仏法や思想・哲学が弘まっていたかをまず知らなければ・ならないとの警えとして教えられた御聖訓です。
 荻上 当時の医学や薬のことまで、大聖人はよくご存じだったわけですね。
 池田 くわしいことは省きますが、釈尊の時代には、門下に名医と言われた耆婆がいた。仏典の中には「医喩経」「治禅病秘要法」など、医学関係のことが説かれたものもあるくらいです。
 もちろん鎌倉時代には、中国からも医学に関する多くの研究、論述も伝わっていた。
 大聖人も、そうしたことをふまえておらたと拝されます。また、門下に医師でもあった四条金吾がいたのは有名です。
5  ビタミンC
 池田 最近は、栄養剤やドリンク剤などが、手軽に手に入るようですね。たとえば、ビタミンCをとるのに、錠剤を飲むのと食物からとるのとでは違いがありますか。
 上東 ことビタミンCについては、違いはありません。ビタミンCは果物や野菜に多くふくまれており、通常の食生活で摂取できます。食物だけでとれない場合は、錠剤を飲む必要もあるでしょう。ですが、余分なビタミンCは尿といっしょに出てしまいます。
 池田 ビタミンCといえば、ポーリング博士を思い出します。二つのノーベル賞(化学賞と平和賞)を単独で受賞された方です。
 博士とは四度、お会いしました。ひとこまひとこまが映画の場面のように胸に残っています。偉大な方でした。(=名誉会長とは対談集『「生命の世紀」への探求』〈本全集第14巻収録〉を発刊している)
 博士のお父さまも、薬剤師でした。当時の薬局は、製薬会社から仕入れた薬を売るだけでなく、みずから薬を作っていた。「私は″製造する薬剤師″だ」と誇らしげに語りながら、幼い博士に薬の調合の様子を見せてくれたそうです。
 荻上 やはり、子どものときに、化学・医学に縁をされていたのですね。
 池田 そう思います。博士はビタミンCの摂取量を増やすことで、発がん物質から体を守る力を高められると考えておられたようです。
6  安易に薬に頼らない
 池田 話はもどりますが、ほかに薬で注意すべき点はありますか。
 森田 病院でもらって、余った薬を使うのもやめてください。同じような症状と思っても、前の病気と違う場合があります。また、時間がたつと、薬の成分が変わることもあります。
 上東 「この薬、よく効いたよ」と言われて、他人の薬をもらったりするのも、絶対にさけてください。
 荻上 市販の薬でも、使用期限を守ってください。また、期限内でも、変色などしていた場合は、服用は避けたほうがいいです。
 森田 薬は本来、体のもっている「直す力」を助けるものです。
 体のもつ「自然治癒力」をいかに引き出すか――薬の最大の役割はそこにあります。
 池田 そうでしょうね。戸田先生も、病気は人間の体自身が治すものである。人間の生命の中に、その力が備わっていると強調されていました。
 上東 薬に頼ればいいという安易な姿勢ではなく、根本は、できるだけ薬がなくてもいい方向に、自分の体をもっていくとが大事なんです。
7  生命に病を「治す力」が
 池田 必要な薬まで自分の判断でやめてしまう方もいると聞きますが。
 荻上 医師の処方にしたがわず、薬を選んだり量の増減をすることはやめてください。
 池田 よく聞くのは、高血圧の薬を勝手にやめてしまって、その後、倒れてしまうというケースです。
 森田 そうなんです。大変に危険な状態におちいった方がたくさんいます。必ず、医師や薬剤師に相談してください。
 池田 疑問があれば、信頼できる専門家に積極的に質問し、十分に納得したうえで、薬の長所を生かしていくことですね。
 上東 そのとおりです。
8  「ミクロの宇宙戦争」
 池田 戸田先生は、人体は「一大製薬工場」とよく言われていましたが、仏典には「薬王菩薩」という菩薩が登場します。
 良薬を衆生に施し、心身の病苦を治す菩薩といってよいと思います。その働きが、われわれの生命の中に本然的にある。それを引き出していくのが妙法です。
 ところで、私たちの体内で「治す力」を担当しているのは、どこですか。
 上東 体の恒常性を維持しているのは自律神経とホルモンですが、外敵から身を守るのは、血液中の白血球です。私たちの体は、外部から侵入しようとする異物を、皮膚や粘膜で防いでいます。それらをすりぬけ、侵入してきた菌やウイルスをとらえ退治するのが白血球です。
 森田 この白血球の働きをさして「免疫力」とも言います。
 池田 よく耳にする言葉ですね。
 荻上 「免疫力」がタイトルについた書籍も多いです。
 上東 白血球は、大別すると、顆粒球とリンパ球に分けられます。もう一つ、数は少ないのですが、単球というのもあります。この三つが協力して、外敵と戦い、病気になるのを防いでいるのです。
 池田 ロシアの世界的な物理学者に、モスクワ大学前総長のログノフ博士がいます。何度も、お会いして語りあいましたが、博士は、この戦いを「ミクロの宇宙戦争(スター・ウォーズ)」と呼んでいました。
 森田 おもしろい表現ですね。まさに、そのとおりです。
 上東 白血球のうち顆粒球は、侵入した細菌や体の中の異物を見つけると、そのまま飲みこんで、分解します。その後、みずからも死んでしまいます。
 森田 傷口が化膿して膿がたまることがあります。これは死んだ顆粒球などが集まったものです。
 池田 ログノフ博士は、白血球の働きによって、がんの発生も抑えられている、と紹介されていました。
 ふつうの人の体でも、一日に数個のがん細胞が出現している。しかし、絶えずリンパ球、そのなかでもとくにナチュラルキラー(NK)細胞が、がん細胞を探し出し、排除しているから、私たちの体は守られている、と。(『科学と宗教』。本全集第7巻収録)
 森田 たしかに、リンパ球の機能が弱くなったり、減少したりする病気になると、がんや、さまざまなウイルス感染症にかかる危険性が高くなります。
 上東 ログノフ博士が言われるように、リンパ球は、ウイルスなどをとらえて、毒性を弱める物質(抗体)をつくったり、ウイルスに感染した細胞を攻撃し、排除したりします。
 このとき一度出あったウイルスなどの形を、リンパ球は記憶することができます。ですから、一度かかった病気に対し、私たちの体は抵抗力を増すのです。
 荻上 感染予防に使われるワクチンは、そうしたリンパ球の働きを利用したものです。
9  「心」が免疫力を高める
 池田 なるほど。では、こうした「治す力」を高めるためには、何が必要ですか。
 森田 やはり栄養でしょうか。戦後、日本人の平均寿命が飛躍的に延びたのは、一人一人の栄養状態がよくなり、「治す力」に大きく影響したからではないかと思います。
 上東 外部からの侵入者や体の中で生まれる異常な細胞に対し、体はつねに警戒を怠ることができません。ある程度の栄養状態が保たれていなければ、病気に対する抵抗力は弱くなります。つねに白血球を補充しなければならないからです。
 荻上 適度な量と栄養のバランスのとれた食事が大切だと思います。さらに加えると、十分な睡眠をとることも大切です。
 池田 逆に「治す力」を弱める要素は、どんなものがありますか
 上東 ストレスを続けて受けると免疫力は大きく低下します。
 ストレスが高じると、交感神経の働きが過剰になり、免疫をになう白血球の働きにも影響をあたえるのです。
 森田 だた、ストレスがすべて悪かというと、そうではありません。適度なストレスは人間に活力をあたえ、総体として免疫力を上げます。
 池田 いずれにせよ、「心」と、体が持つ「治す力」には深い関係がある。
 荻上 池田先生が対談集(『世界市民の対話』。本全集第14巻収録)を出されたノーマン・カズンズ博士は、″アメリカの良心″と言われたジャーナリストですが、「心身相関の医学」でも先駆的な研究を残していますね。
 池田 博士は、膠原病、心筋梗塞まど、たび重なる大病を克服された。その体験からも、人間の体が持つ「治す力」(治癒系)とともに、それを引き出す「精神の力」(信念系)に注目されていました。
 「希望」「強い期待」「生への意欲」などの前向きな感情は、人体の「治す力」を高めていくというのです。(N・カズンズ『人間の選択――自伝的覚え書き』松田銑訳、角川書店、引用・参照)
 荻上 看護師としての経験からも、そう思います。血液のがんの患者さんを担当していたときのことです。その婦人には、幼い、お嬢さんがいました。治療の関係で、お嬢さんとも自由に会うことはできなかったのですが、「娘が小学校に上がるときにはいっしょに入学式に行こう」と、目標を持ち続けていました。
 その結果、治療の効果も上がり、親子で入学式を元気に迎えることができました。
 池田 子どもの成長を見続けたいというお母さんの希望が、体の中の「治す力」を強めていったのでしようね。
 心は不思議である。心一つで大きく変わる。これは、紛れもない真実です。仏典にも心は巧みな画家のようなものである」(「華厳経」)とあります。
10  心と体は一体
 荻上 「責任感」「使命感」も、「治す力」を引き出す要因ではないでしょうか。
 私の母の例で恐縮なのですが、五年前、子宮がんになりました。
 池田 おいくつですか。
 荻上 現在、九十一歳です。高齢のため手術はできないと診断され、放射線治療を始めました。放射線治療は若い人でも体に負担がかかります。
 当時、母は、副看護部長で忙しい私にかわって家事を引き受けてくれていました。そのため母は「私が寝込んだら、この家は持たない」と(笑い)、入院中も週末には家に帰ってきて、家事を続けたのです。
 医師や看護師、他の患者さんもびっくりするほど元気で、治療も効を奏し、がんは治りました。現在まで再発もありません。
 池田 まさに″母は強し″ですね。たしかに何らかの仕事、使命の実現に励む人は、年齢にかかわらず強さがあります。
 古代ローマの哲人セネカも「仕事は高貴なる心の栄養なり」と言っている。「自分には、なすべき使命がある! 使命があるかぎり、倒れるはずがない!」――この確信がお母さまの生命力のもとになったのではないでしょうか。もちろん信心の力が根底にあったことは言うまでもありません。ほかに「治すカ」を強める心の働きはありますか。
 森田 「ユーモア」や「笑い」も、そうだと思います。
 「ユーモア」や「笑い」が、がん細胞の発生を監視するナチュラルキラ!(NK)細胞の働きを強めるという事実は有名です。
 上東 カズンズ博士も、「笑い」が「治す力」に優れた効果をもたらすとして、こんな研究を紹介しています。
 十人の学生に愉快な映画と、そうでない映画を十分ずつ見せたところ、愉快な映画を見たあとでは目立って、だ液中の免疫の働きが活発になったというのです。
 反対に、つまらない映画を見たあとには、そのような変化は見られなかった。(「ヘッド・ファースト――希望の生命学』上野圭一・片山陽子訳、春秋社、参照)
 池田 有名な実験です。カズンズ博士も「人体そのものこそ最良の薬屋(『笑いと治癒力』松田銑訳、岩波書店)と指摘されていた。これも生命に備わった「病気を治す力」を譬えたものでしょう。
 それは、人間の真の健康とは何かを示唆しているように思われる。
 日々、朗々たる唱題で生命力を増し、「希望」と「使命感」と「愉快な心」を持って、最高に充実した毎日を送っていきましょう。

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