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日蓮大聖人・池田大作

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習慣が健康をつくる 広布のリズムは健康のリズム

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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1  成見 日本人の三大死亡原因は、がん・心臓病・脳卒中で、いずれも生活習慣病です。
 池田 かつては″成人病″と言われていましたね。
 森田 そうです。子どものときから健康を守るための生活習慣を身につけようと、こう呼ばれるようになりました。
 池田 生活習慣病の原因は、やはり食事ですか。
 森田 食べすぎや飲みすぎ、そして運動不足が、おもな要因です。そこで、まず「食事」について考えてみたいと思います。
 椎場 最近では、メニューに料理のカロリーを表示しているレストランもあります。栄養のとりすぎを防ぎたいというお客さんの願望を反映したものでしょう。
 池田 仏典にも食べすぎの弊害が説かれています。
 (1)なまけ、おこたる心が生じる (2)過分な睡眠で人に迷惑をかける (3)体調をくずし多くの病にかかる(「尼乾子経」)
 森田 思い当たる節がありますね。(笑い)
 池田 天台大師も病気の起こる原因の一つに、「食生活の乱れ」をあげています。(「摩訶止観」)
2  知らないうちにカロリー過多に
 池田 食べすぎは、どんな病気にかかりやすいですか。
 成見 カロリーの高い脂肪やでんぷんをとりすぎると、肥満や高脂血症、高尿酸血症になります。
 また、塩分が多すぎると高血圧に、アルコールが多いと脂肪肝など肝臓の障害の原因になります。
 池田 現代人は、栄養のとりすぎと言われますね。
 森田 食生活の変化が、いちばん大きな原因だと思います。朝食一つとっても、昔は「焼き魚に豆腐か納豆、そして、みそ汁」というように簡素なものでした。
 成見 最近は揚げ物や脂ののった肉類、味付けされた加工食品などが、はんらんしています。お母さん方も、便利なので、ついつい食卓に並べてしまう。これでは、脂肪分や塩分をとりすぎます。
 椎場 スナック菓子も想像以上に高カロリーです。つまみやすいので、量が増えてしまいがちです。
 池田 注意しなければ、知らずしらずのうちに栄養をとりすぎてしまう――これが現代の食生活です。
3  智慧の力で、聡明な食生活を――朝食は健康のバロメーター
 森田 生活リズムの変化も、食生活に大きな影響をあたえています。三、四十年前と比べれば、現代社会は断然、夜型になっています。
 成見 寝る時間が遅くなると、空腹を感じ、何かを口にしてしまう。それで快眠が妨げられ、朝は寝坊。朝食もとらずに飛び出し、その結果、昼食を食ベすぎてしまう。
 池田 悪循環ですね。やはり、食事は毎日、朝・昼・晩の三度、″腹八分目″が基本ですか。
 森田 はい。何よりリズム正しい食生活を心がけてください。厳密ではなくても、毎日同じ時間帯に食事をすることです。
 椎場 朝食を食べない方もいますが、朝食がおいしく食べられるかどうかは、健康のバロメーターでもあります。しかも朝の食事は、口の筋肉を動かすことで、脳を目覚めさせ、一日をフレッシュにスタートできます。
 森田 長年、外科医をしていますが、緊急の手術のために、昼食をとれないことも考えられるので、朝食だけは、しっかり食べるように心がけ、実践してきました。
 池田 日蓮大聖人は「食には三つの働きがあり、第一には生命を継続させ、第二には体や顔の色つやを増し、第三には心身の力をさかんにする」(御書一五九八ページ、通解)と言われています。
 信心しているからこそ、聡明でなければならない。食事も、朝食をきちんととり、その日のエネルギーを十分に蓄え、一日を力強くスタートしていきたいものです。
4  頭で食べる
 池田 よく食事は「腹で食べずに頭で食べる」と言われますが、食べすぎを防ぐ秘訣はありますか。(笑い)
 成見 私は、まず野菜から食べるようにしています。また、急いで食べないよう注意しています。そうすることで、血糖値の急激な上昇が抑えられ、栄養がゆっくり吸収されますし、主食が少量でも満腹感が得られます。
 池田 イギリスの名宰相グラッドストンも「柔らかき物も二十七度かめ」と言っています。(笑い)
 「かむ」ことはたしかに大事ですね。
 成見 「二十七度」はむずかしいですが、かむと口の筋肉の動きなどが脳に刺激をあたえ、満腹感をおぼえたという信号を発します。ですから、少量でもよくかめば、十分な満腹感が得られるのです。
 また、だ液の分泌をうながして胃腸への負担を軽くします。
 反対に、かまずに飲み込んでいるだけでは、なかなか満腹感が得られず、食べすぎてしまいます。
 森田 帰宅が夜遅くなることがわかっているときは、夕食をしっかり食べて夜食をとらないとか、また一日三食でとる総摂取カロリーを四食に配分するなど、工夫している方も多いようです。
 池田 やはり夜食はダメでしょうね?
 椎場 夜食を出す病院はありません(笑い)。絶対にダメとは言いませんが、健康のためにはさけたほうがいいでしょう。
 成見 どうしてもという場合は、うどんなど消化のよい物を軽く食べるくらいにしてはどうでしょう。
5  貪・瞋・癡の三毒が生命を弱める
 池田 生活習慣病は、ドイツでは「文明病」と呼ばれていますね。
 成見 モノがあふれ、だれもが豊かで便利な″文明の味″を満喫できるようになったことから、そう名づけられたのだと思います。
 池田 ストレス解消のために食べすぎる人も多い。おなかより、心を満たすほうがむずかしいのではないでしょうか。
 大聖人は「貪り・瞋り・癡の三毒がしだいに強盛になっていくにしたがって、しだいに人の寿命も縮まる」(御書一四六五ページ、通解)と指摘されています。
 貪・瞋・癡の煩悩の働きが強くなるほど、健康な生命力が衰える。心身のバランスをくずしてしまう。
 森田 たしかに「食べたい」という欲望を自制できず、運動もしないで、おいしいものを食べ続けたら、確実に肥満になります。
 椎場 肥満は、糖尿病や心臓病などに深くかかわっています。
 池田 不摂生な食生活を、どう正していくか。必要以上に食べたいという欲望を、どう律していくか。
 御書には、「賢い者を人といい、愚かな者を畜生という」(一一七四ページ、通解)と述べられています。
 人間は愚かであってはならない。賢く生きることです。賢明な智慧があれば、「健康で長生き」できるのです。
 仏法では、そうしたコントロールの智慧の力、生命力がもともと私たちに備わっていると説いています。それを引き出していくための信仰です。
 自分の体は、自分で責任をもって管理していく――聡明な食生活で、いよいよ健康な日々を送っていきたい。
6  団欒が心の栄養を増す――イライラする子は一人で食事?
 森田 食事とストレスで思い出したのですが、数年前、文部科学省が行った調査では、「イライラしている」という中高生に、「夕食、朝食を一人で食べた」「きのう家族との会話がなかった」という答えが目立ったそうです。(二〇〇二年「児童生徒の心の健康と生活習慣に関する調査」参照)
 池田 昔は、家族そろっての食事が、大切なコミュニケーションの場でした。一日の出来事や相談事を話しあい、体の栄養だけでなく、心の栄養もとっていました。ストレス解消にも役立っていたのではないでしょうか。
 成見 私は食卓で両親から、はしの上げ下げや魚の食べ方から礼儀作法、社会を見る眼まで多くのことを学びました。
 椎場 最近は、共働きや塾通いで、家族の帰宅時間はまちまちですから、一家団欒も思うにまかせないのが現実です。
 池田 私も、多忙ななか、子どもたちとの食事には苦心しました。レストランで食事する約束をして、大幅に遅刻し(笑い)、いっしょにいたのは、たったの十分ほど。努力だけは伝わったと思います。
 椎場 忙しいからこそ、わずかの時間であっても、機会を見つけてはいっしょに食事をするなど、工夫したいものです。
 池田 仏典では、「食」を四つに分けています。(「倶舎論」)
 (1)段食=実際に口にする食物
 (2)触食=すばらしい音楽や美術などにふれて、喜びゃ楽しみを得る
 (3)思食=好ましい思想や希望をいだいて元気になること
 (4)識食=心に備わる、生きようとする力――です。
 この四つは「四食しじき」と呼ばれていますが、いわゆる「食物」だけでなく、生きるために必要なエネルギーをあたえてくれるものを「食」としているのです。これらが相互に連関性を持ちながら、生命は健全に維持される。
 椎場 たしかに真の健康とは、色心ともの健康だと思います。
 森田 食事とともに、生活習慣病と深い関係があるのが「運動」です。
 池田 ガンジーは、こう言っています。
 「どんなにたくさん仕事を持っていようとも、人間に食事の時間があるのと同様に、身体訓練の時間をつねにつくっておかなくてはならない」(『ガンジー自伝』鑞山芳郎訳、中公文庫)
 成見 インド独立のために闘ったガンジーも健康に注意していたのですね。
 池田 ガンジーはさらに続ける。
 「それは、人間の仕事をする能力を減退するどころか、かえって増加する」(同前)と。
 現代人は、ついつい運動不足になりがちですね。
 椎場 運動不足を解消するため″週末だけ″運動する人や、また、ジムに通う人も多いようです。
 ですが、日常生活のなかにか適度な運動があれば、生活習慣病も心配することはありません。経済的にも安心です。(笑い)
 成見 ラジオ体操も立派な一つの運動です。真剣に手足を動かしているうちに、汗ばんできます。
 池田 私も健康のためにと妻に勧められ、ラジオ体操を始めて十八年になります。
 毎日というわけにはいきませんが、音楽にあわせて、無理なく体を動かし、ほぐすことで、健康の増進につながり、気分転換にもなる。
 大切なことは持続ですね。持続は力です。
7  人生は歩いた者が勝つ――階段を利用し、一駅分歩く
 池田 体操にかぎらず、″適度な運動″というと、日常的には、どの程度の運動を行えばよいのでしよう。
 森田 もっとも手近なのは、「歩く」ことです。最近は、あえてエレベーターやエスカレーターを使わず、階段を利用する人も増えています。通勤のさいに一駅手前で下車して、歩くようにしている人も多いようです。
 成見 私も、歩いて行ける距離のところは、乗り物を使わないようにしています。
 池田 なるほど。そういえば、釈尊の一生は″歩け、歩け″の連続でした。最後まで弘教に歩いた。よく歩いたので足も頑丈だったと言われています。
 「老化は足から」とも一言われますね。「歩く」ことの効用は具体的に何でしょう。
 森田 歩くことで、全身の筋肉の七割を使います。心肺機能を強化し、血圧を安定させ、脳を活性化させます。
 椎場 ですから、認知症の予防にもなります。実際に、認知症が改善したという症例もあります
 池田 ″憲政の父″と謳われた尾崎行雄氏は、「人生は、よく歩いた者の勝ちだ」(川崎秀二『憲政に光を掲げた人々』憲政に光を掲げた人々普及会)と言って、よく歩いていたという。
 彼は、子どものころから体が弱く、無事に育つかどうか、心配されるほどだったようです
 しかし、意識して健康に努め、九十五歳の長寿をまっとうしています。
 椎場 現代の″肥えた″政治家にも見習ってほしいですね。(笑い)
8  一日一万歩
 森田 私は外科医として数多くの手術を手がけてきましたが、十時間以上も同じ姿勢で立ちっ放しのことがありました。そうなると体力勝負です。そこで、日ごろから時間をつくり、縄跳びなどをして体力の維持に努力していました。
 池田 最近では、ジョギングする人も多いようですが。
 成見 ただ万人に向いているとは言えません。ひざや腰を痛める可能性があります。中高年の過度な運動は、細胞の老化を早める活性酸素の影響が増すなど、体に悪いことも起こりえます。
 池田 たしかに二十代、三十代までは、肉体を鍛える年代と言えるが、四十代以降は、無理もきかなくなる。運動も年代に応じてということですね。
 一日に、どれくらい歩くのが望ましいのですか。
 森田 一日一万歩を目標にしてほしいですね。
 椎場 たとえば、一日中、家にいた場合は平均二千歩、歩くと言われています。近所に買い物に出かけて、四千歩程度です。平均すると一日に、男性が八千二百二歩、女性では七千二百八十二歩という統計もあります。
 森田 ですから、毎日三十分程度の散歩を生活に取り入れてください。
 成見 ただし食後すぐに歩くのではなく、三十分程度は休息をとる必要があります。
 背筋を伸ばし、手を振りながら、少し早足で、少々汗ばむぐらいがよいでしょう。
 池田 それが、けっこうむずかしい(笑い)。ときには路傍の草花や風景を楽しみながら、ときには、友と語らいながら歩くというのが、有意義でうるおいのある一つの理想と、私は思います。
9  学会活動は最高の健康法――釈尊も歩いた
 椎場 先ほどのお話ですが、釈尊もよく歩いたのですね。
 池田 ある記録によれば、出家の目的を果たした直後に、三百キロを超える道のりを歩きました。かっていっしょに修行した、五人の仲間に法を説くためです。
 成見 三百キロ超というと、ほぼ東京名古屋間に相当する距離ですね。
 池田 釈尊は、生涯、歩き続けました。つねに人間の中へ飛びこみ、人間の中で真理を語り、人々の苦悩を癒した。
 大聖人も弘教のため、歩きに歩かれました。
 成見 阿仏房のように、何度も佐渡から身延の大聖人をお訪ねした門下もいますね。
 池田 身延を訪ねた阿仏房は、老齢であったようです。佐渡から身延までは、直線距離でも約三百キロ。途中には険難な山並みが続き、治安も悪く、決して安全とは言えない。
 その苦労はいかばかりであったろう。尊き求道心の表れです。
 今で言えば、海外から来日されるSGI(創価学会インタナショナル)のメンバーの姿も信心の鑑です。皆さんに接するたびに、「仏を敬うが如く」最敬礼する思いです。
 森田 歩くと言えば、私たちの日々の学会活動こそ、何よりの運動であり、健康増進の秘訣です。
 池田 会合に参加する、友の激励に歩く、弘教に励む――そこにはつねに偉大な目的があり、「行動」があります。
 椎場 以前、シナノ企画のビデオを見ました。そこでは、沖縄の初代婦人部長が、振り返って語っておられました。
 「歩かなければ家庭指導はできません」「歩くこと、徹して歩くことが、若さと健康の秘訣です」と。
 成見 味わい深い言葉ですね。
 椎場 この方は、どんな島でも知らない道はないというほど、沖縄中を歩きぬかれたそうです。
 本当に若々しく、美しい姿に感動しました。
 池田 立派な方です。彼女が話していたことがある。″戦いは足が鉄板のようになるまで歩きぬいてこそ、初めて勝つ″と――。
 法のため、人のため、社会のために尽くしゆく行動が、どれほど生命を革新させるか、はつらつと人生を生きる源泉となるか、計り知れない。
 友のための行動こそ、真の健康の源です。「人のために灯をともして明るくしてあげれば、自身の前も明るくなる」(御書一五九八ページ、通解)との御聖訓のとおりです。
10  声を出せば若返る――「心は鍛えるほどに軽くなる」
 成見 朝の勤行も、医学的に見ても正しい健康法になっています。
 正座でもイスでも、背筋を伸ばし、声を出すことで、呼吸機能が活性化し、心臓や肺の機能が高まります。
 森田 教学の研鎖や学会指導の学習も、頭脳を働かせ、より深い人生を生きるための智慧を得ることになりますね。
 池田 古代ローマの哲学者で、雄弁家であったキケロは言っています。
 「肉体は鍛錬して疲れが昂ずると重くなるが、心は鍛えるほどに軽くなる」(『老年について』中務哲郎訳、岩波文庫)
 椎場 雄弁といえば、女性の得意な「しゃべること」「声を出すこと」も(笑い)、健康法の一つになると思います。
 成見 明るく、にぎやかな語らいは、ストレスの解消にも通じます。心身の疲れを癒してくれますからね。
 森田 のみならず、声を出すことは、脳を刺激し、認知症の予防にも役立ちます。
 椎場 さらに、正義と真実を語ることで、自身も勇気づけられ、元気になれます。
 池田 一石二鳥、いや三鳥だね。(笑い)
 仏法では仏の説法を「獅子吼」と呼ぶ。仏典には、その意義がとう説かれています。
 (1)偽者の正体を暴く
 (2)邪悪を寄せつけない
 (3)同志を守り、安心させる
 (4)内なる仏の生命を呼び覚ます
 (5)戦いをリードする
 (6)すべてを自分の味方にする
 (7)自身と同志を高め、豊かにしていく――などです。(「大般涅槃経」)
 仏法の正義や哲学を語りぬく声は、皆、「獅子吼」です。王者の声なのです。
 ともあれ、広宣流布の行動に一切、むだはありません。学会活動には、健康になるための条件がそろっています。これが私の五十数年間の信仰の一つの結論です。
 広布のリズムのなかで、健康のリズムを整えていくことができる。広布のために、喜び勇んで動いたぶんだけ、自身の生命に金剛不壊の幸福の基盤を築くことができるのです。

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